客観的指標を用いた納得性のある降格を実施する

降格人事について
降格とは、等級や資格などの地位を下げることを指す言葉であるが、多くの企業では一定の降格ルールは定められているものの実際には運用されていない、もしくはそもそもルールにもなっていない企業が多いのではないだろうか。
この背景には、日本企業の多くが、経験(年功)によって能力が向上し、それによって評価されることを前提とした「職能資格型制度」(メンバーシップ型)をベースにした人事制度運用に終始しており、等級や資格に基づく基本給は実態として既得権化していることが大半で、降格することや基本給が減るということは考えづらかったからであると考えられる。
しかし、昨今は「役割等級制度」(ジョブ型)への移行により、必ずしも年齢や経験を積み上げた方が評価される訳ではなく、役割発揮や成果に応じて評価される仕組みへと変わりつつある。
そのことにより役割や求められる成果が発揮出来ていない状態が続くと降格するということも検討する必要がある。
降格人事を適切に運用するということは、ポジションに適切な人材が当てはまるということになり、周りに対する納得感も高まる。
本コラムでは降格人事の進め方について事例も踏まえて紹介する。

降格人事のポイント
ポイント①:客観的なデータに基づいて実施する
客観的なデータとは、働きぶり、成果発揮度合、目標未達などがどの程度であれば降格に値するのかを予め明示できているかが重要となる。
タナベコンサルティングで構築する場合は、「人事評価結果が〇ランクを3年間連続で取得した場合降格対象者として選定を行う」など、人事評価を客観的なデータとして用いるケースが多い。
ポイント②:猶予期間を設ける
客観的なデータに加えて、降格対象になり得そうな人材に対して事前通知を行い、降格を行う前に追加アセスメント(研修・検査・課題)等を行い、改善された場合や成果向上の見込みが認められた場合は降格を行わないという運用も一つである。
単に結果だけで降格するのではなく、改善機会を設けることで慎重に降格対象者を選定することに繋がる。
ポイント③:本人との面談を行う
実際に降格となる場合には、本人のモチベーションダウンは避けられない。
降格者との面談を行う場合において「どの点が良くなかったのか」という点のみに焦点を当てるのではなく、「どのように改善すれば、元に等級に戻れるのか」という点を中心に面談していただきたい。
さいごに
降格人事と聞くとネガティブな印象を持つ方は多いと思うが、一方で降格対象者にとっては自分の持っている能力・スキル以上に高い成果を求められ続けられるポジションよりも、発揮できる役割範囲で業務遂行をした方が価値が発揮でき、降格後は高い評価を得られモチベーション高く働くことができているということは少なくはない。
会社としての成果だけではなく、本人にとって一番パフォーマンスや役割が発揮できるポジションはどこなのかという視点で運用することがあるべき姿であると考える。
また、降格者が現れるという事は昇格時の選定基準が適切であったのかという点についても言及しておきたい。
「次のポジションで力を発揮してくれるだろう」という期待と推測の中で、昇格は行う場合が多いことから、その推測の精度を高め、適任者をどのように選定するのかという点についても改めて見直していただきたい。
降格人事は、その企業のこれまで成り立ちや育まれてきたカルチャーによって、どのようなステップを踏んでいく必要があるのかは企業によって異なる。
それぞれの企業に応じて労使トラブルを防ぐ観点からも工夫した制度設計をしていただきたい。
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タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
チーフマネジャー山中 惠介
- 主な実績
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- 大手小売業向け人事制度構築コンサルティング
- 製造業向け退職金制度再構築コンサルティング
- 建設業向け定年延長制度設計コンサルティング
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