M&A情報
ビジネスデューデリジェンス
2024.07.23
デューデリジェンスの種類
M&Aの実行フェーズにおいて、デューデリジェンスは対象企業の実態を正確に把握するための重要なプロセスです。
デューデリジェンスは日本語で買収監査とも訳されるとおり、対象会社の買収にあたって買手が対象会社を財務、法務、ビジネスなどの様々な面から調査して対象会社(事業)のリスク等を洗い出す作業です。
また、リスクの洗い出しとともに、対象会社(事業)を譲り受けた後にどのように事業を伸ばしていくか、シナジーを醸成していくか等を事業計画を通して検討するためのプロセスでもあります。
デューデリジェンスはどの領域において実施するかにおいて、大きく以下の種類に分類することができます。
・財務、税務デューデリジェンス
・ビジネス(事業)デューデリジェンス
・法務デューデリジェンス
・人事労務デューデリジェンス
・IT(システム)デューデリジェンス
・環境デューデリジェンス
上記6つの領域はデューデリジェンスにおいて特に実施されるケースが多い分野ですが、実際には業種・業界によって、また買手の意向によっても実施される領域や重視される項目は異なります。
今回はその中でも、ビジネスデューデリジェンス(事業デューデリジェンス)について解説をしていきます。
ビジネスデューデリジェンス(事業デューデリジェンス)を実施するにあたって検討すべき事項
ビジネスデューデリジェンスは事業デューデリジェンスとも言われており、財務(税務)デューデリジェンスとともに実施されるケースの多い分野です。
ビジネスデューデリジェンスは、買収対象企業が行う事業について網羅的に調査・分析を行いますが、同業の買収の場合は、ビジネスモデルや収支構造などが近しい場合が多いので、ある程度ポイントを絞ったうえでより簡易的に行われるケースもあります。一方で自社が行う事業領域とは異なる企業(事業)を買収しようとする場合は特に重点的に実施される傾向があります。
では、ビジネスデューデリジェンスは具体的にどのような項目を対象に調査・分析を行っていくのでしょうか。
ビジネスデューデリジェンスでは主に次のような項目について調査・分析をしていきます。
①外部環境分析
②内部環境分析
③シナジー分析
④事業計画の検証または事業計画策定
ご覧のとおり、ビジネスデューデリジェンスで調査・分析対象とする領域は相当に多岐にわたります。内部環境分析をひとつとっても、人材や設備、商品、情報などの経営資源に関する事項やビジネスプロセス(バリューチェーン)に関する事項、業績構造等ビジネスモデルに関する事項、マーケティングや営業に関する事項など様々な切り口があります。
当然、網羅できる範囲をすべて実施することが理想ではありますが、ディールの時間的制約や調査にかかるリソース、提供される資料の粒度によっても調査・分析できる領域、深さは変わってきますので、まずはどの程度まで見るべきかを検討する必要があります。検討にあたっては上記項目をより具体的な項目に落とし込み、かつ対象ディールにおける論点を把握しておくことが重要です。
以下で各項目のスコープや分析のポイントを紹介します。
スコープと分析の視点
ビジネスデューデリジェンスの調査・分析領域について上述の通りですが、各項目の詳細なスコープはどのようなものでしょうか、またどのような視点をもって分析を進めるのか解説します。
まずは、外部環境分析についてです。外部環境とはマクロ的な経済環境の分析が中心となります。国内外の経済、政治動向など社会情勢の分析といった比較的大きな視点での分析から、対象企業(対象事業)が属する業界動向や市場性などを調査対象とします。分析資料としては、マクロ経済レポートや業界レポート、各種統計数値から客観的な情報の分析を行います。外部環境分析は対象企業がビジネスを行うにあたっての前提となる社会、経済状況の整理となりますので、この認識を見誤ると今後の将来予測や事業計画策定に影響を与えることがあります。そのため、客観的で合理的に導出可能な現状認識、将来予測を行うことが重要です。
続いて、内部環境についてです。
内部環境とは対象企業の内部状況のことを指します。内部環境分析は次のような項目が分析対象となります。
・事業構造分析
・バリューチェーン分析
・ビジネスモデル分析
・競合分析
・組織分析
内部環境分析は対象企業(対象事業)の内部事情に関する分析となりますので、ビジネスデューデリジェンスの肝となる部分といえます。 内部環境分析によって対象会社のビジネスモデルの特徴や強み・弱み、組織の課題などを把握することができれば、投資可否の判断や買収後のPMIに向けて有用な情報となります。
シナジー分析については、対象会社の内部環境分析を踏まえて、自社とシナジーが見出せる部分、一方でディスシナジーとなり得る部分の調査・分析を行っていくことになります。
最後に事業計画についてですが、対象会社自身が作成している場合はその蓋然(がいぜん)性についての検証を行います。対象会社が事業計画を作成していないことも多いですが、必要に応じて対象会社の事業計画を策定するかどうかもビジネスデューデリジェンスのスコープとなります。
事業計画はバリュエーション(インカムアプローチ)の前提となる情報でもありますので、ここで作成した計画値によってバリュエーション結果も変わってくることになります。
以上のように、ビジネスデューデリジェンスは調査・分析の対象とする領域が広く、それ故に時間と労力のかかるプロセスです。しかしながら、買収しようとする企業(事業)に関する網羅的かつ詳細な情報を分析するプロセスですので、投資判断や買収後の計画検討に多大に貢献するプロセスであるとも言えます。
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