
エンゲージメントスコアとは
「エンゲージメントスコア」とは、社員が自分の働く組織に対して、どれだけの愛着や信頼、貢献心を持っているかを数値化したもので、人的資本経営や組織開発に関して注目を集めている指標である。社員が「満足しているか」、もしくは「不満があるか」といった感情的な側面に留まらず、日々の業務に対する主体性、組織への忠誠心、チームへの貢献姿勢など、より動的な働き方を示す要素を含んでいるのが特徴である。
エンゲージメントが高い状態とは、例えば「自分の仕事に意味を感じている」「職場の人間関係に信頼がある」「企業理念や目標に共感している」といったポジティブな認識を持ち、日々の業務に前向きに向き合っている状態であると捉えられる。
エンゲージメントが高い企業では、自然と生産性も高くなり、創造的なアイデアや改善提案も生まれやすくなる。また、離職率の低下や採用活動での企業イメージ向上にも繋がるため、経営戦略として積極的に取り組む企業が増えている。
エンゲージメントスコアは、社員アンケートやエンゲージメントサーベイと呼ばれる短期的な意識調査、あるいは1on1ミーティング(2on1、1on2)の内容分析などにより定量的に把握されている。そして、これらのデータを元に部門ごとの傾向を分析し、具体的な状況や改善アクションに反映させているのである。
このように、エンゲージメントスコアは「社員の気分」といった感情的な指標ではなく、企業価値を中長期的に高めていく中で注目すべき経営指標として集中されている。

エンゲージメントスコアが高い企業の特徴
エンゲージメントスコアが高い企業には、いくつかの共通した特徴がある。最初に挙げられるのは、「明確なパーパス・ビジョン・ミッションの共有」である。 社員が自らの業務の意義や、会社全体の目標に対して理解と共感を持てる環境では、自分の役割に誇りと責任感を持って働くことができる。
次に、「オープンで双方向のコミュニケーション文化」も大きな要素である。経営層から現場まで、立場を越えて自由に意見を交わせる風土がある企業では、社員が自分の声が尊重されていると感じられる。
さらに、エンゲージメントスコアが高い企業では、「成長実感が得られる仕組み」が整備されている。 具体的には、定期的なフィードバック、スキルアップのための研修の機会、キャリアパスの明確化などである。
また、「働きやすい職場環境」も重要な要素である。 柔軟な働き方の導入、適切な労働時間管理、ウェルビーイング(心身の健康)への配慮など、社員が安心して働ける環境づくりもエンゲージメント向上には欠かせない。
このように、エンゲージメントスコアの高い企業は、経営理念の浸透、信頼あるコミュニケーション、成長支援、職場環境の整備といった複数の要素をバランスよく実現しており、社員のモチベーションと企業業績の両方に良い影響を与えている。

エンゲージメントスコアを高める際のポイント
エンゲージメントスコアを高めるためには、単発的な結論や表面的な解決ではなく、社員の感情やモチベーションに寄り添い、継続かつ組織的なアプローチが求められる。実施する際は、形式的に行うのではなく、質問内容を自社の文化や課題に合わせて設計し、社員が本音で回答しやすいように配慮することが重要である。
次に大切なのは、「結果に基づく具体的なアクションの実行」である。サーベイを実施して何も対策を打たなければ、社員は「意見を聞かれても変わらない」という不信感を抱くようになり、逆に関与を下げてしまう恐れがある。スコアが低かった項目に対しては、改善策を明確にし、改善計画の進捗を共有することが重要である。 特に、現場の管理職が自ら行動を起こし、変化をリードすることが関与向上の鍵となる。
また、「中長期的な視点での取り組み」も欠かせない。関与は一朝一夕で高めるものではなく、組織文化や人間関係の中で徐々に築かれていくものである。定期的にサーベイを実施し、結果の経過を見ながら継続的に改善を重ねていくことが必要となる。
加えて、「全社的な巻き込み」も成功のための重要な要素である。 エンゲージメント向上は人事部門だけの取り組みではなく、経営層から現場のリーダーに至るまで、組織全体として一丸となって取り組むべき課題である。
このように、エンゲージメントスコアを高めるためには、「現状の暫定化」「具体的な行動」「長期的な視点」「組織全体での協働」の4つの視点を意識した解決が鍵となる。

エンゲージメントスコアを向上させた企業例
実際にスコア向上に成功した企業の事例を見ると、前述したポイントを押さえた解決策が功を奏していることが分かる。
とある製造業では、社員の「キャリアに対する不安」がスコア低下の原因となっていることが問題となっている。 そこで、社内キャリア相談窓口の設置や、他配置へのジョブローテーション制度、資格取得支援制度の導入など、キャリア支援の体制を整えたところ、特に若手社員のエンゲージメントスコアが大きく向上した。
また、とあるベンチャー企業では、経営層と社員の距離感を縮めることに注目し、毎月の全社会議で経営陣が社員からの質問に直接答える「オープンQ&Aセッション」を導入した。併せて、社内SNSを活用し、部門横断的な情報共有や称賛文化の醸成を進めた結果、部門間の連携もスムーズになり、エンゲージメントスコアの向上に繋がった。
このように、社員の声に真剣に向き合い、それに対して具体的な対策を講じた企業は、少しずつだとしても、確実にエンゲージメントスコアの向上に繋げていっている。
まとめ
エンゲージメントスコアは、社員の働きがいや働きやすさの定量指標であり、企業が持続的成長をしていく上で、欠かせない指標となっている。
スコアを高めるためには、現状を正しく把握し、課題に基づいた具体的な行動を継続的に実施していくことが必要となる。サーベイ結果を元に現場レベルで改善を進めたり、経営陣がコミットして組織文化の変革をリードすることで、社員は「自分たちの声が反映されている」と認識し、エンゲージメントの向上に繋がっていく。
実際の企業事例を見ても、取り組みの内容は多岐に渡るが、共通しているのは「社員に真剣に向き合うこと」と「変化を継続的に起こす意志」である。
これからの時代、人的資本が企業価値に直結する中で、社員の声に耳を傾け、「働きがい」と「働きやすさ」のある環境をつくり上げていくことは、全ての企業にとっての大きな課題となっている。
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この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー鎌田 智一
- 主な実績
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- 新卒・中途採用支援コンサルティング
- 乳業メーカーの要員計画策定支援コンサルティング
- 森林組合の中期ビジョン構築支援コンサルティング
- 総合ディスプレイ業の標準業務フロー作成支援コンサルティング
- 広島県内企業の女性活躍推進コンサルティング(広島県事業)
