M&A情報
中小企業M&Aとは?
中小企業M&Aの動向から見る、注意点を解説
2022.11.17

最近では中小企業が後継者不足問題の解消や事業拡大のためにM&Aを行うことも珍しくなくなってきました。そこで今回は中小企業M&Aの動向と「事業承継」M&Aにおける注意点を解説します。
中小企業M&Aとは
中小企業が後継者不足問題の解消や事業再建など、事業存続と発展のために実施するM&Aのことを言います。中小企業M&Aは、企業の持続的な成長と発展を支える重要な手段として、ビジネス環境の変化に対応するための柔軟な戦略を提供します。
中小企業がM&Aが検討する背景と目的
中小企業庁がまとめた「中小企業におけるM&Aの実施件数」(「事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について /2024年6月28日発行」によると、 国内の中小企業のM&A実施件数は、2014年度では「362件(事業承継・引継ぎ支援センターを通じたもの102件/民間M&A支援機関を通じたもの260件)」だったものが、2022年度には「5,717件(事業承継・引継ぎ支援センターを通じたもの1,681件/民間M&A支援機関を通じたもの4,036件)」となり過去最多となっています。 M&Aを検討する背景には、事業承継問題がメインとなっています。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(2020年3月)」によると、2025年までに70歳を超える中小企業経営者は245万人に達し、うち約半数の127万社が後継者未定という状況です。この数字は実に日本企業全体の1/3であり、この状態を放置すると約650万人の雇用、約22兆円のGDPが喪失する可能性があります。さらに127万社のうち半数の60万社は黒字企業と言われています。 長年続けてきた経営者にとって、従業員の雇用や販売仕入先等との取引を考えると、急に会社を閉じることはできません。M&Aは経営者・オーナーが代わっても企業の従業員や取引先、社名、技術、歴史等を引き継ぐことができる社会的価値の高い取り組みと言えます。 譲受企業であれば、企業のノウハウや人材確保をM&Aを通じて自社グループに獲得し、自社の成長を実現する狙いから、譲渡企業であれば、何とか企業を存続させたいという想いから、検討・相談が多くなってきています。
中小企業のM&A動向
中小企業におけるM&Aは、近年、事業拡大や経営課題の改善、そして事業承継の手段として広がりを見せています。かつては大企業の行うものとされていたM&Aですが、現在では中小企業でも積極的に活用されるようになりました。前述の通り、後継者不在の問題を抱える企業が増えていることから、事業承継を目的としたM&Aが増加しています。経営者の高齢化が進む中で、事業承継のためのM&Aは今後も増加傾向にあると予想されます。 中小企業の経営者がM&Aを選択する理由としては、「事業の存続」と「事業の成長」が挙げられます。事業の存続は、経営者が引退する際に取引先との関係や従業員の雇用を守るための手段となり得ます。一方で、事業の成長を目指す場合は、大手資本の傘下に入り、従業員や取引先、地域経済の発展を目指す「成長M&A」が増加しています。 M&Aを実行する際には、事前準備や社内調整、契約内容に関する問題など多くの注意点がありますが、M&Aの専門業者や仲介会社の増加により、これらのプロセスをサポートする体制も整ってきています。M&Aは中小企業にとって、事業の存続と成長を実現するための重要な経営技術となっています。
中小企業のM&Aにおける注意点
M&Aを実行するにあたっては、事前準備や社内調整、相手企業や仲介会社との契約内容に関する問題など、最終合意までの全体の流れの中でさまざまな注意点があります。今回は中小企業の「事業承継」M&Aにおける注意点を3つご紹介します。
注意点1 自社の利害関係者を把握、調整
M&Aを推進するにあたり、自社または自身の利害関係者の(株主、役員・従業員、親族、金融機関、取引先等)は誰かを把握し、事前にどのように調整を行っていくかを検討することは重要なポイントとなります。
株主は直接の利害が絡むため、M&Aを進める前から、どのように了解を得るかを慎重に検討し対策しておくことが求められます。議決権保有比率の高い株主が反対となった場合には、M&Aを進めることが難しくなることもあります。
また、役員・従業員においてはM&Aを実施することで、就労環境が変わるかもしれないという不安等から反対するケースもあります。事前にキーマンである役員・従業員に開示するかも含めて検討をすることが必要となります。
M&Aは利害関係者が多いこと、経営権が移動することや大きな資金が動くことから、より慎重に利害関係者の把握と調整を行うことが求められます。

注意点2 リスク回避のために情報は包み隠さず開示
M&Aにおいて、売り手側の企業は高く譲渡したい、早く譲渡したいといったことから、都合の悪い情報を隠してしまう場合があります。都合の悪い情報の中でも定量面・定性面があり、定量面では「簿外債務」「給与未払(未払残業代)」「粉飾」等、定性面では「労働紛争」「取引先との関係性」等が挙げられます。
買い手側の企業は譲受前にDD(デュー・デリジェンス)を実施し、DDの際に発覚することもありますが、交渉を進めていく中や譲渡後に発覚するケースもあります。虚偽や隠ぺいを行うと、最悪の場合は訴訟問題に発展し、譲渡額以上の賠償請求を受けることもあります。
売り手側の企業は情報開示を嘘偽りなく行い、誠実に対応することが買い手側の企業との信頼関係を築くことにも繋がり、後々のリスクを背負わないことにもなります。

M&A実行の心構え
譲受企業側は、いかに自社が望んでいる案件と出会えるかということがポイントとなります。そのためにM&Aを実施しているという事を社外へPRしたり、各M&A会社と連携し、いかに良い情報をキャッチできるかという仕組みづくりが重要となります。
一方、譲渡企業は、まず「M&A」をするという決断とM&Aで何を実現したいかという想いが重要となります。前提の考えがブレていると、せっかく良いお相手(譲受企業)と巡り合えたとしても最終局面で、躊躇してしまう可能性があるからです。
M&Aのアドバイザーとして携わる身としては、譲渡契約の直前でそのような気持ちになる理由も理解できます。大切な企業を譲渡するとなると誰しもが迷われるのは当然だと感じているからです。そんなときに、何のためにM&Aにチャレンジしたのかという、根幹の部分を思い出していただき、決断・実行に繋げて頂きたいと思います。
前段では、「承継」という言葉を使っておりますが、相談いただく多くの譲渡企業は承継問題以外に財務的にも厳しい企業が多いのも事実です。そのため、良いお相手を逃すということは、承継以前に企業存続の危機になってしまうこともあり得ます。
譲受・譲渡どちらの企業も、M&Aを行うという「気持ち」の決断が最も重要であると感じています。
M&Aは企業・事業のみならず、株主経営者、従業員の人生も大きく変化させることになるため、すぐには決断できないかもしれません。しかし、少しでもM&Aを検討されているのであれば、まずは弊社やM&A会社へ情報収集という形でご相談ください。ぜひ皆様にとって最適なご決断ができるよう我々アドバイザーも力を尽くします。

文岩 繁紀
M&Aコンサルティング事業部
ゼネラルパートナー
金融機関を対象とした経営セミナー運営や、従業員教育支援を経験。M&A部門立ち上げに伴って、M&A部門へ異動。 M&Aアドバイザーとして活躍し、数十件の成約実績を積み、現在に至る。 譲受企業、譲渡企業それぞれの心情を理解し、クライアントに寄り添ったアドバイスを得意としている。
- 主な実績
-
- 上場企業のカーブアウト
- 債務超過、再生案件のご支援
- 50件以上のディールを実施
- 成長戦略や承継問題による、譲受側、譲渡側のアドバイザリー業務の実施
売り手向け - 承継問題や成長戦略による、譲渡側、譲受側、のアドバイザリー業務の実施
例)建設業の売り手アドバイザー
サービス業の売り手アドバイザー
人材派遣業の売り手アドバイザー
小売り卸の売り手アドバイザー
ITの売り手アドバイザー
医薬関連の売り手アドバイザー
運送業の売り手アドバイザー
旅行業の売り手アドバイザー
製造業の売り手アドバイザー 等
※成約件数約50件程で多種多様な業種の支援を実施。
売上:数千万円から数十億円の案件をご支援。
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- 資本力を得て、もっと会社を成長させたい など
