OKRの導入は、目的、特性と自社の方向性を
正しく整理した上で検討しましょう

「OKR」とは何か
OKRとは、Objective and Key Results(目標と主要な結果)の略で、米インテル社で誕生した目標管理のフレームです。近年では、日本でもメルカリ、Sansan、その他にも業種・業界や社歴を問わず、更なる成長を目指す企業での導入が増えてきております。
OKRは、ピラミッド構造になっており、最上位に会社全体の課題解決、ビジョン達成に向けた最も優先すべき定性的なObjective(目標)が1つ設定され、その下にこのObjective(目標)に対する定量的なKey Results(主要な結果)が3~5個設定されます。さらにそれぞれのKey Resultsに対して、部門ごとのOKRを設定し、その下チームごとのOKRを、最後は個人レベルのOKRまで設定します。これにより、企業の理念やビジョンと、組織と個人の目標に一貫性が生まれ、社員全員が同じ方向を向き、社員同士のコミュニケーションの活性化、社員一人一人のモチベーションの向上が生まれ、より高い目標に向かって挑戦する文化や風土を醸成することをねらいとしています。

OKRとMBOは何が違うのか
MBO(Management by Objectives)とは、日本語で「目標管理制度」です。企業の経営方針と社員個々の目標を調整し、双方の方向性を擦り合わせながら、一人ひとりが達成すべき具体的な目標を設定し、その進捗や結果を管理する手法です。
MBOでは、「新規顧客を毎月〇件獲得し、売上を〇〇円達成する」「〇月までにマニュアルを作成し、〇月までに運用を開始する」のように、設定する目標が具体的(定量的)かつ、評価基準が明確であることが重要です。
MBOのプロセスは、まず組織全体の目標を明確に設定することから始まります。次に、各部門や個人の目標を組織の目標と整合させ、具体的かつ測定可能な形で設定します。このプロセスにより、全ての社員が自分の目標を通じて組織の成功に貢献していることを実感できます。
さらに、MBOは定期的な進捗レビューを通じて、目標達成度を評価し、必要に応じて目標を調整する柔軟性を持っています。これにより、変化するビジネス環境にも迅速に対応できるのが特徴です。
- 目的
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- OKR:組織全体の目標達成と生産性の向上
- MBO:組織と個人の目標達成と人事評価・報酬の決定
- 目標レベルと達成基準
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- OKR:チャレンジングで高い目標レベルで、達成基準は70%程度
- MBO:立場・役割に応じた適正な目標レベルで、達成基準は100%
- 評価頻度と人事評価への影響
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- OKR:1~3カ月に1回と短い期間で評価を行い、人事評価には影響させない
- MBO:半年~1年に1回と長い期間で評価を行い、結果を人事評価、報酬に影響させる
これらの特性より、それぞれの目標管理フレームと相性の良い組織の特徴は以下の通りです。
OKR:
①チャレンジングで高い目標に向かって挑戦できる風土が整っている組織
②短期的な変化に柔軟に対応できるマネジメント行動が取れる組織
③目標設定と評価を切り離して運用する意図がわかる組織
MBO:
①頑張って手に届く範囲の目標設定を通して社員の目線を上げたい組織
②中長期ビジョンを軸に年度目標の達成に向け組織・プロジェクトが機能する組織
③目標と評価を連動させ、上司と部下の目線合わせを行いたい組織
なお、OKRとMBOはどちらが優れているといった観点ではなく、各企業の状況や今の段階を踏まえて、導入の検討をするべきです。
安易に流行りのOKRを導入するのではなく、まずは自社の風土や組織体制の現状理解と、目指すべき姿を明確に示すことがその一歩となります。
OKRの導入メリット・デメリット
OKRを組織に導入した際のメリットとデメリットについて整理します。以下を認識したうえでOKRを導入するか検討することをおすすめします。

OKRを導入するメリット
・社員が企業の目標を共有できる
OKRは、60~70%の達成度で成功とみなすようなチャレンジングな目標を設定します。さらに、会社とチームや個人のOKRをリンクさせて、組織全体で高い目標を目指します。このとき、定期的な振り返りの場で「少しずつ目標に近づいている」「プロジェクトの進捗状況はどうなっているか」といった点を全体で把握しやすくなるのがポイントです。企業の規模が大きいほどチームや個人の意思がすれ違う可能性が高いため、OKRの導入で大きなメリットが期待できます。
・チームワークが向上する
OKRは会社のビジョンにそったチャレンジングな目標を設定するため、振り返りの度に会社のビジョンを社員が共有することになり、会社とのエンゲージメントが高められるでしょう。個人のOKRがチームや会社のOKRとリンクしているため、ときに部署や役職を超えたコミュニケーションが生まれるでしょう。また、困難な目標に向かって全員が一丸となって行動し、目標達成のためにお互いを助け合うことでチームワークの向上も期待できます。
・タスクの優先順位が明らかになる
企業では、各社員がさまざまな業務を担当していることも多く、優先順位やタスク管理が曖昧になりがちです。OKRでは「最終目標はどこか」を常に意識できるため、目標達成に向けてタスクの優先順位を考えるようになり、やるべき事を組み立てやすくなるでしょう。
OKRを導入するデメリット
・導入するまで時間がかかる
OKRは、導入するにあたって目標を設定したり従業員に周知したりするなど、やるべきことが豊富にあります。導入するまで時間がかかるので、あらかじめリソースを確保しておくことが大切です。
・失敗するリスクがある
OKRでは、60〜70%くらいまで達成できそうな目標に設定することで、従業員の向上心を引き立てることが大切です。あまりにも現実離れした目標を設定してしまうと、従業員のモチベーションが下がり、失敗するリスクがあるので注意が必要です。
OKRを導入する際のポイント
OKRを導入するうえで気を付けるポイントをいくつか紹介します。以下を確認し理想的な組織作りを目指しましょう。

・導入する理由を決める
何のためにOKR導入するのか、しっかりとした理由を決めておきましょう。
OKRに限らず、理由が明確ではないまま導入してしまうと、失敗の原因にも繋がります。
OKRを導入することをゴールとせずに「自社はOKRという方法で合っているのか」、「OKRを通して最終的に何を成し遂げたいのか」などの理由づけやOKRを導入した後の目的までしっかりと考えましょう。
・目標を適当に設定しない
目標を設定する時には感覚値のみで設定しないようにしましょう。
あくまでもOKRの目標達成率は60〜70%としています。
この達成率に設定する場合、予想で適当に数値を設定してしまうと、目標が高過ぎたり低過ぎるということになりかねません。目標値と実現可能性に乖離がありすぎると社員のモチベーションに影響をもたらしてしまうため、何度か検証してみたり、参考となるデータを基に目標を設定するようにしましょう。
・人事評価などと連動させない
OKRを人事評価などと連動させてはいけません。
連動させてしまうと、個人の目標を設定する時に「目標を達成できなかったらどうしよう」と従業員に考えてしまい、目標を低く見積もる場合があるからです。
これだと本末転倒であり、目標を低く見積もってしまうと生産性も向上しないため、人事評価と連動させる場合でも一部分のみにしておきましょう。
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー三好 皓之
- 主な実績
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- 物流企業向人事制度再構築コンサルティング
- 金属部品メーカー向人事制度再構築コンサルティング
- 卸売業の中長期ビジョン構築コンサルティング
- 生産機器メーカーの事業再生コンサルティング
- 食品メーカーの幹部候補者育成支援コンサルティング
