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M&Aによる「攻めと守り」の事業拡大

2025.12.04

M&Aは本当に自社にとって有効なのか?


「M&Aは気になるが、自社の規模で本当にやるべきなのだろうか?」
「借入が増えることや、失敗時のリスクを考えると、一歩踏み出せない」
中堅・中小企業の経営者の方々と話をしていると、このような声をよく耳にします。

市場の成熟、人材不足、取引先の再編など、外部環境が変化する中で、自社だけの力で事業拡大を図ることに限界を感じつつも、M&Aという成長の手段に踏み出せない心理が働いているのです。

・M&Aはリスクが高いというイメージがあり、失敗事例ばかりが目立つ
・M&Aは規模の大きな企業が行うもので、自社には関係ないと感じてしまう
・譲渡価格・のれん・PMIなどの専門用語が心理的な壁になっている
・相談相手がいない、誰に聞いたらよいか分からない

こうした要因が重なることで、結果として「興味はあるが、決断は先送り」という状態が長く続きやすくなります。

しかし、適切に設計された中堅・中小企業同士のM&Aによって、売上・利益だけでなく、人材・技術・顧客基盤を一気に拡張している企業も少なくありません。

本稿では、そうした経営者の方々の不安を解消するために、「M&Aによる事業拡大」を経営戦略上どのように位置付けるべきかと、成功のために押さえておきたいポイントを整理してお伝えします。


M&Aは本当に自社にとって有効なのか?

M&Aによる事業拡大「3つの成功条件」


1.戦略整合性 ~「自社に適した戦略」を明確にする~

まず何より重要なのは、M&Aありきで考えないことです。
先にあるべきは、「自社はどこで勝ちたいのか」「5年後、10年後にどんな姿を目指すのか」という全体戦略です。

戦略が曖昧なままM&Aを行うと、「譲り受けた企業をどう活かすか」が見えず、結果としてシナジーが出ないまま疲弊してしまいます。
逆に、自社の強み・弱み・成長したい領域が明確であれば、「どのような会社を、どの規模で、どのような条件で譲り受けるべきか」を具体化できます。

M&Aを検討する際、経営者が陥りやすい誤解がいくつかあります。
例えば、「良い案件が来たら考える」という受け身の姿勢です。この"案件待ち"の考え方では、自社の成長戦略に合致しない案件に振り回される可能性が高くなります。M&Aは単なる案件探しではなく、戦略を実現するための手段であることを理解する必要があるでしょう。
また、「今の事業と近そうだから、とりあえず話を聞いてみる」という曖昧な基準で案件を選ぶことも危険です。
さらに、「シナジーが出そう」と感覚的に判断してしまうことも、経営統合(PMI)の失敗につながる要因となります。

M&Aは戦略の実行手段です。先に「自社に適した戦略」を言語化しておくことで、不要な検討や迷いを減らすことができます。

進め方としては、まず役員層・幹部を交えて、1~3年の短期、5~10年の中長期で「事業ポートフォリオ」を棚卸しし、自社の強み・弱み、人材・技術・地域・顧客などの観点で「補強したいピース」を整理することです。
その上で、以下のような優先度の高いパターンをいくつか描いていきます。

・既存事業の水平展開(同業・近接業の譲り受け)
・川上・川下への展開(仕入先・販売先のM&A)
・新規領域への足掛かり(少額からのマイノリティ出資)

ここまで整理できていれば、「この方向性なら検討する」「それ以外は検討しない」という判断軸が明確になり、意思決定が格段にしやすくなります。

2.リスクマネジメント ~「リスク」を定量化・見える化する~

次に、多くの経営者が感じるのが「失敗したらどうしよう」という漠然とした不安です。この不安が強いほど、M&Aの検討は進まず、「ゼロリスク」を追求しがちです。

M&Aにリスクがあるのは事実ですが、「見えないリスク」だからこそ過大評価されてしまうという側面があります。
そこで重要なのが、①財務リスク(投資回収期間、資金繰り)、②ビジネスリスク(主要顧客の離脱、人材流出)、③組織・文化リスク(風土の違い、意思決定スピードの差)といった要素を、可能な範囲で定量化・見える化することです。

経営者はリスクに対して誤った認識を持っていることがあります。例えば、「リスクをゼロにしてから決断したい」と考えたり、「デューデリジェンスを漏れなく実施すれば安心だ」と捉えたりするケースです。これらの考え方は、慎重さを重視するあまり、M&Aの検討を進める妨げとなることがあります。
また、逆に売上や利益といった数字だけに注目し、その他のリスクを軽視してしまうことも少なくありません。例えば、経営統合後の企業文化の違いや人材流出、主要顧客の離脱といったリスクは、財務諸表には表れにくいものの、M&Aの成否を大きく左右する重要な要素です。

本来、M&Aにおけるリスクマネジメントとは、「どこまでを許容し、どこからは譲れないのか」を事前に決めておく基準づくりです。

まず、投資額に対して、いつまでに・どの水準の利益が出れば「成功」と言えるかを先に決めておきます。また、最悪の場合のシナリオを描き、その場合の「損失規模」「資金繰りへの影響」をシミュレーションすることを推奨します。
また、人材・顧客・技術など、財務諸表に表れにくい資産についても、「獲得できる価値」と「失う可能性のある価値」を整理しておきましょう。
デューデリジェンスは「やれば安心」ではなく、「想定しているリスクが妥当か、修正すべきか」を検証するプロセスと捉えましょう。

こうしたプロセスを経ることで、「漠然とした不安」を、「これなら許容できる」という具体的な判断に変えていくことができます。
これこそが、不安解消につながるリスクマネジメントです。

3.実行支援 ~「コンサルティング支援」で成功確率を高める~

最後に、意外と見落とされがちなのが、実行プロセスの設計と伴走者の有無です。
良い戦略と魅力的な案件があっても、「協議が長引く」「条件交渉でこじれる」「クロージング後の統合が進まない」といった理由で、チャンスが十分に活かされないケースは少なくありません。

中堅・中小企業のM&Aでは、経営者同士の信頼関係、従業員・取引先への説明の仕方、代表の役割や後継者の関わり方など、「数値以外の要素」が成否を大きく左右します。
そのため、専門家に仲介役として伴走してもらうことが、経営者にとって大きな手助けとなります。
専門家は、条件交渉の論点を整理することで、感情的な溝を埋める役割を果たし、交渉をスムーズに進める支援をします。専門家が第三者として関与することで、経営者の負担が軽減されるのです。また、経営統合においても、専門家と一緒に優先事項を決めるなど、具体的な計画を立てる支援が得られます。これにより、経営者はすべてを自分で抱え込む必要がなくなり、本来の役割である「経営判断」に集中できるようになります。

専門家への依頼を「コストがかかる」と捉える経営者もいます。しかし、統合準備が不十分なまま進めることで、キーパーソンの流出や主要顧客の離脱、期待していた利益が出ないといった問題が発生すれば、結果的に投資回収が大幅に遅れる可能性があります。
売買契約の締結をゴールと考えて、その後の経営統合について「なんとかなるだろう」と軽視してしまうケースが散見されます。また、仲介会社とアドバイザー(助言型)の役割の違いを十分に理解していないことも、失敗の原因となります。「専門家に依頼せず、安く済ませたことで、かえって高く付いた」という事例は少なくないのです。

こうした事態を防ぐためには、案件が具体化する前の段階から、信頼できる専門家と情報交換を始めておくことが重要です。さらに、仲介業務だけでなく、戦略策定、候補先のリストアップ、交渉、そして統合プロセスまで、どの範囲で支援を受けられるのかを事前に確認しておくことが重要です。
自社の状況や希望、そして不安を率直に専門家と共有し、「自社に適した戦略」と「現実的な進め方」を一緒に考えることが、M&A成功への近道です。

4.M&Aは「リスク」ではなく、可能性を広げる経営判断

繰り返しになりますが、M&Aは目的ではなく手段であり、まずは「自社に適した戦略」を明確にすることが出発点です。
戦略策定から実行・統合プロセスまで、一連の伴走がある専門家の支援を活用することで、成功確率を高めることができます。

M&Aは、決して「無謀な賭け」ではありません。適切な準備とパートナー選びをすれば、自社の可能性を広げ、次の世代につながる事業基盤を築くための前向きな経営判断となります。
「自社はどこを目指すのか」「そのために、どのような外部リソースを取り込むべきか」。自社に適した戦略を描くため、この問いに向き合いながら、まずは信頼できる専門家に相談し、伴走型のコンサルティング支援を受けることを検討してはいかがでしょうか。
もし今、「興味はあるが、いま一歩踏み出せない」と感じているのであれば、決断ではなく、まずは情報収集と対話から始めることを推奨します。


M&Aによる事業拡大「3つの成功条件」
このコラムの執筆者
小林 隼人

小林 隼人

M&Aコンサルティング事業部
チーフマネジャー

新聞社にて新聞販売店の経営・営業支援業務に従事後、独立系M&A仲介会社に入社。主にエネルギー系企業のM&Aなどを経験後、当社に入社。企業の事業承継課題も目の当たりにしてきた経験を踏まえ、現在はM&Aを中心としたコンサルティングを数多く手掛け、企業のあらゆる経営課題解決に取り組んでいる。

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  • LPガス会社の譲渡側・譲受側M&Aアドバイザリー
  • 産業資材卸会社の譲渡側・譲受側M&Aアドバイザリー
  • 機械器具卸会社の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • ビルメンテナンス会社の譲受側M&Aアドバイザリー
  • 建設会社の譲渡側・譲受側M&Aアドバイザリー
  • 人材派遣会社の譲受側M&Aアドバイザリー
  • 製造業(半導体関連)の譲渡側・譲受側M&Aアドバイザリー
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