人事コラム
人事制度

定年延長に伴う給与・賃金制度改革の必要性

定年延長制度は避けて通れない、極めて重要な経営課題である。

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定年延長に伴う給与・賃金制度改革の必要性
定年延長の背景と、メリット・デメリット

定年延長の背景と、メリット・デメリット

2024年上期の出生数が約33万人となり、戦後初めて年間出生数が70万人を割ることが予想されている。そのような少子高齢化の時代にあって、労働力不足が益々本格化しており、働き方の見直しを図ることは日本社会全体の課題となっている。

そこで再注目されているのが「定年延長」である。シニア人材の知識と経験を最大限活用し、永く会社に貢献してもらうことは、労働力不足に対するソリューションの一つになると考えられている。まだまだ活躍できる人材を年齢だけで手放すのは、あまりにも惜しいということである。

一例ではあるものの、以下に定年延長のメリットとデメリットを整理する。

メリット

1.長年の勤務で培ったノウハウやスキルを企業が引き続き活用できることで、人員減によるオペレーションの悪化を防ぎ、業務の継続性を保つことができる。
2.技能伝承に掛る時間的な猶予も大きくなるため、技能伝承の確実性も増す。

デメリット

1.高年齢層の社員が長く勤務を続けることで、管理職が埋まり、若手社員の昇進が遅れることがある。これにより組織全体の新陳代謝が低下し、長期的な成長に悪影響を及ぼすことが考えられる。
2.多くの企業では、年功序列型の賃金制度が採用されているが、この仕組みでは、社員の勤続年数に応じて給与が上昇するため、高年齢層の社員の給与が相対的に高くなる傾向があり、総人件費も膨らみやすい。

このようなメリット・デメリットを踏まえながら、各企業に合ったやり方で定年延長制度を効果的に運用していくことは、各企業のみならず、日本社会全体にとっても重要なことである。

定年延長の効果的な運用には、給与・賃金制度の見直しが必要

定年延長の効果的な運用には、給与・賃金制度の見直しが必要

定年延長を有効的に活用するには、多くの企業にとって給与・賃金制度の見直しが必要である。
その理由は下記の通りである。

1.従来の給与制度とのミスマッチ

多くの企業では、年功序列型の給与体系が採用されている。この体系では、勤続年数や年齢に応じて給与が上がり続けるため、高年齢人材ほど給与が高くなり、実際のパフォーマンスとのミスマッチが生じやすい。

2.企業の人件費負担の増加

定年延長により高年齢人材が増えると、賃金カーブがそのまま維持される場合、企業全体の人件費が大幅に増加することになる。

3.若手社員への影響

高年齢人材の給与を維持し続けると、若手社員の昇給に関して将来が狭まり、不安感が生じる可能性がある。この状況は、若手人材のモチベーション低下や離職率の上昇に繋がるリスクがある。

4.退職金制度の調整

従来の退職金制度は、60歳定年を前提として設計されているケースが多く、再設計が求められる。

5.業績と成果に基づく公平性の確保

60歳以降の働き方や貢献度は多様化している。そのため、成果に基づく公平な給与制度の導入が求められる。

6.労働力確保と柔軟な働き方の促進

高齢者の就労を促進するためには、柔軟な働き方に応じた給与制度が必要となる。例えば、短時間勤務や契約社員としての再賃金制度など、高年齢人材のライフスタイルに合わせた賃金制度が求められる。

以上より、定年延長を支える給与・賃金制度の見直しは、企業が持続可能な成長を実現するための必須条件であると言える。

給与・賃金制度改革のステップ

給与・賃金制度改革のステップ

定年延長に伴う給与・賃金制度改革は、大きく3ステップを意識すると良い。

ステップ1:現状認識

最初のステップは、最新の給与・賃金制度の現状と課題を洗い出すことである。例えば、定年延長が総人件費や昇進機会にどのような影響を与えているのかをデータに基づいて分析する。退職金制度が新制度とマッチするかも重要な検討ポイントである。

ステップ2:公平性と持続可能性を考慮した設計

次に、制度のあるべき姿を明確にする。高年齢層の給与を抑制しつつ、若手社員の昇進機会を確保するバランスが重要である。そのために、役割や成果に応じた評価制度への移行や、65歳以上の勤務者向けの給与・賃金体系の設計などが求められる。

ステップ3:段階的な導入とモニタリング

新しい制度を一気に導入するのではなく、段階的な移行を行うことで、従業員の混乱を防ぐことができる。例えば、まずは対象者を限定して導入し、新制度の効果をモニタリングし、必要に応じて柔軟に調整するなどが有効である。

さいごに

定年延長は、労働力確保や高齢化社会への対応として必要不可欠なものであり、定年延長に伴う給与・賃金制度の改革は、多くの企業にとって避けて通れない課題である。
これらの問題を後回しにせず、ぜひとも重要な経営マターとして取り組んでいただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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