経営戦略やビジョンに基づき、
人材がどうあるべきかを再定義することから始める
人的資本に対する期待の高まり
人的資本経営では人材を「資源」ではなく「資本」=「価値」として捉え、その価値を最大限引上げ中長期的なビジョンの実現に繋げていく考え方である。人材が資本であることから企業はその潜在力を見いだし、育成して、活かしていくことが求められる。
日本企業の多くはこれまでも「企業は人なり」という言葉でもある通り、企業は人で成り立っているという考え方の元、教育や人材に対する投資を実践しているものの可視化や開示という視点ではほとんど行われていなかったというのが実態である。
しかし、今や企業競争力の源泉として、土地・建物や金融資産などの有形資産から人的資本のような無形資産に対する比重が高まっている。
では、可視化・開示に向けて企業はどういうステップで取り組めば良いのか、具体的に次の項で解説を行う。
人事ビジョンの策定とそれに基づくKPIの構築ステップ
STEP1:現状の課題と優先順位を定めるための現状認識
まずは現状の人材に関する課題を洗い出し、自社にとって何から取り組むべきなのか優先順位を整理いただきたい。
課題把握の視点としては、経営戦略を満たすためのケイパビリティの把握や、経営上重視すべき人事領域の特定などがあげられる。
STEP2:経営戦略と連動した人事ビジョンの策定
STEP1の現状課題を踏まえた人事ビジョンの明文化を行う。
経営戦略の実現のためにあるべき人事部、人材マネジメントシステム、あるべき人材像の要素も踏まえ、設定いただきたい。
STEP3:経営戦略・人事ビジョンを満たすためのKPI(重要業績評価指標)の策定
自社の人事ビジョンの実現に向けたデータと経営戦略との結びつきを確認した上でKPIの設定をしていただきたい。
また、そもそも重視すべき人事領域のデータがどの程度把握できているかも重要となる。
例えば、KPIの設定として「研修受講率」があげられるが何をもって受講したとするのか、どこまでの範囲のものを研修としてみなすのかなど条件設定が変わると正しく抽出できない可能性もあるため、人事部員の入れ替わりによりそのあたりのルールが形骸化されていないかも確認いただきたい。
STEP4:KPIの目標設定とアクションプランの策定
STEP3で設定したKPIをもとにビジョン実現に向けた目標設定を行う。年度ごとにどのような状態(定性・定量)を目指すのかを設定する。
その上で、目標の実現に向け、アクションプラン(具体的実行策)を計画する。
アクションプランは各年度まで落とし込まれていることが好ましい。
できることから始めるのではなく、あるべき姿からのバックキャストでKPIの設定に繋げていただきたい。
人的資本経営の必要性
人的資本経営の取り組みは大企業だけのものとして捉えてしまう傾向にあるが、中小企業も例外ではない。
冒頭でも記載したように、人的資本経営とは「企業は人なり」をアップデートしていくことにある。
決して情報開示をしていくことが目的ではなく、人材そのものに投資し、人材力を引上げ結果企業としてのビジョンの実現に繋げていくことにある。
大企業に比べ投資できる額は限られているかもしれないが、これまで取り組んできた人事に対する取り組み(教育、採用、評価・賃金など)を整理しつつ、改善に向けスモールスタートでも進めていただきたいと考える。
発生した人事課題を解決していくような対処療法ではなく、将来のあるべき姿に向けた取り組みとしてアップデートしていただきたい。
この課題を解決したコンサルタント
タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
チーフマネジャー山中 惠介
- 主な実績
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- 大手小売業向け人事制度構築コンサルティング
- 製造業向け退職金制度再構築コンサルティング
- 建設業向け定年延長制度設計コンサルティング
- 飲食業向け人事制度構築コンサルティング
- 製造業向け人事制度再構築コンサルティング
- 中堅製造業教育カリキュラム再構築コンサルティング
- 福祉法人人事制度再構築コンサルティング
- 学校法人人事制度再構築コンサルティング