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トレンドや譲渡事例をコンサルタントが解説!

2022.12.22

近年企業の後継ぎ不在問題の解決や自社の成長加速を目的に、M&Aを検討する企業が増加傾向にあります。また、これまでM&Aの実績が少なかった中小企業や地方企業など、規模や業界に限らず注目を集め始めています。今回は今後、自社ビジネスの成長のためにM&A検討している方に向けて、M&A支援の実績を数多く持つタナベコンサルティングのコンサルタントにM&Aの基礎知識やトレンド・事例について詳しく話を聞きました。


今回話を聞いたコンサルタント

小野 樹(株式会社タナベコンサルティング M&A本部 部長)

小野 樹(株式会社タナベコンサルティング M&A本部 部長)

金融機関や会計事務所とパートナーシップを築き、後継者を育成する企画や取引先企業が抱える経営課題とコンサルティングソリューションをマッチングするアライアンス事業を推進。M&A部門の事業化、仕組みづくり、商品開発、実績づくりを行い、大手企業のバイサイド支援から中小・個人企業のセルサイド支援まで幅広い実績を持つ。

小林 隼人(株式会社タナベコンサルティング M&A本部 コンサルタント)

小林 隼人(株式会社タナベコンサルティング M&A本部 コンサルタント)

新聞社にて新聞販売店の経営・営業支援業務に従事後、独立系M&A仲介会社に入社。主にエネルギー系企業のM&Aなどを経験後、当社に入社。企業の事業承継課題も目の当たりにしてきた経験を踏まえ、現在はM&Aを中心としたコンサルティングを数多く手掛け、企業のあらゆる経営課題解決に取り組んでいる。

自社の成長を目的としたM&Aが増加


-- それでははじめに、M&Aの概要を教えてください。


小林)
M&Aは一言でいうと、企業の「合併」 と「買収」を指します。合併は複数の会社が一つに合併することを言い、買収は譲受企業が譲渡企業を買収することを言います。M&Aの目的は主にこの2つで、会社や経営権を取得する目的で行われます。


-- 何のためにM&Aをするのでしょうか?


小林)
買収をお考えの企業は「新分野への進出」や、「既存事業の市場規模拡大」を目的にM&Aをするケースが多いです。
新規事業の開発や新しい分野に進出をする場合、その分野に強みを持つ企業を買うことで、新しい分野への参入が容易になります。
既存事業の市場規模拡大に関しては、同業種の企業を買うことで、市場のシェアを拡大していくことが可能です。

新分野への進出も、市場規模拡大も、自前でやることもできますが、時間がかかります。すでにある企業を引き入れることで時間が短縮されるため、M&Aという手法が用いられます。

次に、売却をお考えの企業のM&Aの目的は、「企業の存続のため」が大多数を占めます。後継者がいないため、第三者に会社を引き継ぐ目的でM&Aを選択されます。

ですがここ数年、上記とは別の目的のM&Aも増えています。企業の成長戦略として売却をするケースです。大手企業の資本力やネットワーク、ノウハウを求めて、大手グループの傘下に入る決断をするオーナー様 が増えています。


-- 事業承継M&Aが割合としては多いと思っていたのですが、事業承継と成長戦略との割合はどれくらいですか?


小野)
事業承継型の割合が多いです。当社でお引き受けする案件の8~9割は事業承継M&Aです。



「成長のため」という点で当社の例でお話すると、タナベコンサルティンググループには4社の企業があります。そのうち、当社以外の3社はM&Aで参画いただいた企業です。3社とのM&Aは、事業承継を目的としたものではなく、成長を目的としたM&Aのため、ともにタナベコンサルティンググループを成長させていくチームとして各社の経営陣にはご参画いただいています。

タナベコンサルティンググループに入っていただくことで、グループでの支援領域が広がり、グループの顧客基盤を活用することもできて相互のシナジーが発揮されます。



たとえばITテック系の企業やXR系の企業ですと、技術があっても資本力がなかったり、販売するスキルがなかったりします。そこで、技術を求める大手企業と提携をし、事業をスケールさせていくやり方が増えてきています。


-- ここ数年、M&Aの件数は増えているのですか?


小林)
右肩上がりで増えています。公表されていないものも含めると4,000件以上行われていると言われています。


小野)
増えている背景として、この数年間で外部環境が大きく変化したと感じています。国の施策として、補助金の強化や、M&A登録業者の制度の策定など、国としてM&Aを後押ししている印象を受けます。

M&Aへのイメージはプラスに転じつつある


-- M&Aと聞くと、マイナスなイメージを持つ方も多いように思います。


小林)
売却に対してハードルを感じているオーナー様が多いのは確かです。売る=負けや、乗っ取りととらえている方も多いですね。ただ、ここ数年は「M&Aっていいものだよね」とおっしゃる方も増えています。



小野)
相談の数が年々増えていることもあり、M&Aは選択肢の一つだというフラットなイメージがようやく広まってきました。

一方でM&Aや経営に馴染みがない方などは、M&Aにマイナスイメージを持っている方も多く、従業員の中には「M&Aをするなら会社に残りたくない」とおっしゃる方もいます。



-- これまで勤めていた会社ではなくなるような不安はありますよね。売却された場合、企業の社名はどうなりますか?


小林)
社名が変わることもありますが、中堅・中小企業のM&Aで多いのは、社名は残して、資本だけが変わる形が多いです。
買収側は、M&Aによってさまざまなものが譲渡されますが、その中で何がほしいかというと、企業の看板や、そのエリアでの知名度です。
社名を変えてしまうと、そのエリアで売れている名前がなくなってしまうので、社名は変えず、同じ看板を継続していくケースが多いです。


-- 社名を変えるケースというはどのような場合ですか?


小林)
ブランディングとして、大手グループ会社の冠を付けて社名を変更することがあります。


小野)
手法としては、吸収合併という形で法人を取り込み、譲渡側の法人が消失するスキームがあります。
ただ、事業承継型M&Aの場合、会社を売却する方は、会社を作って、これまで育ててきたオーナー様が多いので「自社の社名は残してほしい」「法人は当面そのまま残してほしい」という想いを持たれている方が多いです。
買収側は、「吸収合併しかしない」というスタンスですと、そもそも契約がまとまらず、M&Aの機会を逃してしまうこともあります。
ですので、本音としては吸収合併が望ましいと思っていても、しばらく法人はそのまま残しておき、グループとして迎え入れた後にタイミングを見て吸収合併をする、という戦略を取られるケースもあります。

M&A成功のカギは専門家選び


-- 会社を売りたい・買いたいと思ったら、まずは何をしたら良いですか?


小林)
売るにしても、買うにしても、何のために売るのか・買うのか、目的をはっきりさせることが大事です。M&Aのトレンドは移り変わりが早いので、専門家に話を聞くなどして情報収集しながら、自社のM&Aの目的を定めることが一番大切です。


-- さまざまなM&A支援会社があるかと思います。違いや種類について教えてください。


小野)
M&A支援会社の違いは大きく分けて3つあります。①支援スタンス②専門性③手数料です。

①支援スタンス

支援スタンスは「仲介」と「アドバイザリー」に分かれます。
仲介では、売り手と買い手の双方の間に立って交渉のサポートをします。交渉のサポートに入るのが1社のみのため、交渉スピードが早くなりやすいというメリットがあります。

しかし、仲介は、両者から報酬を得ており、「利益相反」 ※になりやすい構造です。「売り手は高く売りたい」、一方、「買い手は安く買いたい」というのが基本ですが、仲介会社のさじ加減で、どちらか一方に有利になるよう調整ができてしまう点がデメリットと言えます。ちなみに、国内M&A会社・金融機関などは仲介形式であることが多いです。
※当事者間の行為が、一方の立場では利益になるものの、他の立場では不利益になること。

アドバイザリーは、売り手側、または買い手側一方の専属のアドバイザーとして交渉を支援します。両社にそれぞれのアドバイザーがつき、依頼主の利益の最大化を目的とするため、安心して各プロセスを任せることができる反面、仲介に比べて交渉が長期化する可能性があるのがデメリットと言えます。

当社の支援スタンスは「アドバイザリー形式」のため、売り手か買い手どちらかの専門のアドバイザーになります。経営コンサルティングを本業としている当社としては、どちらか一方の利益を追求するアドバイザー業務に徹する、というスタンスを取っています。



②専門性

M&A会社を選定する際、「専門性」も重要視していただきたいポイントです。
当社のようなアドバイザリー業務を主軸にしている会社は、実際のM&A業務に入る前段階のM&Aの戦略の構築から、M&A後の経営統合のサポートまでお手伝いが可能です。
マッチングや成立を主軸にしている会社では、M&A戦略や、買い手が企業を買収した後の経営統合については得意でない傾向にあります。


③手数料

手数料については、「発生するタイミング」「成功報酬の算出方法」「最低手数料」をはじめに把握することが大切です。
発生するタイミングに関しては、契約締結時に着手金を求められるケースがあります。企業によって、着手金の有無が変わりますので、はじめに確認しておきましょう。
次に成功報酬の算出方法について、料率は5%(但し、基準額が上がるにつれて4%、3%、、と変動)のところが多いですが、一口に成功報酬といっても各社で算出方法が違います。会社の資産と負債を合計した「総資産」を基準に算出するケースもあれば、「株価」を基準にすることもあります。
「総資産」で算出する場合は、借金などの負債にも料率がかかりますので、「株価」基準と比較すると高くなるケースが多いです。

最後に、最低手数料についてです。成功報酬の算出において「株価」を基準にする場合には、仮に債務超過かつ赤字の会社で株価が0であれば成功報酬の算出結果が1円になることもあります。報酬が1円というわけにはいかないので、最低でいただく手数料を各社設定しています。
大手企業だと、最低手数料を2,000万円以上としているところが多いですが、最近は、500万円~1,000万円程度に設定している企業も増えてきています。

当社は、譲渡側のご支援については完全成功報酬型のため、着手金はいただきません。会社が売却できてはじめて報酬が発生しますので、先にかかる費用はなく安心してご依頼いただいております。


-- M&Aを支援する会社は最近増えていると聞きますがいかがですか?


小野)
M&A関連会社はここ数年でかなり増えています。理由として、M&A支援は参入障壁が低く、必要な資格もないためです。大手のM&A仲介会社で活躍した人が独立して会社を立ち上げる、税理士や会計士が本業の傍らM&Aを支援するケースも増えてきています。

引退時期から逆算してM&Aの準備を


--M&Aにかかる時間について教えてください。


小野)
M&Aを検討してから相手が見つかり、交渉して契約するまでは6か月~1年と言われています。M&Aは会社同士のご縁なので、早ければ1~2か月で決着するケースもありますし、2年以上かかることもあります。相手との巡り合わせ次第ですが、6か月~1年はかかると思っていた方が良いです。


-- ということは、M&Aに少しでも興味を持っているのであれば、すぐに動き出した方がいいですか?


小野)
事業承継の場合、ご高齢で跡継ぎがいないものの、いますぐ引退するわけではないので決断を先延ばしにしているという方も多いですが、M&A自体に、少なくとも半年~1年はかかります。
また、中小企業の場合には、M&Aが完了した後も2~3年は社長に残ってほしいと買い手企業様から要望されるケースが多いです。
というのも、買い手企業様からすると、いざM&Aをしてすぐに社長が退任されると、「 残された従業員が辞めてしまうのではないか」「取引先が離れてしまうのでは」という不安があるので、社長にはしばらく残っていただくという選択をされます。
それでいくと、M&Aが完了するのに1年、その後2~3年残ることを考えると、引退まで3~4年は見ておく必要があります。引退の時期を考えているのであれば、「3~4年前から動き出した方が良い」と、事業承継の場合にはお伝えしています。

地方IT企業の成功事例


--タナベコンサルティングでのM&Aの成功事例を教えてください。


小野)
ある地域A社の事例です。

A社はIT企業で、社長が一代で会社を築かれ、跡継ぎがいないことから事業承継M&Aをご検討されていました。
この会社には、次期社長にふさわしい方がいらっしゃいましたが、「経営を引き継ぐことは問題ないが、借金の個人保証などのリスクを負うことは避けたい」という理由で、事業承継はお断りをされていました。
そういった経緯もある中で、M&Aがスタート。当初は地域に強みを持つM&A会社に依頼をし、同じ地域内で相手先を探されていたそうですが、3年近く候補が見つからなかったため、当社に声がかかりました。
当社は全国的に活動しているため、さまざまな地域の情報を持っています。A社はIT企業 ということもあり、東京都内など都市部で絞って探すことになりました。
A社は、エンジニアの技術力があり、面白い製品をお持ちだったこともあり、すぐに十数社の手が上がりました。何社も面談を重ね、最も条件が合う企業への売却が決まりました。
社名はそのまま残し、経営体制も大きく変えない。そしてグループとして支援できることはバックアップしていただける。新しい経営者は、一度断られてしまった役員の方が就任されることとなり、売却時のオーナー様は数年経営に関わられ、その後無事に引退されました。
3年間相手が見つからなかったところから、選択肢を広げることで、逆に相手を選べる立場になった良いM&Aの事例だと思います。


-- 専門家のアドバイスがあってこそ、全国で探すという選択ができたと言えますよね。そういったアドバイスをもらえる良い専門家に出会うことも大切ですね。


小野)
今回のケースでいうとそうですね。ただ、地域専門であれば、地域に強く、物理的に距離が近い利点も大きいので、自分の課題に合わせてM&A会社を選んでいただくことをおすすめします。



信頼できるアドバイザー選びが肝


-- M&Aをする上での注意点やポイントを教えてください。


小林)
信頼できるアドバイザーを選ぶことが最も大切です。
会社の売却はほとんどの方が人生で1度きりです。初めてのことだらけ、そして決めなければいけないことが山ほどあります。アドバイザーはオーナー様の代わりに交渉を進めますので、信頼できるアドバイザーを選ぶことが大切です。


-- 少なくとも半年から1年は関わりますので、相性の良さも大切ですね。


小林)
そうですね。信頼できるアドバイザーを選ぶだけでなく、関係を構築する必要もあります。
また、隠し事は絶対にしないでください。後ろめたいことや、会社の弱点は言いづらいかと思います。ですが、早めにわかれば解決できます。マイナスになりえる情報は、後出しするほどリスクが高まります。言いづらいことほど、先に言っていただけると嬉しいですね。そうすれば、アドバイザーが良いM&Aに導くことができます。


-- 後ろめたいことほど先に伝える、大事ですね。それでは次に、会社を売る良いタイミングというのはありますか?


小林)
M&Aは会社同士のご縁なので、今が良いタイミングなのか、2年後が良いタイミングなのかは正直わかりません。ですが、M&Aに興味がある、M&Aに希望を見出したいのであれば、検討は早めにしておくべきです。検討した結果、売却しないという選択をしてもまったく問題ありませんので、早めに検討して、選択肢を広げてください。


買い手企業に重要なのは、戦略とリスペクト


-- 買い手企業様に向けた注意点はありますか?


小野)
買い手企業様にとって重要なのは戦略です。M&Aをすることが目的になっていることがありますが、M&Aは手段のひとつです。何のためにM&Aをするのか?会社の戦略とM&Aの目的に立ち返ることが大事です。

交渉が始まってからは、相手方が中小企業の場合は特に、相手をリスペクトすることが大切です。オーナー様はご自分の会社に愛着をお持ちですし、従業員の雇用を守るという責任もあります。そんな中で買い手企業様が「買ってやろう」というスタンスで行っても上手く進みません。
交渉していく中での細かなテクニックはもちろんありますが、買い手企業すべてに共通して大切なのは、「相手方に敬意を払うこと」です。


-- 会社を売る・買うと言っても、交渉は人と人なので、リスペクトの気持ちは大切ですね。

M&Aを選択肢のひとつに


-- 最後にM&Aを検討されている方にメッセージをお願いします


小林)
M&Aを検討するときに、最初から売るという決心をするのは難しいと思いますが、M&Aに興味をお持ちでしたら100%寄り添わせていただきます。ぜひご相談ください!


小野)
M&Aをご検討の方の中には、「跡継ぎがいない」という課題を抱えていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。その場合、比較検討するのは廃業だと思います。
廃業すると企業は消滅してしまいますが、M&Aは企業が後世に引き継がれます。従業員や取引先、協力会社を守ることができ、経済的にも社会的にも意義のある良いものです。
売却は大きな決断ですが、M&Aも一つの選択肢として、廃業と両輪で考えていただきたいなと思います。

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