人事コラム
人材育成

人材定着とは?定着率の向上を実現する施策

社員一人ひとりが職場での「成長」や「やりがい」を感じられる環境づくり

SCROLL
人材定着とは?定着率の向上を実現する施策
 人材定着とは

人材定着とは

「人材定着」とは、企業が採用した社員が長期的にその職場で働き続けることを指す。

具体的には、社員が会社のビジョンや価値観に共感し、職場環境や業務内容に満足しながら、キャリアを築いていく状態を意味する。

人材定着率は、採用した社員のうち、一定期間内に退職せずに在籍している割合を示す指標であり、企業の健全性や職場環境の良し悪しを測る重要な要素である。

近年、多くの企業が「人材定着」に注目している。
その背景には、少子高齢化による労働力人口の減少や、転職市場の活性化による離職率の上昇が挙げられる。

特に若年層の離職率が高いことが問題視されており、企業にとっては採用した人材をいかに定着させるかが重要な課題となっている。

では、なぜ人材が職場を離れるのか。
その原因を探ることで、定着率向上のための施策を考えるヒントが得られる。

人材定着における現状

人材定着における現状

日本における人材定着の現状を見てみると、特に若年層の離職率が高いことが顕著である。
厚生労働省の調査によると、新卒で就職した若者の約3割が3年以内に退職しているというデータがある。
この「3年以内の離職率」は、企業規模や業種によって異なるものの、全体的に高い水準で推移している。

離職の理由としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)職場環境の不満:上司や同僚との人間関係のトラブル、過重労働、ハラスメントなど。
(2)業務内容のミスマッチ:採用時に期待していた仕事内容と実際の業務が異なる。
(3)キャリアパスの不透明さ:将来の成長や昇進の見通しが立たない。
(4)モチベーションの低下:仕事にやりがいを感じられない、人事評価制度に不満がある。

これらの原因は、企業側の施策や職場環境の改善によってある程度解消することが可能である。
しかし、現状では多くの企業が離職率の高さに悩んでおり、
特に中小企業では採用コストの負担が大きいため、離職が経営に与える影響は深刻である。

人材定着率を高める重要性(メリット)

人材定着率を高める重要性(メリット)

人材定着率を高めることには、企業にとって多くのメリットがある。以下にその主なポイントを挙げる。

1.採用コストの削減
採用活動には、求人広告費や採用担当者の人件費、面接の時間コストなど、多大なリソースが必要である。さらに、新入社員が戦力化するまでには一定の時間がかかる。離職率が高いと、これらのコストが繰り返し発生するため、企業の負担が増大する。一方で、定着率が高まれば、採用コストを削減し、他の重要な経営資源に投資することが可能である。

2.職場の生産性向上
社員が長く働くことで、業務に対する熟練度が高まり、職場全体の生産性が向上する。また、定着率が高い職場では、社員同士の信頼関係が深まり、チームワークが強化されるため、業務効率も向上する。

3.社員のモチベーション向上
職場に安定感があると、社員は安心して働くことができ、モチベーションが向上する。逆に、離職率が高い職場では、残った社員に負担が集中し、不満が蓄積される可能性がある。

4.企業ブランドの向上
離職率が低い企業は、社員満足度が高いと見なされ、求職者や取引先からの信頼を得やすくなる。これにより、優秀な人材を採用しやすくなるだけでなく、顧客やパートナー企業からの評価も向上する。

人材を定着させる施策

人材を定着させる施策

では、具体的にどのような施策を講じれば、人材定着率を向上させることができるのか。
以下に、効果的な施策とそのポイントを紹介する。

1.職場環境の改善
職場環境が社員の満足度に大きく影響することは言うまでもない。上司や同僚との人間関係が良好で、働きやすい環境を整えることが重要である。具体的には、以下のような取り組みが考えられる。
(1)ハラスメント防止のための研修や相談窓口の設置
(2)働き方の選択肢を広めるフレックスタイム制やリモートワークの導入
(3)職場内コミュニケーションを促進するイベントの実施

2.キャリアパスの明確化
社員が将来のキャリアに希望を持てるよう、キャリアパスを明確にすることが重要である。具体的には、以下のような施策が有効である。
(1)定期的なキャリア面談の実施
(2)昇進や昇給の基準の明確化
(3)社内研修や資格取得支援制度の充実

3.採用時のミスマッチ防止
採用時に業務内容や職場環境について正確な情報を提供することで、入社後のミスマッチを防ぐことができる。具体的には、以下のような取り組みが考えられる。
(1)リアルな職場体験ができるインターンシップの実施
(2)採用面接での双方向コミュニケーションの重視
(3)入社前のオリエンテーションや説明会の充実

4.社員のモチベーション向上
社員のモチベーションを高めるためには、適切な評価制度や報酬制度を整えることが重要である。また、仕事にやりがいを感じられるよう、業務内容の工夫も必要である。
(1)成果を正当に評価する制度の導入
(2)チームや個人の成功を称える表彰制度の実施
(3)社員の意見を反映する仕組みの構築

5.上司のリーダーシップ強化
上司のリーダーシップは、社員の定着に大きな影響を与える。上司が部下の成長を支援し、適切なフィードバックを行うことで、社員の満足度が向上する。リーダーシップ研修(特に支援型リーダーシップ)やコーチングスキルの向上を目的としたプログラムを導入することが効果的である。

まとめ

人材定着率の向上は、企業の持続的な成長に欠かせない要素である。
離職の原因を正確に把握し、職場環境の改善やキャリアパスの明確化、採用時のミスマッチ防止など、具体的な施策を講じることで、社員が安心して働ける環境を整えることができる。

また、上司のリーダーシップや社員のモチベーション向上も重要なポイントである。
これらの取り組みを通じて、企業は優秀な人材を長期的に確保し、競争力を高めることが可能である。

人材定着は、単なる「離職率の低下」を目指すものではなく、社員一人ひとりが職場での成長ややりがいを感じられる環境を作ることに他ならない。
企業と社員が共に成長できる職場を目指し、今一度、自社の人材定着施策を見直してみてはいかがだろうか。

この課題を解決したコンサルタント

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
68年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業68
  • 200業種
  • 17,000社以上