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株式譲渡とは?
メリットや手続き、トラブル回避のポイントを解説

2021.12.09

株式譲渡とは何か?
概要からメリット・デメリット、株式譲渡に関する手続きの流れと注意すべきポイントを解説します。

株式譲渡とは? その特徴や事業譲渡との違い


M&Aを実施する際のスキーム(M&A実施の手法・手続)をご存知でしょうか。
大きく分けると株式譲渡と事業譲渡の2つがございます。株式譲渡とは、 会社のオーナーが保有する株式を買手に譲渡することで、会社の経営を承継させる手続きです。売手と買手が合意した内容の株式譲渡契約書を締結して、株式の対価の支払いが行われたら、株主名簿の書き換えを行い完了します。中小企業のM&Aでは、もっともよく使われる手法です。
事業譲渡とは、会社(譲渡会社)が事業の全部または一部を他の会社(譲受会社)に譲渡することをいいます。事業譲渡は、株式譲渡・会社分割・合併等と比較して特徴的なのは、契約によって譲渡の対象となる事業を選択することができ、資産や負債についても契約によって比較的自由に選別可能な点です。そのため、欲しいもののみを引き継ぐことができます。



株式譲渡とは? その特徴や事業譲渡との違い|M&Aの株式譲渡とは?トラブル回避のための事前チェックリスト

株式譲渡における譲渡企業のメリット・デメリット


前述にあるように、株式譲渡は他のM&Aの手法と比べると簡便な取引であり、法的な手続きも少なくなります。状況にもよりますが、株式譲渡は譲渡企業の資産や負債だけでなく、取引先や商圏などの無形資産も含めて会社ごと引き継いでもらうという点で、譲渡側にとってメリットがあると言えます。さらに、株式譲渡は社員の雇用、技術やノウハウなどをそのまま引き継ぐこととなるため、譲渡後も会社をそのまま継続させることができる点は大きなメリットとなります。

一方デメリットとしては、譲渡するために株主の同意が必要だという点です。また、自社に株式譲渡制限がかけられていた場合には、株主総会や取締役会で会社の承認を取らなければなりません。


株式譲渡における譲渡企業のメリット・デメリット|M&Aの株式譲渡とは?トラブル回避のための事前チェックリスト

株式譲渡の手続きの流れ


1.「譲渡制限株式」の確認
まず譲渡する株式に譲渡制限(=譲渡制限株式)があるかどうか、定款や登記事項証明書で確認しておきましょう。基本的に株式は自由に譲渡できますが、企業にとって望ましくない人が株主となると、企業運営が円滑に進まなくなる可能性があります。そういった事態を防ぐために、会社法では「株式の譲渡には会社の承認が必要であることを定めることができる」となっています。
譲渡制限株式を設けていない企業(大企業が大半で、公開会社と呼ばれます)もありますが、中堅・中小企業においては譲渡制限を設けている企業が大半だと考えられますので、ここでは「譲渡制限株式」を前提に手続きの流れを紹介します。

2.「株式譲渡承認請求」
株式譲渡するための「承認請求」が必要となります。譲渡制限株式を譲渡する株主から、会社に対して行われます。一般的には、株主総会や取締役会で譲渡を承認するかの可否を審議します。

3.「株式譲渡契約書」締結
株式譲渡が承認されたら、譲渡側と譲受側で株式譲渡契約を締結します。株式譲渡契約には、譲渡価格、譲渡株式数、譲渡日など、譲渡に関する詳細な条件が明記されます。この契約内容をもとに、株式対価の支払い等が行われることとなります(=クロージング)。

4.「株主名簿の書き換え請求」
クロージング後は速やかに、「株主名簿の書き換え請求」が必要となります。この手続きは、会社が株主名簿を書き換えるという手続きで譲渡側と譲受側の共同で行われます。株主名簿の書き換え完了後は、譲受側は株主になったことを証明するために「株主名簿記載事項証明書」の交付を請求します。
最後に、譲渡益が発生した場合には、その益に対して所得税が課税されます。そのため、株式譲渡の手続きを進める際には、税務についても十分に理解しておく必要があります。


株式譲渡の手続きの流れ|M&Aの株式譲渡とは?トラブル回避のための事前チェックリスト

M&Aの株式譲渡 事前チェックポイント


M&Aのスキームで株式譲渡を選択する場合、譲受側企業は譲渡側企業の資産や負債も全て引き継ぐことになります。M&A検討の段階でデューデリジェンス等が行われますが、株式譲渡を進める際に、下記ポイントを今一度チェックしておきましょう。

①株式譲渡では会社の株式を譲渡するため、株式が有効に発行されているかが一番のポイントになります。譲受側は、株式の有効性や、株式が不詳になっていないか、株主は存在するか、黄金株がないか等を確認します。譲渡側企業がオーナー会社であれば、一般的に100%の株を譲り渡す場合が多いため、株が不明瞭であれば事業譲渡にスキームを変更する場合もあり得ます。株式譲渡は、会社の過去の履歴も引き継ぐため、法的紛争事項や不祥事、また事業に伴う談合(入札)等がないかの確認も必要です。

②株式譲渡では、譲受企業は譲渡企業の取引先との契約も継続して引き継ぐことになります。例えば、事業団体や組合によっては外部の企業を嫌う傾向があります。引継ぎは問題ないが、M&Aが公になるとハレーションが起き、組合から除名されたり、除名に近い扱いを受けたりします。また、地域性・業種性もあるので新たな判断ポイントが増加します。
事業譲渡であれば引継ぎの有無がはっきりしますが、株式譲渡では事業全体を引き継ぐため、上記のような問題が発生します。
対応策としてはオーナーのみの変更に留め、株式譲渡を行うケースもございます。

③財務について、簡単に言えばB/S、P/Lの引継ぎです。仮にB/Sに記載がない簿外の資産・債務があった場合も引き継がれることになります。つまり、譲受側にとって簿外資産はプラスですが、簿外負債はリスクとなります。財務面では簿外のリスクがないか、帳簿価格と時価額に大きな相違がないかを重点的に確認しておく必要があります。例えば、帳簿上には保険積立金で●千万円と記載があるが、解約すると極端に返礼額が低く、帳簿価格と大きな相違があるケースがございます。さらには、在庫等も帳簿価格と実態が合わないケースもあります(架空在庫といわれるもの)。特に、在庫が大きい場合は、不良在庫等であれば破棄するために資産がマイナスになるということも起こりえます。また、在庫の注意ポイントとして、原価率を計算する際、棚卸が違えばP/Lにも影響を及ぼすということです。架空在庫を計上し、P/Lの棚卸項目を調整していた場合、粗利益、営業利益、経常利益にも影響を及ぼします。従業員や取引先等への貸付や返済の有無、そして簿外の状況や不正受給等、言い出せばきりがないです。そのため、M&Aでは零細企業でも財務調査を実施するケースがほとんどです。

➃最後に「人」について、よく従業員の継続について質問されます。株式譲渡の場合、会社の譲渡のため、従業員との雇用契約はそのまま継続されます。しかし、どの会社も同様に従業員の職業選択の自由から、雇用継続を確約することは難しいと言えます。


M&Aの株式譲渡 事前チェックポイント|M&Aの株式譲渡とは?トラブル回避のための事前チェックリスト

M&A株式譲渡 リスク回避


株式譲渡は、企業の成長や事業承継において重要な手段の一つです。しかし、その過程には経営、財務、法務、人材面など多くのリスクが潜んでいます。
譲受側にとっては、すべてを引き継ぐということで抱えるリスクも大きくなります。そのため、譲渡側はM&A成約後に大きな問題が発生しないか、事前に財務状況などのリスクになり得る事項がないか慎重にチェックします。
譲渡を検討している方は、譲受側が自社のどのような情報を知りたいのか、準備を進める上で注意すべき点はどこなのかを把握し、対策を講じておくことがM&Aを進める上で重要です。


M&A株式譲渡 リスク回避|M&Aの株式譲渡とは?トラブル回避のための事前チェックリスト
このコラムの執筆者
文岩 繁紀

文岩 繁紀

M&Aコンサルティング事業部
ゼネラルパートナー

金融機関を対象とした経営セミナー運営や、従業員教育支援を経験。M&A部門立ち上げに伴って、M&A部門へ異動。 M&Aアドバイザーとして活躍し、数十件の成約実績を積み、現在に至る。 譲受企業、譲渡企業それぞれの心情を理解し、クライアントに寄り添ったアドバイスを得意としている。

主な実績
  • 上場企業のカーブアウト
  • 債務超過、再生案件のご支援
  • 50件以上のディールを実施
  • 成長戦略や承継問題による、譲受側、譲渡側のアドバイザリー業務の実施
    売り手向け
  • 承継問題や成長戦略による、譲渡側、譲受側、のアドバイザリー業務の実施
    例)建設業の売り手アドバイザー
    サービス業の売り手アドバイザー
    人材派遣業の売り手アドバイザー
    小売り卸の売り手アドバイザー
    ITの売り手アドバイザー
    医薬関連の売り手アドバイザー
    運送業の売り手アドバイザー
    旅行業の売り手アドバイザー
    製造業の売り手アドバイザー 等
    ※成約件数約50件程で多種多様な業種の支援を実施。
    売上:数千万円から数十億円の案件をご支援。
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