人事コラム
人事制度

人事制度統合を円滑に進めるためのポイントとは?
企業が直面する課題と解決策

経営理念・戦略の実現に資する人事制度統合で早期のシナジー創出と人材力強化を実現する

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人事制度統合を円滑に進めるためのポイントとは?企業が直面する課題と解決策

人事制度統合は「内包」ではなく、
「強みの掛け合わせ」をもって真価を発揮する!

人事制度統合の重要性

人事制度統合の重要性

近年M&Aが活発化している。上場企業の長期ビジョンや中期経営計画を見渡してみると、必ずと言って良いほどM&Aが重要戦略として位置付けられているのが分かる。

なぜ各社はM&Aを重要戦略として掲げ、推進しようとしているのであろうか。その理由は明白である。変化が激しい現代の経営環境で生き残るには従来のビジネスモデル、今日まで築き上げてきた企業文化では対応しきれないと認識する企業が増えてきたからであろう。新しいビジネス、移り変わるニーズにスピード感を持って適応するのに、自社で製品・サービス・機能を一から整備していたのでは遅い。自社で内製化するよりも、すでにその製品・サービス・機能を有している企業と統合するのが最も効率的かつ効果的と言える。

ただし、M&Aの目的は、単なる会社の統合ではなく、「双方の強みを活かした成長戦略の推進」、「重複した事業・業務の効率化」といったシナジー効果を創出することである。そしてシナジー効果の実現に向けた戦略・施策の実行力を決めるのは、統合した新会社の人材力であることを見落としてはならない。

つまり経営環境に合わせた戦略としてM&Aを実行したならば、新しい会社で貢献し、成果を上げる人材の統合も共に進める必要があるというのが第一ボタンである。新会社の社員一人ひとりが、経営理念・ミッション・戦略の実現に向けて高いモチベーションで取り組むことが出来る体制とその仕組みである人事制度を早期に構築できるかが、M&A後の効果を最大化させる最も重要なポイントなのである。

人事制度の統合を進める上で企業が直面する課題

人事制度の統合を進める上で企業が直面する課題

しかしながら、M&A後に社員が持つ感情は複雑なのも事実である。今まで目指していた「経営理念・戦略」から「職場環境」や「ルール」などが新しくなる中で、社員が不安・戸惑い・遠慮などを抱えるのは当然である。また企業にはそれぞれ固有の「風土・文化」がある。それまで、自社では常識として捉えていたことが相手企業から見るとそうではないということが、現実に起こり得える。

そして人事制度の目線で考えるならば企業文化や仕組みが異なれば、それを評価する視点・基準も異なってくる。M&A後に同じ会社として統合したとしても人事制度はダブルスタンダードというような状況を放置していると、あらゆる場面において、調整作業が発生してしまい、結果的に、シナジー発揮の最大化が遅れてしまう。シナジー発揮の最大化が遅れるということは人材力の低下を招いてしまうことを想像するのは容易いだろう。

人事制度統合を円滑に進めるためのポイント

人事制度統合を円滑に進めるためのポイント

前述した状況にならないためにも、社員の活躍を促進する仕組みである人事制度は早期に統合し、全社員が同じ目線・同じ基準で評価・処遇できる状況とするのが望ましい。この人事制度統合を円滑に進めるためのポイントは2つある。

一つ目は、「ベクトル統一」である。新会社の経営理念・ミッション・戦略は何なのかを全社員が腹落ちできるまで浸透させる必要がある。一見、人事制度という仕組みと経営理念・ミッションの明確化は関係しない話に感じられるかもしれないが、人事制度の本質的価値は経営理念・ミッションの実現に貢献する社員の育成、適正処遇である。ゆえに、まずは新会社が目指すべき姿や方向性を明確化することで、それらを見据えた人事制度の統合を行う必要がある。

そして二つ目は、「長所連結主義で制度構築する」という点だ。M&Aによる人事制度はバイアウトした側の仕組み・基準をベースにするケースが多い。ただしそれではバイアウトされた企業の強みや良さを取り入れることができない。そのためイメージとしては内包的に人事制度統合を推進するのではなく、強みと強みを掛け合わせた新しい制度構築を模索するのが良いだろう。

以上二点を念頭において人事制度統合を推進すると、会社の方向性と社員の強み・良さが掛け合わさった仕組みとしてアップデートされる。

人事制度統合の成功事例

人事制度統合の成功事例

M&A後にグループ企業を2社抱える年商500億規模のA社では、グループ会社の自前経営を方針として掲げ、各社の文化を大事にしながらそれぞれの制度・仕組みとして統一感なく運用してきた。ただし昨今ではグループ間での人事異動や技術交流が活発化してきており、新商品開発をはじめとした新たなイノベーションが生まれていた。まさにグループシナジーが発揮できる状態になったのである。

ただし、それぞれの制度や仕組みが異なるため、たとえイノベーションを生み出したとしても適正に評価、処遇されないという課題が浮き彫りになった。そこで、グループ会社の人事制度の統一化を図るため、グループ共通理念・戦略に基づいた共通の等級制度・賃金制度・評価制度を導入。グループ会社で異なる賃金水準は賞与にて是正を行うことで、賃金上のバランスを取りながら、人材交流等をより促進できる仕組みへと刷新したのである。
結果として、グループ全体の一体感が高まり、より業績貢献できる人材の輩出に繋がっている。

まとめ

人事制度統合は強みの掛け合わせによってこれまで以上に社員活躍を促進する可能性を秘めている。人事制度統合に向けたプロセスでは紆余曲折があるかもしれないが、壁を乗り越えた先には、価値観・行動のベクトル統一がなされ、新たなイノベーションが生まれてくると考えられる。人的資本という形で人材価値が見直されている昨今だからこそ、人事制度統合を一つの経営戦略として推進されたい。

この課題を解決したコンサルタント

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