M&A情報
財務デューデリジェンスとは?
企業規模で変わる実務と前工程の重要性を解説
2025.11.07
事前の情報開示状況がデューデリジェンスの鮮度に影響する
財務デューデリジェンス(以下、財務DD)はM&Aプロセスにおいて不可欠です。これまで開示されてきた情報に基づき、想定される企業像と実際の企業との整合性を確認する重要なフェーズです。
財務DDに入るまでに(さらに言えば意向表明提出前までに)、現在までに開示された情報の量を再確認し、仮に情報量が少ない場合は、対象企業に関する論点(仮説)を立てたうえでデューデリジェンスに臨むのが望ましいです。
事前に重要なチェックポイントを洗い出し、売主と共有することで、スムーズなデューデリジェンスの実施が可能となります。
売り手の協力がなければ、いくら優秀な税理士が財務デューデリジェンス(財務DD)を行っても、買い手(皆さま)が満足する結果を得ることは難しいです。
仮に事前の開示情報が少ない場合、M&Aアドバイザーによって情報がコントロールされているケースもありますが、意向表明前に可能な範囲で情報開示を求めることが必要です。
情報量が多いほど意向表明の鮮度も上がり、想定していた譲渡企業像と実際の企業とのギャップが少なくなります。これにより、買い手にとって最悪の状況である「デューデリジェンスの結果を受けて案件を見送る」というリスクを回避できます。
デューデリジェンスの結果、期待値と大幅にズレが生じ、交渉の決裂や案件の見送りを余儀なくされる状況を避けるためです。
したがって、現実と理想のギャップを小さくするためには、開示資料は多ければ多いほどよいです。
デューデリジェンスについて
こちらのトピックでは、譲渡側の企業が中小企業である場合にフォーカスして記載します。デューデリジェンスにおいては、以下の3点を考慮する必要があります。
1.求める資料が不十分である可能性を考慮する
資料が不十分である可能性を十分に考慮する。例えばオーナー企業の場合、事業計画がないなど、部門別の管理会計が不足していることがあります。
2.企業価値の算定
例)PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)の確認
簿外負債や資産状況の確認、適正な会計基準で計上されているか、実務や類似事例と比較して大きく乖離する資産がないかなど、純資産の適正化および収益力の適正化が必要となります(上場企業の計上基準など)。
3.リスク事項の検出
リスク項目を洗い出し、それらをガバナンス上のリスクか、譲渡額や条件調整で対応可能なリスクかに分類します。ガバナンス上のリスクは案件の見送りに直結するため、細部まで確認します。また、リスク事項を把握するだけでなく、PMIを見据え、自社グループに加わった際にリスクヘッジが可能かどうかの視点で項目を確認します。
上記3点を念頭に置き、財務DDに臨むことが重要です。
企業価値の算定について
企業価値算定には、以下の3つの方法があります。
1.コストアプローチ
企業が保有している資産および負債をベースに株式価値を算出する方法です。
純資産を基に算出する方法であるため、簿外負債の状況などが変動要因となります。
2.マーケットアプローチ
同業他社の市場情報や過去の類似取引を活用して算出する方法です。
3.インカムアプローチ
将来見込まれる収益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算定する方法です。事業計画の再現性などが重要となります。
実務上、用いられる算定方法は譲渡側の企業規模に応じて異なり、一般的には以下の順序となります。
コストアプローチ < マーケットアプローチ < インカムアプローチ
決定権者の数が多い(企業規模が大きい)ほど、デューデリジェンスで抽出された事項(結果)を論理的に条件面に反映させることが可能です。一方で、譲渡企業が一人株主(大株主および親族経営)である場合、オーナーの鶴のひと声で決定されることが多く、論理ではなく感情に基づく判断である場合が少なくありません。
そのため、デューデリジェンス前に可能な範囲で譲渡企業を調査し、売り手との期待値のズレが生じないようにすることが、中小企業のM&Aにおいて極めて重要です。
よって、デューデリジェンスで条件調整を行うのではなく、デューデリジェンスはPMIを見据えた調査(および確認作業)とすることが、中小企業のM&A成約において望ましいです。

文岩 繁紀
M&Aコンサルティング事業部
ゼネラルパートナー
金融機関を対象とした経営セミナー運営や、従業員教育支援を経験。M&A部門立ち上げに伴って、M&A部門へ異動。 M&Aアドバイザーとして活躍し、数十件の成約実績を積み、現在に至る。 譲受企業、譲渡企業それぞれの心情を理解し、クライアントに寄り添ったアドバイスを得意としている。
- 主な実績
-
- 上場企業のカーブアウト
- 債務超過、再生案件のご支援
- 50件以上のディールを実施
- 成長戦略や承継問題による、譲受側、譲渡側のアドバイザリー業務の実施
売り手向け - 承継問題や成長戦略による、譲渡側、譲受側のアドバイザリー業務の実施
例)建設業の売り手アドバイザー
サービス業の売り手アドバイザー
人材派遣業の売り手アドバイザー
小売り卸の売り手アドバイザー
ITの売り手アドバイザー
医薬関連の売り手アドバイザー
運送業の売り手アドバイザー
旅行業の売り手アドバイザー
製造業の売り手アドバイザー 等
※成約件数約50件程で多種多様な業種の支援を実施。
売上:数千万円から数十億円の案件をご支援。
おすすめ記事
最新記事
M&Aお役立ち資料
"経営をつなぐ"唯一無二のM&Aコンサルティングモデル
~サービス概要~
総合経営コンサルティングファームだからできる"経営をつなぐ"唯一無二のM&Aコンサルティングモデル。本資料ではサービス概要から近年のM&A市場動向、コンサルティング事例までをご紹介します。
事業承継・M&Aを成功させる
ための事前準備チェックリスト
譲渡に向けて事前に準備はできていますか?譲渡企業向けにM&Aを成功させるための事前準備チェックリストをぜひご活用ください。
2023年度 M&A・事業承継に
関するアンケート
2023年に実施したアンケート調査から見えてきた各企業が考えるM&A、事業承継とは?
アンケート結果をもとに企業が抱える課題を解決する「成長M&A」のポイントについて解説します。
関連記事
相談会
事業承継・M&Aに関する相談会
- 事業承継期を迎えているが後継者がいない
- 成長が鈍っている事業の譲渡を検討している
- 資本力を得て、もっと会社を成長させたい など



