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M&A情報

M&Aのプロセスとは?
フェーズごとの説明から軸となる
M&A戦略策定のポイントを解説

2022.03.03

M&Aの全体プロセスとは?


企業結合(M&A)を「会社の持分を移転する手続き」として捉える方も多いですが、実際のプロセスは発案から経営統合までの長い道のりで、全体を一つのストーリーとして把握することが重要です。
準備・交渉・クロージング・統合という四つのフェーズは、それぞれが独立しているようでいて密接に連動しています。
どの段階でどの情報を開示し、どのリスクを許容し、どの専門家にサポートを依頼するか。そうした判断軸を早い時点で整理しておくと、社内外の合意形成がスムーズになります。

M&Aの全体プロセスとは?

M&Aのプロセスをフェーズごとに解説


<準備フェーズ>
最初に行うのはビジョンと事業戦略の棚卸しです。ここで「買い手としてどの市場でシェアを伸ばしたいのか」「売り手として従業員の雇用をどう守るのか」といった目的を具体化し、ターゲット候補をロングリスト化します。
ノンネームシートを介した打診やマッチングサイトの活用が一般的ですが、業種や規模によって向き不向きがあるため、適切な専門家の意見を聞きながら進めましょう。
並行して投資判断基準を作成しておくと、後日の交渉で条件がぶれてもブレーキを掛けやすくなります。

<交渉フェーズ>
秘密保持契約(NDA)締結後は、企業情報(インフォメーションメモランダム)の授受、企業価値算定、トップ面談といったイベントが続きます。
特にトップ面談は数字以上に相手経営者の価値観を見極める場であり、PMI(統合)の成否を左右することも多いポイントです。
基本合意に至ったら、限定的ながら独占交渉期間を設定し、デューデリジェンスに進みます。財務だけでなく法務・税務・人事等、幅広くチェックすることで、簿外債務や係争など潜在リスクを洗い出します。
ここで発見された問題は最終契約書に表明保証や価格調整条項の内容として反映し、交渉を収束させていきます。

<クロージングフェーズ>
最終契約書を締結した後も、株主総会決議、債権者保護手続き、独占禁止法の届出など法定スケジュールが続きます。
特に株式が分散している場合は、株券の回収や名義書換など実務的な準備に時間がかかるため余裕を持つ必要があります。
また、取引先のチェンジオブコントロール条項に該当する場合は事前同意が必要になるため、クロージング直前で想定外の遅延が発生しないよう確認を怠らないようにしましょう。

M&Aのプロセスをフェーズごとに解説

M&Aを円滑に進めるためのポイント


四つのフェーズを貫く軸が「M&A戦略」です。
このM&A戦略がないまま突き進むと、途中で条件の修正が相次ぎ、M&Aプロセス全体の方針が保てなくなります。
一方、戦略を明文化しておけば「この金額以上なら撤退」「この技術が獲得できるならスキーム変更も可」といった判断が迅速に下せるため、交渉期間の短縮とコストの抑制につながります。
以下ではそもそもM&A戦略とは何かを深掘りし、実効性のある戦略の作り方を解説していきます。

M&Aを円滑に進めるためのポイント

そもそもM&A戦略とは何か?


実は、M&A戦略に明確な定義はありません。
M&A戦略をあえて定義するなら、「中長期ビジョンを実現するために、M&Aをどのように活用するかを定めたもの」と言えるでしょう。M&Aはあくまでも「手段」であり、「目的」ではないということです。「知り合いの会社がM&Aをしたので、自社でもやってみたい」といった話をよく聞くことがありますが、このパターンは要注意です。
M&A戦略立案の出発点は、自社の中長期ビジョンであり、そこから導き出された事業戦略に他なりません。(【図表 1】)


そもそもM&A戦略とは何か?

【図表1 M&Aは中長期ビジョン実現のための「手段」】

中長期ビジョンや事業戦略を所与のものとして、具体的な企業名や業種をヒアリングする中で、ビジョン・事業戦略との整合性や親和性を検討していきます。このステップをしっかりと組み立てることが、この後に待ち受ける交渉やDD(デューデリジェンス)、PMIの際の指針にもなるのです。

M&A戦略を策定するための4つのプロセス


M&Aを実行する前段として、中長期ビジョンの構築は絶対不可欠の要素となります。
では、企業のビジョンを実現するためにM&Aを実行しようと考えたときに、どのようにしてM&A戦略策定のプロセスを踏むべきなのでしょうか。


1. 中長期ビジョンの構築
先述の通り、M&A戦略の構築は、まず中長期ビジョンの構築から始まります。
不確実性が高まる現在、単年度予算主義では、1年間は乗り切れてもコロナショックのような大きな外部環境の変化に対応できません。「数年先ではなく、その先の未来に実現したいビジョンを設定し、それに向かって今から何をすべきなのか」という「バックキャスティング方式」でのビジョン構築を行いましょう。
業界によって環境の違いはあるものの、長期ビジョンを設定することで中期ビジョンが明確になります。長期ビジョンを3~5年のスパンでより詳細にしたものが中期ビジョンなのです。例えば、3年後を想像してみましょう。会社の規模が大きくなればなるほど、事業構造を転換することは容易ではありません。その間に構造変化を起こそうとすると、短期間で大きな効果を上げる手法を活用しなければならなくなります。そこで、中期ビジョンと現実のギャップを埋めるために、「時間を買うための選択肢」とも言われるM&Aを組み込んだ事業戦略を検討する必要があります。


2. 事業戦略との整合性
次に行うのが、事業戦略との整合性が取れているのかの調整です。
複数の事業を展開するパターン(事業ポートフォリオの再構築)や主力事業一本で勝負するパターンなど、さまざまな戦略が考えられますが、事業戦略とM&A戦略は整合性が取れていなければなりません。
例えば、主力事業とまったく関係のない事業を買収する場合、それらはいわゆる「飛び地」の買収となります。事業ポートフォリオを増やす目的で実行するのであれば整合性は取れるかもしれませんが、単に財務状態が良いという理由や、含み益のある資産を保有している状態で安く買収できるという理由でM&Aを実行する場合は、慎重な検討が必要となります。なぜなら、事業戦略に寄与するM&Aでなければ、成長につながりにくいからです。
また、事業戦略との整合性を取ると、具体的なターゲット(対象企業)の選定基準も見えてきます。対象企業に求める規模・エリア・保有する技術などを明確にすることで、自ら対象企業にアプローチすることが可能となり、他社からの持ち込み案件においても結論を早期に出すことができるのです。


3. M&A実行の判断基準の設定
M&Aを実行する上で、戦略との整合性以外にもう1つ決めておかなければならないことは、投資判断基準と意思決定ルールです。これは、M&Aの撤退基準にもつながるからです。
事前に投資判断基準を設定し、ある一定のラインを超えた場合は、交渉から降りるという決断をしなければなりません。
投資判断基準は、自社の保有キャッシュや資金調達可能額、また、投資の回収期間を勘案して設定されるケースが多いです。さらに、意思決定ルールとして、買収に至る意思決定のプロセスを事前に決めておくことが重要になります。案件情報を最初に受け、交渉を担当する部署を明確にすることが必要でしょう。
また、その後の重要事項はどの機関で決定するのかをあらかじめ定めておくことによって、交渉時の意思決定を迅速に進めることができます。意思決定に時間がかかる企業は、交渉の相手方からの信用を失う可能性があるため、注意が必要でしょう。


4. M&Aとその周辺領域
最後に、M&Aを実行した際の周辺領域における影響の調査です。
なぜなら、M&Aを推進することにより、周辺領域の強化も必要となってくるからです。
例えば、M&Aの件数が増えてくれば、グループインした会社の経営を任せる人材の育成が必要になります。あるいは、よりM&Aを実行しやすくするため、組織再編を実行したりする必要性が浮き彫りになります。このように、付随して出てくる課題に対処しながら、企業の成長を実現します。

M&A戦略を策定するための4つのプロセス

M&A戦略をしっかりと定めた上で実行すべき!


M&Aは、自社の成長を目的として多額の投資額を用いて実行されます。これが場当たり的に実行されるようでは、企業経営がうまくいくはずがありません。先述の通り、M&Aは「手段」であって「目的」ではないのです。
不確実性の高い世の中において、自社の中長期ビジョンを描き、現在とのギャップに応じてM&Aを検討・実行していきましょう。


このコラムの執筆者
丹尾 渉

丹尾 渉

執行役員
M&Aコンサルティング事業部長

2017年からM&Aコンサルティング本部の立上げに参画。M&A戦略構築からアドバイザリー、PMIまでオリジナルメソッドを開発。その後5年間で延べ80件以上のM&Aコンサルティングに携わる。「戦略無くしてM&Aなし」をモットーに、大手から中堅・中小企業のM&Aを通じた成長支援を数多く手掛けている。

主な実績
  • 上場企業の新規事業開発を目的とした譲受側M&Aアドバイザリー
  • 上場企業子会社の事業戦略からM&Aまで一貫性を持たせた戦略構築
  • 上場企業子会社の買収調査のためのビジネスDD、財務DD、労務DD
  • 中堅企業の事業ポートフォリオの転換によるビジネスモデル変革支援
  • M&Aを初めて実施した中堅企業のPMI支援
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