M&A情報
M&Aを進めるために必要な書類・契約書を
フェーズ別に解説~準備から決済まで
2023.03.09
M&Aを進めていくにあたっては、さまざまな資料や書面が必要となります。今回はM&Aの手続きにおいて必要な資料のご紹介と、作成時のポイントや重要性について解説します。
M&Aを成功に導くために事前準備の重要性をご理解いただき、ポイントを押さえた資料作成を行いましょう。
M&Aのプロセス・フェーズ別に見る必要書類の全体像
M&Aの手続きは数ヶ月から1年近い期間を要し、進行フェーズによって必要となる書類の性質が大きく異なります。必要書類は大きく分けて「準備・検討」「交渉・調査」「契約・クロージング」の3段階で整理することができます。全体のスケジュール感を把握し、然るべきタイミングでスムーズに提出できるよう準備しておくことが重要です。
特に、交渉中盤のデューデリジェンスでは、短期間で膨大な資料の開示を求められます。この段階での資料不備や提出の遅れは、買い手企業からの不信感を招き、交渉期間の延長や最悪の場合は破談につながるリスクもあります。M&Aプロセス全体を見通し、各フェーズで求められる情報の粒度や種類をあらかじめ理解しておくことが、円滑な成約への近道となります。
①準備・検討フェーズ
自社の価値を算出し、相手にアピールするための資料(決算書、企業概要書など)
②交渉・調査フェーズ
条件をすり合わせ、リスクを確認するための資料(基本合意書、デューデリジェンス開示資料など)
③契約・クロージングフェーズ
法的な譲渡を実行し、経営権を移転させるための資料(最終契約書、株主名簿書換請求書など)
各書類がどのタイミングで必要になるか、プロセスの全体像と合わせて確認しておくと理解が深まります。
M&Aの準備・検討フェーズに必要な書類
M&Aの初期段階である「準備・検討フェーズ」では、まず自社の企業価値を客観的に把握し、適切な買い手候補を選定するための資料作成が中心となります。この段階で準備不足があると、買い手候補に対して自社の魅力が十分に伝わらず、マッチングの機会を逃してしまう可能性があります。
財務資料
自社の経営状態や財務内容を正確に把握し、適正な譲渡価格を算出するために必要な基礎資料です。単年度の数字だけでなく、過去の推移や税務リスクを確認するため、以下の資料をセットで用意します。
①財務諸表(決算書)
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書(直近3期分)
②勘定科目内訳明細書
各勘定科目の詳細な内訳(直近3期分)
③法人税・消費税申告書
税務処理の適正性を確認するための別表類(直近3期分)
ノンネームシート
M&Aの交渉は、M&Aアドバイザーを通して買い手候補先へ売り手企業を紹介する流れになります。紹介する最初の段階は、売り手企業が特定されない範囲の事業内容や財務状況など大まかな情報をまとめた書類を提出します。この書類を「ノンネームシート」と言います。このノンネームシートには、希望譲渡額などの条件も記載している場合が多いです。
企業概要書(IM)
企業概要書は「Information Memorandum」を略して「IM」と呼ばれています。
売り手企業が作成する書類で、企業概要・事業内容・財務諸表などの詳細が記載された書類のことを示します。
売り手企業が買い手企業に対し、M&Aを検討するにあたり必要となる具体的な事業内容や財務情報、今後の事業計画などの詳細を伝えることになります。開示する前提条件としては、売主がその買主に開示することを許可しており、買主が売主またはアドバイザーと秘密保持契約書を締結していることが必要になります。
アドバイザリー契約書(仲介契約書)
アドバイザーの役割や業務範囲、報酬、契約期間など条件が定められた契約書となります。
ロングリスト・ショートリスト
ロングリストとは、M&Aの買い手候補企業を一定の条件でリストアップした書類になります。そのロングリストから具体的な条件で絞り込んだ「ショートリスト」を作成し、M&Aの交渉(マッチング)を進める企業の選定に活用します。売り手側は自社にあった候補先かどうか、しっかりと検討していくことが重要です。
M&Aの交渉・調査フェーズに必要な書類
買い手候補との本格的な交渉が始まると、条件の合意形成と、デューデリジェンスによる詳細なリスク確認が行われます。このフェーズでは、契約書類の締結と膨大な内部資料の開示が必要となります。
交渉段階で取り交わす契約書
①秘密保持契約書
M&Aを依頼する「M&Aアドバイザー」先が決まったら、M&Aアドバイザーの所属している企業と「秘密保持契約書」を締結します。お互いに開示した情報を漏洩しないことを約束する書類です。
M&Aを検討していることを始めとした機密情報、例えば経営戦略や技術情報などが不適切に流出するリスクを防ぎます。
②意向表明書
買い手企業が売り手企業へ「買収に対する意向」を提示する書類です。買収価格とその算定根拠、M&Aスキームや条件などが記載されています。なお、法的な効力はありません。
③基本合意書
意向表明書とは取り交わすタイミングや内容、合意に関する違いがあります。買い手企業の「意向」を明確にする意向表明書に対して、基本合意書はM&Aをより具体的に進めるため独占交渉権を付与するなどの条件を定め、双方の合意が必要となります。原則、法的な効力はありませんが、条文ごとに法的拘束力を設定する場合があります。
デューデリジェンスで提出する詳細資料
成約の前に売り手側企業の実情をよりクリアにするため、買い手側企業が行う企業調査です。事業内容以外の潜在リスク、コンプライアンス違反などの隠蔽などが行われていないかの調査が目的で、会計処理や資産管理が適切に行われているか、M&Aの手法や契約に問題が無いかなどを調査するものです。
M&Aではおもに財務・税務デューデリジェンスや法務、労務、ビジネスなどのデューデリジェンスが実施されます。
①財務・税務
総勘定元帳、預金通帳の写し、固定資産台帳、納税証明書など。
②法務・契約
定款、商業登記簿謄本、株主名簿、重要な取引先との基本契約書、賃貸借契約書、訴訟記録など。
③人事・労務
就業規則、給与規程、雇用契約書、36協定、従業員名簿(勤続年数・給与額)など。未払い残業代などの潜在債務がないか厳しくチェックされます。
デューデリジェンス報告書
買い手側の専門家(公認会計士や弁護士など)によって作成される報告書です。検出されたリスクや問題点がまとめられており、最終契約の条件交渉や価格調整の根拠となります。
M&Aの契約・クロージングフェーズに必要な書類
デューデリジェンスの結果を踏まえ、最終的な条件が整った後に迎えるのが契約とクロージングのフェーズです。法的拘束力のある契約締結と、経営権の移転手続きを行います。
最終契約書
M&Aの最終交渉で買い手企業と売り手企業が合意しましたら「最終契約書」を締結します。株式譲渡の際は「株式譲渡契約書」、事業譲渡の際は「事業譲渡契約書」と呼ばれています。
クロージングに必要な書類
株式や資産の名義変更を行い、取引を完了させるために必要な書類です。不備があると決済が実行できないため、司法書士などと連携して準備します。
①株券・株主名簿書換請求書
株主としての権利を買い手へ移転するために必要です(株券発行会社の場合)。
②役員の辞任届
旧経営陣が退任する場合に提出します。
③印鑑証明書・実印など
発行後3ヶ月以内の印鑑証明書や、会社実印・銀行印・通帳・カード類を引き継ぎます。
④その他
事業譲渡の場合は、不動産の権利証(登記識別情報通知)や従業員の転籍同意書、取引先との契約承継に関する覚書なども必要となります。
株式譲渡と事業譲渡で異なる必要書類
M&Aのスキームによっても、準備すべき書類は異なります。最も一般的な「株式譲渡」は、株主が変わるだけで会社組織や契約関係はそのまま存続するため、手続き書類は比較的シンプルです。一方で「事業譲渡」の場合は、会社そのものではなく、特定の事業資産や契約を個別に移転させる手続きとなるため、実務的な書類が複雑になる傾向があります。
株式譲渡の場合
主な手続きは株式の引渡しに関するものです。株券発行会社であれば「株券」、未発行であれば「株主名簿書換請求書」などが中心となります。
事業譲渡の場合
資産や従業員、取引先との契約を個別に巻き直す必要があります。
①不動産関連
工場や土地を譲渡する場合、「権利証」や「移転登記書類」が必要です。
②従業員関連
転籍する従業員一人ひとりからの「転籍同意書」や、新たな「雇用契約書」が必要です。
③取引先関連
契約上の地位を移転するための「契約承継に関する覚書」などを主要取引先と取り交わします。
売り手に必要なものは「貴社を買い手にPRする」資料
これまで述べてきた通り、売り手に関して必要な資料・書類は様々ございますが、一言でいうと「貴社の事を買い手にお伝えする資料(貴社をPRするための資料)」になります。
形式的なものとしては、具体的には、定款、謄本、会社案内、決算書、税務申告書などが挙げられ、案件が進んでいけば、総勘定元帳などの詳細な資料も必要になります。イメージとしては、税務調査や監査時に提出する資料を頭に思い浮かべると良いかと思います。
買い手に必要なものは「ターゲットが明確になったM&A戦略」
M&Aを進める上で契約書・書類についての知識も重要ですが、買い手企業として最も重要なものは「ターゲットが明確になった貴社のM&A戦略」です。
上述にあるように案件が始まると買い手は、売り手の資料を基に精査を行うため、案件のマッチングがスタートしてからの買い手の資料はそれ程重要ではございません。
全く必要がないと言えば語弊がありますが、案件ごとに必要資料が変化いたしますので、最も重要な「案件を獲得するための資料」が上記の「ターゲットが明確になった貴社のM&A戦略」でございます。
「ターゲットが明確になったM&A戦略」の資料があることで、売り手企業の精査の基準になるだけでなく、アドバイザーなどが紹介する案件も明確になりますので、初期段階でのマッチングのズレが少なくなります。
また、M&Aに対する真剣さもアドバイザーにアピールできますので、優先的に案件が持ち込まれる可能性もあり、きわめて有効な資料と言えます。

文岩 繁紀
M&Aコンサルティング事業部
ゼネラルパートナー
金融機関を対象とした経営セミナー運営や、従業員教育支援を経験。M&A部門立ち上げに伴って、M&A部門へ異動。 M&Aアドバイザーとして活躍し、数十件の成約実績を積み、現在に至る。 譲受企業、譲渡企業それぞれの心情を理解し、クライアントに寄り添ったアドバイスを得意としている。
- 主な実績
-
- 上場企業のカーブアウト
- 債務超過、再生案件のご支援
- 50件以上のディールを実施
- 成長戦略や承継問題による、譲受側、譲渡側のアドバイザリー業務の実施
売り手向け - 承継問題や成長戦略による、譲渡側、譲受側のアドバイザリー業務の実施
例)建設業の売り手アドバイザー
サービス業の売り手アドバイザー
人材派遣業の売り手アドバイザー
小売り卸の売り手アドバイザー
ITの売り手アドバイザー
医薬関連の売り手アドバイザー
運送業の売り手アドバイザー
旅行業の売り手アドバイザー
製造業の売り手アドバイザー 等
※成約件数約50件程で多種多様な業種の支援を実施。
売上:数千万円から数十億円の案件をご支援。
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