人事コラム
人的資本経営

PMVV・事業戦略・人的資本戦略と連動する
人材マネジメント体系とは

経営の上流工程から一気通貫で人的資本戦略を落とし込む

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PMVV・事業戦略・人的資本戦略と連動する人材マネジメント体系とは
PMVV体系・事業戦略・人的資本戦略の連関

PMVV体系・事業戦略・人的資本戦略の連関

近年、国内の企業において、人的資本経営の重要性が問われているが、肝心要の「人的資本経営」という言葉は、大変広義な概念であり、各社感覚的・抽象的な導入・運用に留まっているケースが多いと言える。

そこで、本コラムでは、自社のPMVV・事業戦略から体系的に人的資本戦略(=人的資本経営戦略)を捉え、論述していくこととする。

■PMVV体系

PMVV体系とは、自社の存在価値や経営目標を明文化した上位概念であり、代表的な指標として経営理念(創業理念)、パーパス(貢献価値)、ミッション(使命)、ビジョン(中長期ビジョン)、バリュー(価値観)が挙げられる。

■事業戦略

事業戦略とは、自社のPMVVを実現するための事業(ビジネスモデル)戦略であり、代表的な切り口として、ビジネスモデル改革、マーケティング、ブランディング、営業・販売、開発より、落とし込まれるケースが多い。

■人的資本戦略

人的資本戦略とは、自社のPMVV・事業戦略を実現するための人的資本(人を最大の資産)と捉えた、戦略であり、代表的な切り口として、人的資本コンセプト(人的資本に対する考え方)、人事部ミッション、主要人事KPI(目指すべき定量的指標)、人材マネジメント体系(採用~流動設計まで)を指す。

本コラムでは、上位概念であるPMVV体系や事業戦略を踏まえた人的資本戦略にテーマを絞ってご紹介していく。

PMVV体系 経営理念(創業の精神)、パーパス(貢献価値)、ミッション(使命)、
ビジョン(中長期ビジョン)、バリュー(価値観)
事業戦略 ビジネスモデル、マーケティング、ブランディング、営業・販売、開発
人的資本戦略 人的資本コンセプト、人事部ミッション、人事KPI、人材マネジメントコンセプト、
人材マネジメント体系
人的資本戦略体系

人的資本戦略体系

1.人的資本コンセプト

人的資本戦略体系の第一ボタンは、人的資本コンセプトの明文化である。
各社「自社の社員は貴重な資産である。」と捉えているものの、具体的にどのような人的資産を、どのように取り扱い、どのような状態に持っていくのか(目指していくか)の言語化は成されていない。或いは不十分な状態で留まっていると言える。
自社のPMVVや事業戦略を実現していくのは間違いなく人(=人材)であるため、各社における共通言語となるよう、明文化にこだわっていただきたい。

2.人事部ミッション

続いては、人事部ミッションである。
通常PMVVや事業戦略は経営(トップマネジメント)マターの領域であるため、会社として浸透しているケースが多い一方、これらを実現していく人事部のミッションは何なのかが明文化されているケースはまだまだ少ないと言える。
あらゆる大学教授が言及くださっているが、日本のHRBPやCHROを含めた人事部門の位置づけが弱いという理由はこの点にあるような気がしてならない。
ミッションとは使命であり、単に経営から卸された事項に着手するようなものではない。
自社の人事部門の責任者(BP:ビジネスパートナー)として経営と同じ熱量・視点から自社の人事部ミッションを明文化していくことが大切である。当然最初に最良なしであるため、まずは明文化し、掲げた人事部ミッションに対して、経営(トップマネジメント)と対話を重ねていくことを推奨する。

3.人事KPI

続いては、人事KPIである。
人事KPIとは、自社の人的資本コンセプトを実現するうえで、マイルストーンとなる定量的指標を指す。

自社のPMVVや事業戦略を実現した結果、どのように人的資本を組み上げていくのか、どのように人的資本に対して報いていくのか、を明文化することが大切である。この行間なくして手段先行でKPI化していくことには注意いただきたい。

代表的な人的資本指標は以下の通りである。
平均勤続年数、平均年収、一人当たりの生産性、社員教育時間、社員教育投資額、管理職プール人材数、経営職プール人材数、女性管理職比率、エンゲージメント指数など

4.人材マネジメント体系

続いて、人材マネジメント体系である。
人材マネジメント体系は、人材マネジメントコンセプトと各要素から構成される。

(1)人材マネジメントコンセプト
人材マネジメントコンセプトは、採用~流動設計までのプロセスを踏まえたあるべき姿(追求すべき姿)を明文化したものであり、各要素を設計していく判断軸となるものである。

(2)人材マネジメント体系
人材マネジメント体系は、①採用、②キャリア(等級)、③評価、④処遇、⑤人材育成、⑥シニア活躍、⑦流動設計(アルムナイ)と、各要素に対して、それぞれコンセプト・主要戦略・主要施策を落とし込んでいくことが重要である。

ポイントは、各要素が独立して機能するのではなく、PMVVや事業戦略・人的資本戦略と一気通貫で軸を通して機能させていくことが大切である。

さいごに

今ほど、人事部門の立ち位置が問われる時代は無いと言える。
HRBP(経営にとってのHR領域におけるビジネスパートナー)として、立ち位置を引き上げ、自社の上流工程から人事を落とし込んでいただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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