1 BtoBマーケティングとは?
BtoBマーケティングとは企業間における購買活動の見込み客発見から、顧客の意思決定プロセスに基づいた施策の実行など、企業間取引におけるマーケティング活動全般のことを指します。
従来のBtoB企業においては、マーケティングよりも営業活動が重視されていました。営業マンがテレアポや飛び込み営業などを行い、足で稼ぐ営業で見込み顧客を獲得し、受注につなげてきました。
しかし、昨今の急速に進むデジタル化に伴い、企業の購買プロセスも大きく変化しています。検討から購入までの期間が長期化する傾向があるBtoBのビジネスにおいては、製品やサービスの導入までのプロセスがWeb上で検討されるようになりました。つまり、見込み客の情報取得先が営業マンからWebサイトへとシフトしているのです。
2 BtoBマーケティングとBtoCマーケティングの違い
BtoBマーケティングを成功させるためには、BtoCマーケティングとの違いを深く理解することが不可欠です。BtoBとBtoCでは、顧客の購買行動や意思決定の構造に根本的な違いがあり、これがマーケティング戦略全体に大きな影響を与えます。
意思決定者が「組織」か「個人」か
BtoBでは、購買の意思決定には担当者、部門長、経営層など、複数の人が関わる組織的なプロセスを経ます。このため、個人の感情よりも、論理的で客観的な根拠に基づいた提案が求められます。対照的にBtoCの意思決定者は基本的に個人であり、感情や衝動、ブランドイメージが購買動機に強く影響します。
購買動機が「合理的」か「感情的」か
企業が製品・サービスを導入する目的は、「売上向上」「コスト削減」「業務効率化」といった事業目標の達成です。したがって、BtoBの購買動機は極めて合理的な判断基準が重視されます。一方、BtoCの購買動機は、個人の欲求や楽しさ、憧れなどの感情的な要素が主要となります。
取引単価と期間の「規模」
BtoBの取引は、一般的に単価が高額になる傾向があり、契約期間も長期にわたります。そのため、導入後のLTVを重視した顧客との長期的な関係構築が非常に重要です。BtoC取引は単価が比較的低く、取引が短期で完結することが多い点も大きな違いです。
市場規模とターゲットの「特性」
BtoB市場は、特定の業種や課題を持つ企業に絞られるため、市場規模は限定的です。この特性から、不特定多数にアプローチするのではなく、明確なターゲットに深く刺さるような専門的な情報を提供することが、戦略を成功させる鍵となります。
これらの本質的な違いを理解することが、続く戦略設計の土台となり、複雑な組織的購買プロセスへの対応を可能にするのです。
3 BtoBマーケティングの戦略立案と施策の進め方
上記に記載の通り、BtoBにおいてマーケティング活動は重要でありますが、施策優先で実施したマーケティング活動は失敗するケースが多いでしょう。よくありがちなのが、いきなりツールを実装し活用しはじめるケースです。他社で成果が出ているからと、その情報に流されて最初に施策・手法に入るのでは到底望む成果は得られません。
重要なことは、まずマーケティング戦略を設計し、計画的に推進していくことです。
戦略策定におけるステップは以下の通りです。
⑴現状分析
まずは貴社の経営状況を整理し、戦略を立てるうえでの分析を実施します。その際に使用するフレームワークとして3C分析を実施すると良いでしょう。「顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)」の3つの要素を分析する手法であり、これらの頭文字を取って3C分析と呼ばれています。
3C分析を実施する事で、市場動向や顧客のニーズ、自社と競合の強み・弱みを見つけ出すことによって、自社にとって最適なマーケティング戦略の策定に役立ちます。
まず、顧客に関しては、直接顧客アンケートや現場営業へのヒアリングなどを用いて、顧客の抱える課題やニーズ、どのようなプロモーション施策が訴求として良いのかなど、顧客のインサイトを理解することが重要です。また、市場全体を把握するためにマクロ分析も実施すると、顧客の市場動向を把握することができるので、同時に実施すると良いでしょう。
次に競合に関しては、ベンチマークとしている企業を中心に分析します。商品・サービスの特徴だけでなく、売り上げ規模、顧客数や営業人員などのリソース面も洗い出して分析します。また、競合企業のデジタル施策の分析も重要です。Webサイトでの訴求ポイントやデジタル上での広告の有無、コンテンツ内容などを分析し自社と比較します。
最後の自社に関しては、自社の商品・サービスの特徴や強み、売上や顧客別のシェア率、組織人員・投資能力などの自社リソースも併せて分析します。また、デジタル上で現状どのような施策をしているかも洗い出します。Webサイトからの問い合わせ数や総ビュー数、デジタルコンテンツなどを分析し、競合と自社を比較した上でデジタル上の施策を考えていきます。
⑵ターゲットと施策選定
市場環境や自社と競合の違いを把握できたら、どの顧客に注力すべきなのかを特定します。ターゲットの選定はセグメンテーションを実施した後に、ペルソナ選定、ペルソナのカスタマージャーニーを設定するとよいでしょう。
セグメンテーションとは市場細分化のことで、市場をいくつかのセグメントに細かく分類し、注力するセグメントを決める事になります。自社製品やサービスを提供する市場にいる顧客を、顧客の特性やニーズに応じて分類をしていきます。セグメントする分類としては、業界や業種、売上高などの企業特性や商流などのビジネスモデルなどの切り口で顧客を細分化させて注力する市場を決定することになります。
注力するセグメントを決めた後、その顧客をより具体的にイメージするためにペルソナを作成します。ペルソナとは、ターゲット企業の意思決定を担う顧客を架空の人物像にまで落とし込んだものです。購買決定する担当者の行動や課題を鮮明に想定することで、コミュニケーションや施策設計がしやすくなるため、アクションも実行しやすくなります。
ペルソナを策定した後にカスタマージャーニーを作成します。カスタマージャーニーとは顧客の体験を旅に例えて表現したものになります。顧客があるサービスや商品を知り、購入・検討・利用する過程で、Webサイトや営業担当者など企業との接点を持ちます。一連の行動や考えていることをプロセスとしてまとめたものが「カスタマージャーニーマップ」です。
※タナベコンサルティングにて作成
図にあるように顧客が認知してから比較検討、購入、リピートなどのプロセスにおいての行動や感情を詳細に考える事でタイミングに応じたWeb施策やツール選定を実施する事ができるようになります。
4 BtoBマーケティングの手法
カスタマージャーニーをもとに各施策を選定していきます。以下は手法の一例です。
⑴Web広告
Web上で新規リード獲得のためにインターネット上で広告を出稿して、自社のWebサイトやランディングページなどに誘導する方法です。予算に応じた展開が可能になるため、予算をかければ、多くのリードを獲得できる即効性がある手法です。
ヤフージャパンやGoogleなどの大手ポータルサイトのリスティング広告、SNS広告やバナー広告などの種類があるため、自社のサービスに合う広告への出稿がポイントになります。また、広告は費用をかけ続けなければいけない点にも注意が必要です。
⑵コンテンツマーケティング
自社のWebサイトに自社コラムやダウンロード資料、事例集などのコンテンツを掲載する事で、Web上での検索順位を上げるとともに、問い合わせ数を増やす手法になります。ペルソナの顧客が興味をもつ製品やサービスと関連付けたコンテンツを作成する事で、興味を持ってもらい、そこから問い合わせフォームや資料請求ページなどに誘導してリードを獲得します。
一度制作をすれば自社のサイトなので、半永久的に見込み客を獲得し続けることができます。しかし即効性は低く、ある程度の量のコンテンツが必要なので、定期的に更新していかなければいけません。また、検索順位が上がるまでに成果として現れるまでじっくり取り組む事が重要になります。
⑶MAツールの活用
MAはマーケティングオートメーションの略で、営業活動に活かすためにリードの行動や情報などを管理させ、自動化・効率化できるツールの事です。
MAツールを活用すれば、見込み顧客をサイト内で育成する施策や顧客の見込み度をスコアリングし、自動化させることが可能になります。
例えば、どの資料をWebからダウンロードしたのか、メルマガはどのくらい開封されたのか、などリードの行動を可視化する事ができるので、どのくらい購買意欲があるのかを管理する事ができます。また、リードの関心や購買意欲に合わせたコンテンツの自動配信も可能になります。
5 BtoBマーケティングにおける主要な課題と成功への視点
BtoBマーケティングを成功に導くために、多くの企業が直面する主要な課題と、それを克服するための視点を紹介します。
部門間の壁(MQL/SQLの定義の曖昧さ)
最も大きな課題は、マーケティングと営業の間でリードの質に対する認識にズレが生じ、確度の低いリードが渡されて機会損失や部門間の軋轢を生むことです。これを克服するためには、マーケティングが育成したリード(MQL)と営業が対応すべきリード(SQL)の定義を両部門間で明確に共有し、MAによるスコアリングを通じてリードの質を客観的に可視化する仕組みを構築することが不可欠です。
施策の「点」止まりと効果測定の難しさ
Web広告やコンテンツ制作といった個々の施策が断片的になり、全体像としての効果測定や投資対効果(ROI)の把握が困難になるという課題があります。これに対応するには、最終目標であるKGIからブレイクダウンしたKPIを、リード獲得数だけでなく「Webサイトの転換率」などプロセスごとに設定し、データに基づいたPDCAサイクルを回す体制を構築することで、施策のボトルネックを特定し改善を進めることが可能になります。
コンテンツ制作リソースと専門性の継続的な確保
BtoB顧客に対して論理的で専門性の高い情報を継続的に提供するために必要な、質の高いコンテンツ制作リソースと専門知識の不足は、多くの企業にとって共通の壁です。これを克服するためには、外部リソースに依存するだけでなく、社内に存在する営業資料、技術文書、現場の知見といった一次情報を積極的に活用し、それを効率的にコンテンツ化するための仕組みと体制を持つことが重要になります。
6 BtoBマーケティングを成功させるためのポイント
⑴問合せ獲得までの施策設計を考える
今まで、ターゲットになる顧客理解と顧客の検討フェーズにおける施策選定の重要性をお伝えしました。フェーズごとの施策を考える上では、段階的に問い合わせを獲得できるような設計に落とし込む事がポイントです。Webサイトに訪れてすぐに商談につながる問い合わせに繋がる事が理想ではありますが、現実的には難しいです。そこで、興味を持ってもらう段階においても、お役立ち資料や事例コンテンツを用意しておくことで、顧客の興味関心を高めていくことができ、より商談に繋がりやすくなります。また、ダウンロードできるようにしておくことで顧客情報を獲得できるので、顧客接点を持つことができます。
⑵全社を巻き込んだ取り組みにする
ここまでお伝えしたマーケティング戦略は、本来全社的に取り組むべきですが、マーケティング部門に丸投げになってしまう事が多いです。個別で推進しているケースは一方通行の取り組みになりがちで、営業部門などと軋轢を生み、失敗に繋がりやすくなります。
例えば、「マーケティング部門がリードを獲得しても、営業は見込みの薄い先には行く時間がない」、「理解が足りずに顧客管理ツールの入力は手間が増えるだけと認識される」などが営業サイドからの不満としてよく挙げられます。マーケティング活動においては課題の共有や戦略構築、施策の選定などを営業部門と連携して全社推進体制を構築する必要があります。経営戦略と紐づけて経営トップのリーダーシップでプロジェクトを組成し、マーケティング部門だけでなく、営業部門から部門長クラスを選抜し、メンバーを選定すると良いでしょう。
⑶データとテクノロジーを戦略的に活用する
戦略立案で設計したターゲットやペルソナに基づき施策を実行しても、その効果をデータで定量的に測定し、改善しなければ、継続的な成果は得られません。特にBtoBでは、リードの行動履歴やスコアリング結果といったデータをMAツールやCRM/SFAツールで一元管理し、部門横断的に活用することが重要です。このデータドリブンなアプローチにより、施策のボトルネックが明確になり、勘や経験に頼らない精度の高い意思決定が可能となります。
⑷顧客視点に基づいた専門性の高いコンテンツを提供する
BtoB取引は合理的な判断が重視されるため、顧客が抱える複雑な課題解決に役立つ、専門性の高いコンテンツを継続的に提供し続けることが成功の鍵となります。自社の強みを一方的に伝えるのではなく、顧客が検討フェーズに応じてどのような情報を求めているかという顧客視点(インサイト)を徹底的に追求し、信頼を構築する姿勢が求められます。単なる製品紹介ではなく、導入事例、お役立ち資料、コラムなどを通じて、自社が提供できる価値とソリューションを具体的に示すことが、見込み客の育成(ナーチャリング)に直結します。
7 まとめ
デジタル化が進む現代において、BtoB企業にとってマーケティング部門は、勘と経験に頼る営業から脱却し、データと論理に基づき企業の成長を牽引する中核部門となります。しかし、戦略設計から部門連携、MAツールの導入と定着化まで、社内だけで体制を構築し、効果を最大化させることは容易ではありません。
貴社がこの複雑なプロセスを確実に実行し、デジタルシフトを成功させるためには、外部の専門的な知見を活用することが有効です。タナベコンサルティングは、戦略コンサルティングファームとして培ってきた経営視点と、BtoBマーケティングにおける実践的なノウハウを融合させ、戦略設計からMA/CRM導入、そして部門間連携体制の構築まで、一貫した支援を提供しています。
貴社の事業成長を確実なものとするために、ぜひ一度、タナベコンサルティングにご相談ください。