計画的なDX戦略で競合との差別化を実現
企業が抱える課題
DX戦略とは
戦略とは自社のビジョンを実現するための施策です。戦略策定プロセスでは、自社で出来るかどうかはさておいて、自社のビジョン実現に必要な施策をまず考えましょう。自社でなにが出来るか、という発想ではDXの実現は難しくなります。自社の制約条件を一旦取り払って考えましょう。 さてDX戦略は4つのセグメントがあります。
➀ビジネスモデルDX
企業価値向上や収益・生産性向上に最もインパクトがあるのは、ビジネスモデルDXです。
「業界構造が変わり得る商品・サービス」をデジタル活用で開発・提供すること、またはそのような商品・サービスに応対する事業戦略を策定・推進することを指します。
②マーケティングDX
MA(マーケティングオートメーション)ツールなどデジタルを活用し、マーケティングプロセス自体を変革することでアナログ営業では成しえない競争優位性を確立することを指します。
③マネジメントDX
デジタルを活用した自社商品・サービス提供プロセスの効率化、業務の効率化を図ると共に、事業の付加価値へ転換可能な情報資産の蓄積と、情報に基づくスピーディーな経営判断の実現を図ることなどを指します。なおタナベコンサルティングでは、バリューチェーン上のものづくりプロセスを革新するFactoryDXという考え方もあります。
④HR(Human Resource)DX
人的資源管理に関わるデータ解析を通じて、人材活躍に向けた仕組みの最適化を図ることを指します。
いずれもアナログでの取り組みでは決して成しえないことをデジタル活用で実現させる戦略となります。
解決策
(1)DXに早く着手すること
➀デジタル投資への決断
これが差別化ポイントとして大きなインパクトがあります。DX領域は、早く取り組むほど先行者利益を獲得できるもといわれています。日本企業の多くは米国やEUと比較して営業利益率が低いことが分かっていますが、その背景にはデジタル投資に関する特徴があります。
日本企業の多くは、有形固定資産(設備、機械、建物など)への投資は積極的ですが、無形固定資産への投資がとても少ない状況にあります。無形固定資産とは、ERP基幹システムや各種デジタルツールを指します。こうしたデジタル投資が日本企業においてとても少ないのです。
世界における日本企業の競争力が慢性的に低下した要因のひとつとして、デジタル投資の多寡を挙げることができます。
②デジタルリテラシーを高める
デジタル投資に対峙するには、リテラシーを高める必要があります。リテラシーを高めるにあたり、DXに関する様々なインプットの機会に触れることをお勧めします。DX系ウェビナーの視聴は、手軽にインプットできるものとして今や広く浸透しています。加えて、ベンチマークとする企業視察もたいへん有効です。百聞は一見に如かず、DXを推進する企業や現場を見て、ご自身のマインドセットを切り替えることが良いかと考えます。他社の取り組みに触れると、いかに自らが遅れているかに気づくことができ、健全かつ正しい危機意識を持つことができます。
(2)経営トップの意思としてDXを戦略・ロードマップに盛り込むこと
DXは、過去の延長線上にないことです。過去に経験のないことに着手するのは、誰しも二の足を踏んでしまいがちです。その点を乗り越えていくには、ダイナミックケイパビリティ(=企業が環境変化に対応して自己変革する能力)への決断が重要です。自社に変革をもたらすための取り組みとして、DXを推進するデジタル実装を戦略とロードマップに意思として盛り込むのが良いです。前へと進むしかない状況を自らつくるわけです。
そのためにDXビジョンを描き、自社が目指すDX実装のイメージを全社員と共有することが大事です。現状とのギャップを可視化し、そのギャップを縮める戦略を策定しロードマップへと落とし込みたいところです。
(3)自社のバリューチェーン強化にデジタルを組み入れること
➀バリューチェーンへの実装
DXとはデジタルツールの活用そのものでなく、自社の企業価値の向上や高収益構造へと変革することです。自社のバリューチェーン、つまりマーケティング・開発設計・調達・生産・物流・販売・アフターサービスに至るプロセス全体でデジタル活用による付加価値の向上を図る、ということです。
②バリューチェーン強化事例
切削加工を受託製造するA社では、独自のデジタルマニュファクチャリングシステムを構築し、見積回答時間を平均3時間、製造出荷リードタイムを最短24時間、というアナログでは成しえない成果を上げています。ものづくりの上流工程で最も工数負荷が掛かる開発・設計段階にデジタル実装し、オンラインで顧客と開発担当がニーズ・シーズの擦り合わせを行い、デジタルシミュレーションで試作工程を可視化、実際の試作加工をする前に大方の仕上がりイメージを顧客と共有し、工程を大幅短縮。またERP基幹システムで製造フローを同期化し製造リードタイムを大幅に短縮したことで、マーケットが求める短納期ニーズに対応しています。大事なことは、バリューチェーン全体を強化するよりも「どの工程で尖がっていくか」です。なお、こうした取り組みは外部のデジタルパートナーとともにシステム化するのがベストです。
(4)社内外のデジタルパートナーとアライアンス体制をつくること
自社単独での取り組むより、デジタルに強いパートナー企業と連携するとスピーディに推進できます。連携には資金を要しますが、それはコストでなく未来投資とみます。また、社内にデジタル人材を確保することも必要です。
アライアンス体制づくりの留意点は、ベンダーの言いなりにならないこと。デジタルツールの実装が目的ではなく、自社のビジョン実現が目的。これがブレないよう主導権は自社で持ちつつ、社内外のデジタルパートナーと連携しましょう。
(5)ワンストッププラットフォームを構築すること
自社のDX戦略に沿ったワンストッププラットフォームとしてのERP基幹システムへのリプレイスが近年のトレンドとなっています。効率化を図るためのシステムリプレイスではなく、自社の戦略に沿った情報基盤の構築を目指すシステムプラットフォームを構築するのが良いでしょう。こうしたフラットフォームがあれば、社内の営業や製造、倉庫やアフターサービスに点在する情報がリアルタイムで繋がり、リアルタイムで様々な経営の意思決定ができるようになるのです。スピーディな意思決定は、たいへん大きな差別化要因となります。
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