加点評価で生まれる「挑戦」と「成長」

加点評価とは
評価制度は、社員のモチベーションや成長に大きな影響を与える。
どのような視点で評価を行うかによって、社員一人ひとりの意識や意欲が変わり、最終的には企業の業績にも良き影響を及ぼす。
その中で近年、特に注目されているのが「加点評価方式」である。
加点評価とは、社員の努力(プロセス)や成果、成長した点をプラスのポイントとして評価する方式のことである。
これに対し、従来の評価制度では「減点方式」が一般的に採用されてきた。
減点方式は、ミスや目標未達成を基準にして評価を下げる仕組みだが、加点評価では「どのようなプラスの行動があったか」「どれだけ成長したか」に焦点を当てている。
この考え方を導入することで、社員は自分の成長を実感しやすくなり、挑戦する意欲の向上が見込まれる。
結果として、職場全体が前向きな雰囲気になり、企業の成長にもつなげることができる。
つまり、加点評価を適切に導入することで、組織内にポジティブな文化を生み出し、社員一人ひとりのパフォーマンス最大化を誘引することが可能となる。

減点評価と加点評価の違い
評価制度には、大きく分けて「減点評価方式」と「加点評価方式」の2種類がある。
どちらを採用するかによって、社員の行動や意識、組織の文化に変化が現れる。
1. 減点評価評価の特徴
減点評価方式では、社員の行動や成果を「期待通りにできたか」「ミスをしていないか」といった基準で判断し、基準を満たせなかった場合に評価を下げる仕組みである。
例えば、売上目標を達成できなかったり、業務でミスをしたりすると、評価が下がる可能性がある。
この方式では、社員は「ミスをしないこと」に意識を向けるようになり、新しい挑戦を避ける傾向を強めてしまう。
なぜなら、リスクを取って失敗すると評価が下がるため、無難な選択をするほうが得策だと考えてしまうからである。
また、減点評価が過度に強調されると、社員は自分の能力を発揮する機会を逃すことにもなりかねない。
それによって挑戦的な行動を取らなくなるため、イノベーションや新しいアイデアが生まれにくくなってしまう。
当然ながら、命の危険に晒されるような職種(業界)においての減点評価は致し方ないことは押さえておきたい。
2. 加点評価の特徴
一方、加点評価方式では、
「どんな成果を上げたか」「どれだけ成長したか」「どのようなプラスの行動をしたか」に焦点を当てる。
例えば、新しいアイデアを提案した、業務改善を行った、チームのサポートをしたといった行動が評価され、ポイントが加算される。
この方式では、社員は「どうすれば加点されるか」を考えながら行動するため、前向きに仕事へ取り組むようになる。
また、たとえ目標を完全に達成できなかったとしても、目標達成に向けたプロセス(努力や成長)は適正に評価されるため、次の挑戦へ熱は冷めないままである。
加点評価をもって評価をすることによって、社員が自己改善を意識しやすく、結果的に企業全体のパフォーマンス向上へとつなげることができる。

加点評価のメリットとデメリット
先述した通り、加点評価方式には多くのメリットがあるが、実際に導入する際には注意すべきデメリットも存在する。
下記では、加点評価方式のメリットとデメリットを整理している。
1.加点評価のメリット
(1)社員のモチベーション向上
努力や挑戦が評価されることで、社員が「頑張れば認めてもらえる」と感じ、働く意欲が向上する。
これは特に、成果を上げた社員にとって、さらなる挑戦を促進させる要因となる。
(2) 挑戦しやすい職場環境の醸成
減点方式では社員はリスクを避ける傾向が生まれるが、加点評価では「挑戦したこと」自体が評価されるため、新しいことに積極的に取り組みやすくなる。
失敗を恐れず、前向きに業務に取り組むことができる環境を意図的に作り出すことが可能となる。
(3)評価の透明性が高まり、公平感の担保
「どの行動が評価されるのか」が明確になるため、評価基準の納得感が高まり、
社員が正しく努力できる環境を整備することができる。
透明性の高い評価基準は、社員同士の評価の公平感を生み出し、モチベーションの向上にも寄与する。
(4)ポジティブな企業文化の醸成
できたことに目を向ける文化が根づくことで、社員同士が互いを称賛し合い、組織の雰囲気が改善される。
また、ポジティブな相互フィードバックが増えることで、社員の企業に対する信頼感や帰属意識が高まることが期待できる。
2. 加点評価のデメリット
(1) 評価基準の設定の困難さ
「何をすれば加点されるのか」が明確でないと、評価の公平性が損なわれる可能性がある。
そのため、具体的な基準を設けることが重要だ。曖昧な基準では社員が混乱し、正しい方向での成長が促されない恐れがある。
(2)考課者の適切な考課スキル
成果だけでなく、社員の努力や成長のプロセスも評価する必要があるため、考課者が適切に判断できるようにする必要がある。
感情的な判断や偏った見解を避け、公平で客観的な評価が求められる。
(3)減点方式とのバランス
重大なミスやルール違反に対しては、一定の減点評価を適用することも必要である。
加点方式評価と減点方式評価のバランスを適切に取ることによって、社員の挑戦する意欲を維持しながら、
成長を後押しする評価制度へとアップデートすることができる。

加点評価の導入方法
加点評価を効果的に導入するためには、いくつかのステップを踏むことが重要である。
STEP1:評価基準の明確化
どの行動や成果が加点対象になるのかを明確に定め、社員が理解しやすいルールを作る。
評価基準を示すことで、社員が自分の成長ポイントを意識しやすくなり、より前向きな行動を促進する。
STEP2:定期的なフィードバック
定期的な面談や評価面談を活用し、「この点が加点された」「次回はこうするとより評価が上がる」
といったフィードバックを行うことで、社員の成長を促すことができる。
その際のフィードバックは、具体的でポジティブなものであることが重要である。
STEP3:減点方式とのバランス
加点評価を中心にしつつ、重大なルール違反や怠慢な行動には適切な減点を適用することで、公平な評価制度とすることができる。
両者をうまく融合させることで、社員の意識がよりバランスの取れたものになる。
STEP4:社員への説明と考課者研修
新しい評価制度を導入する際は、社員にしっかり説明し、
考課者への研修もあわせて実施することで、評価制度の透明性と理解を深めることができ、
評価制度の成功つなげることができる。
まとめ
加点評価方式は、社員のモチベーションを向上させ、組織全体のパフォーマンスを高める効果がある。
挑戦しやすい環境を作ることで、企業の成長を加速させる可能性を秘める。
しかし、導入する際には明確な評価基準の設定や、適切なフィードバックの仕組みが不可欠である。
社員が納得できる評価制度を構築し、ポジティブな企業文化を育むことが、長期的な企業成長に繋がると考えられる。
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この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
コンサルタント稲垣 咲香
- 主な実績
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- 中堅電機工事業:人事制度運用支援、採用戦略
- 中小物流業:人事制度再構築コンサルティング
- 中小商社:人事制度再構築コンサルティング