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M&Aを進めるために必要な資料・書類をご紹介

2023.03.09

M&Aを進めていくにあたっては、さまざまな資料や書面が必要となります。今回はM&Aの手続きにおいて必要な資料のご紹介と、作成時のポイントや重要性について解説します。
M&Aを成功に導くために事前準備の重要性をご理解いただき、ポイントを抑えた資料作成を行いましょう。


M&Aに関連した資料


まずはM&Aの手続きにおいてどのような資料が必要になるのかご紹介します。

1. 財務諸表
財務諸表は財務状況や経営成績など組織の経営状態や財務の内容を把握するために必要となる資料です。主に、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書が含まれます。

2. 企業価値評価書
企業価値評価書は、売り手企業の価値を評価するための書類です。

3. 合意書
M&Aの際には、買収価格や条件、取引の手順などを明記する、買収契約書や株式譲渡契約書などの合意書が必要となります。

4. 法務書類
M&Aには法的な手続きが関わってくるため法務書類が必要となってきます。法務書類には、会社法に基づく書類や契約書、訴訟記録などが含まれます。

5. デューデリジェンス報告書
M&Aの際には、売り手企業の詳細な情報を収集し、分析する必要があります。そのために、デューデリジェンス報告書が必要です。

6. 経営計画書
M&Aが完了した後、買収企業の経営をどのように進めるかを示す計画書が必要です。

7. 税務書類
M&Aには、税務上の手続きが関わってくるため税務書類が必要となります。税務書類には、法人税や消費税などの申告書や納税書類が含まれます。

上述したようにM&Aで必要な資料は専門的な内容が多く、準備には時間を要してしまうこともあります。
そのような書類作成は、M&Aアドバイザーなど専門家に相談し、助言を受けながら進めることが一般的です。

次に、M&Aアドバイザーに依頼した場合に必要な書類をM&A検討フローをもとにご紹介します。
なお、契約内容やM&Aの形態、買い手企業の要望によって、売り手企業が提供する資料などは様々です。
ここでは主な契約書・書類に絞り説明します。

M&A検討フローをもとにした契約書や書類



1. 秘密保持契約書
まず、M&Aを依頼する「M&Aアドバイザー」先が決まったら、M&Aアドバイザーの所属している企業と「秘密保持契約書」を締結します。お互いに開示した情報を漏洩しないことを約束する書類です。
M&Aを検討していることを始めとした機密情報、例えば経営戦略や技術情報などが不適切に流出するリスクを防ぎます。
(こちらは「2.アドバイザリー契約書」内で包括契約することもあります)

2. アドバイザリー契約書(仲介契約書)
アドバイザーの役割や業務範囲、報酬、契約期間など条件が定められた契約書となります。

ここからは、買い手候補先を探し、交渉を進める段階で作成する書類です。

3. ノンネームシート
M&Aの交渉は、M&Aアドバイザーを通して買い手候補先へ売り手企業を紹介する流れになります。
紹介する最初の段階は、売り手企業が特定されない範囲の事業内容や財務状況など大まかな情報をまとめた書類を提出します。
この書類を「ノンネームシート」と言います。このノンネームシートには、希望譲渡額などの条件も記載している場合が多いです。

4. 企業概要書(IM)
企業概要書は「Information Memorandum」を略して「IM」と呼ばれています。
売手企業が作成する書類で、企業概要・事業内容・財務諸表などの詳細が記載された書類のことを示します。
売手企業が買手企業に対し、M&Aを検討するにあたり必要となる具体的な事業内容や財務情報、今後の事業計画などの詳細を伝えることになります。開示する前提条件としては、売主がその買主に開示することを許可しており、買主が売主またはアドバイザーと秘密保持契約書を締結していることが必要になります。

企業概要書の詳細については、作成のポイントを踏まえた以下コラムをご参考ください。


5. ロングリスト・ショートリスト
ロングリストとは、M&Aの買い手候補企業を一定の条件でリストアップした書類になります。
そのロングリストから具体的な条件で絞り込んだ「ショートリスト」を作成し、M&Aの交渉(マッチング)を進める企業の選定に活用します。
売り手側は自社にあった候補先かどうか、しっかりと検討していくことが重要です。

M&A交渉までのながれについては、こちらのコラムをご参考ください。


ここからは、売り手企業と買い手企業が具体的にM&Aを進めていく意思が固まった段階で作成する契約書・資料です。

6. 意向表明書
買い手企業が売り手企業へ「買収に対する意向」を提示する書類です。
買収価格とその算定根拠、M&Aスキームや条件などが記載されています。なお、法的な効力はありません。

7. 基本合意書
意向表明書とは取り交わすタイミングや内容、合意に関する違いがあります。
買い手企業の「意向」を明確にする意向表明書に対して、基本合意書はM&Aをより具体的に進めるため独占交渉権を付与する等の条件を定め、双方の合意が必要となります。
原則、法的な効力はありませんが、条文毎に法的拘束力を設定する場合があります。

基本合意書の詳細については、役割と記載時の注意点を解説したコラムをご覧ください。


8. デューデリジェンス(DD)について
成約の前に売り手側企業の実情をよりクリアにするため、買い手側企業が行う企業調査です。
事業内容以外の潜在リスク、コンプライアンス違反等の隠蔽などが行われていないかの調査が目的で、会計処理や資産管理が適切に行われているか、M&Aの手法や契約に問題が無いかなどを調査するものです。
M&Aではおもに財務・税務デューデリジェンスやビジネスデューデリジェンスが実施されます。
売り手企業から提供される資料は、会社案内資料、経営計画書、決算書及び確定申告書、商業登記簿謄本、定款、株主名簿、組織図・従業員名簿、雇用契約書、就業規則等の各規定類、固定資産台帳、取引先との契約書一式 等となります。

9. 最終契約書
M&Aの最終交渉で買い手企業と売り手企業が合意しましたら「最終契約書」を締結します。
株式譲渡の際は「株式譲渡契約書」、事業譲渡の際は「事業譲渡契約書」と呼ばれています。

売り手に必要なものは「貴社を買い手にPRする」資料


これまで述べてきた通り、売り手に関して必要な資料・書類は様々ございますが、一言でいうと「貴社の事を買い手にお伝えする資料(貴社をPRするための資料)」になります。
形式的なものとしては、具体的には、定款、謄本、会社案内、決算書、税務申告書等が挙げられ、案件が進んでいけば、総勘定元帳等の詳細な資料も必要になります。イメージとしては、税務調査や監査時に提出する資料を頭に思い浮かべると良いかと思います。

買い手に必要なものは「ターゲットが明確になったM&A戦略」


M&Aを進める上で契約書・書類についての知識も重要ですが、買い手企業として最も重要なものは「ターゲットが明確になった貴社のM&A戦略」です。
上述にあるように案件が始まると買い手は、売り手の資料を基に精査を行うため、案件のマッチングがスタートしてからの買い手の資料はそれ程重要ではございません。
全く必要がないと言えば語弊がありますが、案件ごとに必要資料が変化いたしますので、最も重要な「案件を獲得するための資料」が上記の「ターゲットが明確になった貴社のM&A戦略」でございます。
「ターゲットが明確になったM&A戦略」の資料があることで、売り手企業の精査の基準になるだけでなく、アドバイザー等が紹介する案件も明確になりますので、初期段階でのマッチングのズレが少なくなります。
また、M&Aに対する真剣さもアドバイザーにアピールできますので、優先的に案件が持ち込まれる可能性もあり、きわめて有効な資料と言えます。


買い手に必要なものは「ターゲットが明確になったM&A戦略」|M&Aを進めるために必要な資料・書面をご紹介
このコラムの執筆者
文岩 繁紀

文岩 繁紀

M&Aコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

金融機関を対象とした経営セミナー運営や、従業員教育支援を経験。M&A部門立ち上げに伴って、M&A部門へ異動。
M&Aアドバイザーとして活躍し、数十件の成約実績を積み、現在に至る。
譲受企業、譲渡企業それぞれの心情を理解し、クライアントに寄り添ったアドバイスを得意としている。

主な実績
  • 建設業の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • サービス業の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 人材派遣業の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 小売り卸業の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • IT会社の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 医薬関連会社の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 運送業の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 旅行業の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 製造業の譲渡側M&Aアドバイザリー

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