人事コラム
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パーパスとは?企業成長におけるパーパスの役割

パーパスの再定義と社内浸透で企業文化を再醸成する

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パーパスとは?企業成長におけるパーパスの役割

自社の存在意義を時代に合わせてアップデートすることで
企業価値向上へと繋げる

社会トレンドとパーパスの関係性

社会トレンドとパーパスの関係性

「失われた30年」であるデフレ経済からの脱却が本格化しつつある。その証左として、春闘での賃上げ率が5%強、日経平均株価が過去最高を更新、日銀の政策金利0.5%への引き上げ等が挙げられ、いずれも30年以上の歳月を経た動きである。今まさに、新30年サイクルに向けた転換期に日本は立っている。
そして人事トレンドもこれまでの常識が通用しないレベルでの変化が起きていることは、多くの経営者、人事担当者の方が肌で感じていることであろう。キャリア・雇用・働き方についての考え方が一新されつつあり、全ての企業で新たな価値観へのアップデートが求められている。
またその対応は、制度・仕組みに限ったことではない。自社の理念や存在意義など根本思想も含めてである。
このような背景を踏まえて、現在自社の存在意義、つまりはパーパスを見直す企業が増えている。以降でパーパスの重要性や事例に触れるが、その前提としてパーパスの定義について確認をしたい。
パーパスに近しい考え方として、ミッション・ビジョン・バリュー(略してMVV)がある。明確な使い分けをしていない企業もあるが、定義づけをすると次のようになる。

〇パーパス  : 自社の企業の存在意義や社会的存在目的を指しており、「自社は何のために存在するか」という根源的な問いへの解
〇ビジョン  : パーパスの概念を発揮した暁に到達したい姿
〇ミッション : ビジョンを実現するために取り組むべき使命
〇バリュー  : ビジョンやミッションを実現するための社員全員が重視すべき行動規範

経営環境が劇的に変化している最中、自社の存在意義を改めて見つめ直し、再定義することが未来視点で成長するための礎となる。

パーパスの重要性

パーパスの重要性

それではなぜパーパスの再定義が必要となるのか。その理由として3つの効果が期待される。
一つ目は、「戦略推進力の強化」である。自社の存在意義を明確にすることで、全社のベクトルを統一し、実現に向けた推進力を強化することが期待できる。全社員がパーパスという同一の価値観を共有化することで、個々の自律性も高まっていく。
二つ目は、「組織力の強化」である。パーパスに共感した人材の採用力が高まることはもちろんのこと、社外のステークホルダー、アライアンス先からの企業評価が向上することで、総合的な企業価値向上が見込める。特に昨今ではサステナビリティの概念を大切にしているかが企業評価の判断軸になっていることを踏まえると、社内外に対して分かりやすく発信するというのは重要な要素となる。
最後の三つ目は、「人材力の強化」である。パーパスを人材採用・育成システムに展開することで、自社独自の競争力のある人材の採用・育成に繋げることが可能となる。
以上三つの強化を実現するため、パーパスの再定義が推奨される。

パーパスの設定方法

パーパスの設定方法

ここまではパーパスそのものの定義や重要性・効果について触れてきた。次はパーパスを設定する際のポイントを解説する。
まず前提として、パーパスは経営トップや役員の思いだけで作るものではない。様々な社員を巻き込みながら、自分事化しつつ明文化を進めるのが望ましい。その際には次のような共通の問いについて様々なメンバー同士で議論をし、自社らしい解を導き出すのが望まれる。

【共通の問い】

1.なにが達成できたら、自分達は社会からいなくなっても良いか。
2.自分たちがいなくなったら、社会はなにを失うのか。

具体的な企業事例を紹介する。
神奈川県横浜市に本社を置くクックパッド株式会社は、料理レシピの投稿・検索サービス「クックパッド」の展開を主業にする会社である。当社では「毎日の料理を楽しみにする」という理念を掲げているが、定款において「世界中のすべての家庭において、毎日の料理が楽しみになった時、当会社は解散する」と明記されている。このように社会がどのような状態になったら当社の存在意義は満たされるのか、またはより良い社会の状態を創り出せたかという思考で定義化することで、自社の存在価値を設定できるのである。

パーパスを自社に根付かせるには

パーパスを自社に根付かせるには

当然のことながら、自社のパーパスを絵に描いた餅にしたくないというのは全ての企業に共通する思いであろう。社員がパーパスに共感し、自らの行動として実践するところまで落とし込みが必要である。
それではどのようにして落とし込みをするのが適切なのだろうか。主には次の三点を実践されたい。

【パーパスを組織に腹落ちさせる三つの手法】

1.ビジュアル化
自社のパーパスを軸に理念体系を整備するとともに、社内外のステークホルダーにとって分かりやすくビジュアル化することで理解・浸透の土台となる。昨今では「パーパスブック」というような名称で冊子化し、全社員に配布するという企業もある。
2.仕組み化
パーパスを伝道する部門・担当者を明確化するとともに、例えば人事制度への展開や定期的な研修などの仕組みに落とし込むことが求められる。最近では「パーパス評価(または理念評価)」という名称の下、パーパスの体現度を評価項目に入れる企業も増えている。
3.習慣化
日常的な場や職場コミュニケーションシステムにおいて、パーパスについての発信や話し合いが行われる状態を作る。その際に望ましいのは部門の壁を超えることだ。同じ部門の場合にはどうしても同質的な見え方や思考になってしまう。パーパスの場合には他部門の異質的な考え方や思考プロセスで多角的に意見を述べ合うことが、落とし込みには適している。

上記のような具体的な施策を展開することで、パーパスを自分事化し、そして日常的な行動への落とし込みを意図的に促進していくことが重要である。

さいごに

持続的に成長・発展していくためには戦略・制度・仕組みなど多角的な改革が必要となるが、そもそも我々はどのような価値を社会に提供するのかの根本的な思想が確立していなければ、軸なき経営に陥ってしまう。あらゆる価値観や環境が変化する現代だからこそ確固たるパーパスを定義し、また自社内で浸透させることで、より良い企業文化の醸成を実現してもらいたい。

この課題を解決したコンサルタント

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