
HRBPの定義とHRBPが求められる背景
HRBP(HRビジネスパートナー)とは、経営層・幹部層のHR領域におけるビジネスパートナーを指し、主に戦略人事の設計から実装までを担うプロフェッショナル人材(或いは集団)と定義することができる。
ミシガン大学のデイブ・ウルリッチ教授が、「MBAの人材戦略」においてHRBPの役割定義をされたのがはじまりであり、主に以下の背景があると考える。
①ビジネス環境の変化、②人的資本戦略の重要性拡大、③組織の複雑化、④経営の戦略的パートナーシップ、⑤エンゲージメントとパフォーマンスの相関関係、⑥人事データドリブン
特にここ数年、④の経営における戦略的パートナーシップに対するエグゼクティブレイヤーの要求水準は高まる一方であり、如何にして、伝統的な人事の役割であるオペレーション業務やインフラ業務と合わせて、戦略人事業務(EX:経営戦略と連動した人事戦略の立案、中長期ビジョンを踏まえた要員計画の立案等)の比重を会社として高めていくことができるかどうかがポイントとなってくる。

HRBPが真に機能するために必要なKFS
(重要成功要因)
ここからは、HRBPが真に機能するために必要なKFSを3つご紹介したい。
■1つ目はリソースとキャラクターの把握である。
ある日を境に、自社における人事部門に対して、「HRBPに進化してほしい。」と懇願したとしても、そう簡単にHRBPは機能するものではない。
これまでのオペレーション業務やインフラ業務を中心に担ってきた人事担当者からすれば、日常業務に加えて戦略人事業務を担う負担は計り知れない。
また、オペレーション業務やインフラ業務に求められるコンピテンシー(ここでは資質や特性として取り扱う)は、戦略人事業務に求められるコンピテンシーは似て非なるものである。
一例ではあるが、オペレーション業務やインフラ業務では、「正確性」が求めれていたが、戦略人事業務では、「イノベーション」が求められることが多い。
ゆえに、まず最初に押さえていただきたいのは、人事部門の人的リソースやキャラクターを踏まえて、戦略人事業務を担うことができる人材は誰かを明確に特定することが大切である。
※オペレーション業務やインフラ業務も大切であり、戦略人事業務と比較して、どちらが良い悪いという考えは一切なく、適所適材でお考えいただきたい。
■続いては内省化とアウトソーシングの最適化である。
現状の人事部門の業務(オペレーション業務+インフラ業務)と今後求めていく戦略人事業務を体系的に整理したうえで、継続的に内省化していく業務と外部の専門家にアウトソーシングしていく業務割合を再配分していくことをおすすめする。
先述の通り、人的リソースは限られているため、自社の人材を何に注力させるべきなのか、各社における人事ビジョンや人事部ミッションから逆算すると、どのような優先順位になるのかを押さえていただきたい。
■最後に自社の人事戦略・主要人事施策の現状把握である。
PMVV・人事戦略(人的資本戦略・人材マネジメント体系)・主要人事施策(人事制度・教育制度)の主要課題(As-Is)とあるべき姿(To-Be)を把握することなく、戦略人事業務のウェイトを高めていくことは非常に効率が悪く、本質的ではないと言える。少なくとも以下のような切り口の現状把握には注力いただきたい。
1. 経営システム(PMVV)の分析
(1)パーパス・ミッション・ビジョン・バリューの連動性分析
(2)全社方針・部門方針のマネジメントサイクル分析
(3)主要P/L・B/Sを踏まえた財務価値分析
2. 人的資本戦略の分析
(1)人的資本コンセプト(思想・体系図)分析
(2)人的資本施策の分析
(3)人事KPI分析
3. 人事戦略体系の分析
(1)人材マネジメント体系(採用・適応・配置・育成・評価・代謝)の連動性分析
(2)人材マネジメント体系に対する主要施策の取り組み分析
4. 人事施策(人事制度・教育制度)の主要課題分析
(1)人事フレーム(職種・ステージ・等級・階層)に関する分析
(2)評価制度・賃金制度に関する分析
(3)教育制度(OJT・OFF-JT)に関する分析
5. エンゲージメント分析
(1)組織カルチャー(存在価値・経営に対する理解度)の分析
(2)仕事エンゲージメント(仕事に対する活力・熱意)の分析
(3)組織エンゲージメント(組織に対する愛着・貢献意欲)の分析

HRBPの主な役割
ここからは、HRBPの主な役割について述べていくこととする。
HRBPの主な役割は「自社の経営戦略と人事戦略を連動させること」であり、以下のような役割が求められる。
1. 人事ビジョンの策定(自社における人事領域の目指す姿)
2. 人的資本経営コンセプトの策定
3. 上記1・2を踏まえた自社独自の人材マネジメント体系の整備
4. 上記1・2・3を踏まえた人事KPIの策定
5. 自社のPMVVを踏まえた人材ポートフォリオ設計や要員計画づくり
6. 自社のPMVVを踏まえた主要人事施策の改革(人事制度・教育制度・採用戦略)
7. 上記1~6を育む組織カルチャーの改革
上記は一例であり、各社の現状(As-Is)とあるべき姿・求める未来(To-Be)に対して打ち手は変わってくると考えられる。

HRBPの効果的な活用術
オペレーション業務やインフラ業務同様に、戦略人事業務についても一部アウトソーシングする企業が増加傾向にある。
当然ながら、自社の既存人材を育成し、HRBP化に向けて投資(時間・費用)していくことは大切である一方で、あまりに時間がかかり過ぎては、自社の事業・経営戦略の改革に人事戦略の改革が出遅れるといったことが容易に起こってしまう。
日々進化し続ける経営環境・人事環境においては、外部HRBPを自社に導入することで、スピード感をもって、社内の戦略人事化の推進と合わせて、既存の人事担当者の育成に投資することができるという視点も押さえていただきたい。
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部 エグゼクティブパートナー浜西 健太
- 主な実績
-
- 大手IT業:人事制度再構築コンサルティング
- 大手建設業:人事制度再構築コンサルティング
- 大手卸売業:人事制度再構築コンサルティング
- 中堅美容業:人事制度再構築コンサルティング
- 中堅介護福祉業:人事制度再構築コンサルティング
- 中小製造業:中期ビジョン策定コンサルティング
- 中小サービス業:マーケティングコンサルティング
- 中小製造業:マーケティングコンサルティング
- 中小サービス業:採用コンサルティング