BtoBマーケティングにおける課題とは?
課題別の解決方法を解説

コラム 2024.12.06
マーケティングDX デジタルマーケティング売上拡大市場
BtoBマーケティングにおける課題とは?課題別の解決方法を解説
目次

1. はじめに

長年BtoBの取引においては、営業部門が中心となりテレアポや飛び込みを行い、顧客を開拓して自社の製品やサービスを売り込むことが主流でした。クロージング後も営業部門がフォローすることが多く、マーケティング部門は営業活動のサポートのような位置づけで捉えられることが多かったのではないでしょうか。筆者もBtoBの営業出身ですが、いかにリアルでの顧客接点を増やし、コミュニケーション量を増やすかが営業活動の中で重要視されており、マーケティングと営業には大きな隔たりがありました。
しかし、急速なデジタル化の流れとコロナ禍により顧客の購買行動は明らかに変化しています。デジタル上で情報収集や比較検討をすることが当たり前になり、営業が行っていた営業活動のプロセスがWebサイトやSNSなどのデジタル施策に置き換わっています。これにより、BtoB企業においても商談前の段階から顧客と接点を持ち、検討を進めてもらえるようなマーケティング活動が必要だという認識が広がっており、その重要性が理解されるようになってきました。今回は、BtoBマーケティングをこれから始める際に起こりやすい課題とその対策について解説していきたいと思います。

2. BtoBマーケティングの課題とは

(1)戦略策定の前に施策から実行する

BtoBマーケティングの課題として、「まずはツールから導入しよう」「Web広告を実施しよう」といった施策ありきで取り組んだ結果、思ったような成果に繋がっていないケースがよく見られます。BtoBマーケティングは事業戦略を遂行するための手段の一つであるため、施策から始めるのではなく、マーケティング戦略から設計する必要があります。戦略のミスは戦術=施策ではカバーできません。

(2)社内の推進体制が整っていない

本来は全社的に取り組むべきデジタル戦略が、マーケティング部門に丸投げされ個別で推進しているケースでは、一方通行の取り組みになりがちです。その結果、営業部門などと軋轢を生み、失敗に繋がりやすくなります。例えば、「マーケティング部門がリードを獲得しても、営業は見込みの薄い先には行く時間がない」「理解が足りずに顧客管理ツールの入力が手間だと認識される」といった営業サイドからの不満がよく挙げられます。

(3)Webサイト中心の設計がされていない

マーケティング戦略を策定し、Web広告やSNS運用などの施策を実行した結果、興味を持つ顧客が増え、Webサイトへの訪問者が増えたとしても、コンテンツが充実しておらず顧客の求める情報が載っていない、サイトが見づらいままではすぐに離脱してしまいます。この状態では、商談に繋がるまで顧客を育てることができず、営業に繋げることは難しくなります。

3. BtoBマーケティングにおける課題別の解決方法

(1)マーケティング戦略の策定

マーケティング戦略立案は以下の3ステップで進めていきます。

1st STEP:調査・分析

自社、顧客、競合への理解を深めるための調査・分析を実施します。

自社: 強みや弱みの明確化、競合との比較、市場とのマッチングなどを社員へのインタビューやディスカッションを通して明らかにします。

顧客: 成長が見込める市場か、顧客のニーズ、購買プロセスなどを顧客へのヒアリングや市場調査を通じて明らかにします。

競合: 競合の強みや弱みの明確化、競合の量などを調査します。競合を調べることで自社との違いを比較し、自社をより知ることができます。

2nd STEP:ターゲットと購買プロセスの設定

①ターゲット設定:
購買担当者を想定して「ペルソナ」(典型的な顧客像 ※図1)を設定します。
年齢、性別、居住地、職業、家族構成などのパーソナリティを細かく設定し、購買プロセスを考えるために役立てます。自社の顧客データを分析し、アンケートを実施して具体的な人物像を設定します。

②カスタマージャーニーの設定:
ペルソナを設定した後に、購買プロセスである「カスタマージャーニー(※図2)」を設定します。ターゲット顧客が商品を認知してから商談や購入、顧客化に至るまでのプロセスを整理し、心情や具体的な行動を洗い出し、各プロセスにおいて顧客と接点を持つための施策に落とし込みます。

3rd STEP:目標の定量化と予算設定

目標の定量化には、最終的な数値目標として「KGI」の設定と目標達成のための指標である「KPI」を定めることが有効です。例えば、「Webから100人の新規見込み顧客を獲得する」というKGIに対して、KPIを設定する場合は、「100人の新規見込み顧客を獲得するために何が必要なのか」を考え、各指標を設置し、改善するための施策を決めます。

図1 ペルソナ

図1 ペルソナ

図2 カスタマージャーニー

図2 カスタマージャーニー

※タナベコンサルティング作成

(2)全社推進体制の構築

マーケティング活動においては課題の共有や戦略構築、施策の選定などを営業部門と連携して全社推進体制を構築する必要があります。具体的には、プロジェクトの組成の際に、マーケティング部門だけでなく、営業部門から部門長クラスを選抜してメンバーを選定することが効果的です。マーケティング活動を経営戦略と紐づけ、トップのリーダーシップによってプロジェクトを推進することが重要です。

(3)サイトを中心とした全体設計

図3のようにWebサイトを中心に考え、顧客が求めるコンテンツや事例などを充実させることが最初は重要です。その後、問い合わせが発生してから、顧客管理ツールの実装やWeb広告などの集客施策、メルマガなどの顧客育成に着手すると良いでしょう。

図3 Webサイト中心のマーケティング体系図

図3 Webサイト中心のマーケティング体系図

※タナベコンサルティング作成

4. 今後のBtoBマーケティングにおける可能性

BtoBの購買活動において、情報収集段階でWeb上において認知されていないと商談に進むことができません。しかし、コロナ禍を経てデジタル上のマーケティング活動が当たり前になった反面、展示会などのリアルでのコミュニケーションも復活してきました。そのため、見込み顧客に情報を伝える際には、Webだけでなくリアルでのチャネルも積極的に活用して接点を増やすことが重要です。情報収集先の多様化もあり、顧客との接点を増やすことは検討すべきですが、流行りの施策だからといった理由で増やすのはおすすめできません。施策を検討する際は、狙っている顧客層、ターゲット層がよく使う施策に焦点を当てるべきです。その際には、ABM(アカウントベースドマーケティング)の手法が有効です。

ABMは特定の顧客をターゲットとしたマーケティング戦略で、デジタルとリアルの施策を全てターゲットに向けてアプローチすることでマーケティングの効率化を図ります。デジタル上で対象顧客に向けたコンテンツやWeb広告だけでなく、DMやメルマガなどもニーズや興味に合わせてパーソナライズされたメッセージを送付し、キャンペーンを展開します。ABMを効果的にするためには、マーケティング部門と営業部門が協力し、過去の取引履歴や業界、市場の分析データを活用しながら、マーケティング戦略でお伝えした「ターゲティング」の精度を高めることが重要です。

今回は、BtoB企業におけるマーケティングの重要性と起こりやすい課題についてご紹介しました。効果的なマーケティング戦略を構築し、着実に実践していくことで持続可能な成長を達成できる可能性があります。ぜひともBtoBマーケティングを実践し、営業活動の生産性アップに取り組んでみてください。

関連資料
AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
コンサルタント
八木 孝憲

理美容器具や化粧品メーカーの営業を経て、当社に入社。前職での経験を活かし、デジタルを活用したBtoB営業の売り上げ拡大や企業のブランディング戦略に業種・業界問わず携わっている。クライアントに最適なソリューションを提供すべく伴走型のコンサルティングスタイルを信条としている。

八木 孝憲
関連サービス
データ利活用ナレッジ

関連記事

ABOUT
TANABE CONSULTING

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上