本コラムは、ダイヤモンド社発行の「DX戦略の成功のメソッド~戦略なき改革に未来はない~」の第2章の抜粋記事です。
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今や「デジタル化」と無縁の企業は、皆無といっていい。デジタルは企業が必ず実装すべき「経営技術」であり、どれだけ経営活動に活用できるかが競争優位と直結する時代である。
とはいえ、実際は興味も関心もなかったが、ITシステムやツールを必要に迫られてやむなく導入したケースも多いのではないだろうか。ウェブ会議システムにしても受発注システムにしても、導入したきっかけをたどると「コロナ禍の緊急事態宣言で誰も出勤できなくなった」「一番の得意先からの要請で断りきれなかった」「業界のプラットフォームの刷新で仕方なく対応した」といった外部環境に影響されて、しぶしぶ導入した形になっていないだろうか。
このような受動的・消極的なデジタル投資で、競争優位が築けるはずはない。デジタル技術を能動的・積極的に取り入れて、付加価値の創出や収益性の向上につなげることが重要なのである。ただ、「デジタルをどのように活用して成果を上げるのか」が社内に浸透しなければ、いくら綿密に投資計画を立てたところで「そこにシステムを入れる意味がわからない」「○○を変えたら現場が混乱する」などとできない理由が先行し、改革・変革は進まない。現状の自社のレベルを正しく押さえ、DXを推進する価値を認識し、「まずはどこまで進めるか」という意思を全社で持てる状況をつくる必要がある。
第2章では、自社の戦略に即したDX戦略を構築する前に、まず押さえておくべきポイントと取り除くべき障壁について、事例を交えながら解説していく【図表2-1】。
これからDX戦略を策定しようという企業は、これらを基礎知識として踏まえ、可能であれば障壁をクリアしておくと推進がスムーズになるだろう。すでにDX戦略を策定している企業も、ポイントを外していないか、取り除くべき壁に直面していないかをトップ主導で確認してみるとよいだろう。
「自社がDXを通じて何を目指すのか」というビジョンからDX戦略を描き、実践すべき改革テーマへ落とし込むメソッドを提言します。