人事コラム
人材育成

若手社員の成長・定着を促進する人材育成マネジメント

「キャリアに対する不安」に寄り添い、成長を実感・予感させるためのポイント

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若手社員の成長・定着を促進する人材育成マネジメント

若手社員の抱える「キャリアに対する不安」を適切に把握し、
「成長実感」・「成長予感」を持たせる

若手社員の育成における難易度は年々向上している

若手社員の育成における難易度は年々向上している

人材を資源として消費するのではなく、「資本」として投資するものであると考える「人的資本経営」の考え方が主流となっている現代において、人材育成に対する意識は年々向上している。2024年5月より開催している弊社主催の幹部候補生スクールに参加いただいた幹部・リーダー人材719名に実施したアンケートでも、「自社における一番の課題」として最も多く挙げられたのは「人材育成・活躍」であった。
一方でその手法については多くの企業・経営者が悩みを抱えている。特に"Z世代"と呼ばれる現代の若手社員に対しては「独特の価値観があり、分からない」と嘆く声は多く、若手の採用・育成で悩んでいない企業はないのではないかと思わされる。
終身雇用制度が崩壊し、転職が当たり前となった現代。働き方改革・法改正などにもよって社内外の環境は大きく変化している。当然それらの環境変化に合わせて、育成の手法も柔軟に変えていかなければならない。そうすると必然的に現在の上司・マネジャー陣は「自分たちが学んだ手法と全く別の方法で若手を育てる」ことが求められる。育成の原則でもある「自身が施されて良かったことを施す」という手法が通用しなくなりつつあるからこそ、現代の若手社員を育てるのは難しいのである。

若手社員の抱える「キャリアに対する不安」とは

このような時代においても若手社員を育成し、定着させていくためには、まず若手社員の抱える「キャリアに対する不安」を押さえておく必要がある。
働き方改革・法改正が進んだことで、以前に比べて企業の労働環境は大きく改善している。"エンゲージメント"や"心理的安全性"などの言葉が注目され、「働きやすさ」の向上を目指して試行錯誤している企業も多い。そのような時代背景や企業努力の甲斐あって、会社に「不満」を持つ若手社員は減っているかもしれないが、一方で「不安」を抱える若手社員は増えている。
それは「自身のキャリア」に対する不安だ。現代は転職のハードルが下がり、選択肢が無数に増えた。またSNSの発達によって、同世代でキャリアアップしている存在が否応なしに目に入る。だからこそ「このまま今の会社にいて良いのか」「もっとスキルや知識を身につけなければならないのではないか」といった不安が顕在化している。実際に弊社が2024年の新入社員754名を対象に行ったアンケートにおいても、入社した会社を選んだ理由として「入社後の成長がイメージできた」や「人材育成サポートの制度・仕組みが充実していた」と答える声も多い。転職が当たり前になった現代において、少しでも早く成長し、自身の市場価値を上げなければならないと、焦燥感を感じる若手社員が増えてきているのである。

「キャリアに対する不安」に寄り添い、成長を実感・予感させるためのポイント

「キャリアに対する不安」に寄り添い、成長を実感・予感させるためのポイント

自身のキャリアに対して不安を抱える若手社員が増えている現代において、キーワードとなるのが「成長実感」と「成長予感」だ。自社で身に着けたスキル・ノウハウや、生み出した成果を振り返ることによる成長の実感と、今後も自社で仕事を続けることによって自身が成長できるという予感を同時に与えることが必要となる。

それらを与えるために押さえておくべきポイントを以下に2点記載する。

1.短期的かつ定量的な目標設定

早期成長を望む若手社員に対しては、仕事の目的・最終ゴールを見えやすくし、"これから行う仕事・経験の意味"を明示することが有効である。先が見えず、自身の仕事が成果に繋がる感覚を持ちづらい「マラソン」のような目標設定では、早期に様々な経験を積み、成長したいと考える若手社員にとっては仕事の意味を見出しにくくなる。だからこそ中長期的な目標を示す際も、併せて短期的な目標の設定をすることが必要となる。
また定量的な目標設定をすることも有効だ。行う仕事に定量的な指標を設けることによって、"他の誰か"ではなく"過去の自分自身"と数字での比較ができる。そのようにしてパフォーマンスを振り返ることで、自身の成果を可視化し、成長を実感させることができるのである。

2.フィードバックとキャリアづくり

設定した目標に対する成果、若手社員の成長を実感させる機会として、最も直接的な手法がフィードバックである。近年は1on1ミーティング等でフィードバックの機会を創出している企業も多いが、ここでのポイントは「今後のキャリアづくり」に関するアドバイスを行うことだ。仕事上の目標設定は短期的に行い、細かくフィードバックすることによって成長実感を持たせる。併せて中長期的に本人の歩みたいキャリアや、数年後の目指したい姿を把握することによって、アサインする業務を決める際の参考にしたり、新たな目標設定をする際の意義付けに活用したりすることができる。上司が自身のやりたいことを理解したうえで仕事を振っている、という実感があるだけでも若手社員は自社での成長を予感することができるのである。

さいごに

これまで述べてきたように時代・環境の変化に伴い、若手社員育成の難易度は高まり、その手法も多様化・複雑化している。だからこそ、その役割を現場の上司やマネジャー任せにしてはいけない。今一度自社の若手社員育成の仕組みやマネジメントの手法を見つめ直し、最適な育成手法を検討いただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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