人事コラム
人的資本経営

人的資本経営における企業が直面した課題と解決策

人的資本への先行投資によって持続的に人と企業が成長できる善循環モデルを構築する

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人的資本経営における企業が直面した課題と解決策

他社での成功事例・失敗事例を学び、
人的資本経営を自社に実装する

人的資本経営とは

人的資本経営とは

世の中の環境や意識の変化により、人材に対する考え方や価値観は変容した。
人材を「資源」ではなく「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上に繋げるのが「人的資本経営」だ。
人的資本経営の重要性を認知していない企業はないと言っても良いほど広く浸透してきた考え方である。
ただし、人的資本経営とは新しい画期的な考え方ではないのはご理解いただけるだろう。
経営の神様と言われた松下幸之助が「企業は人なり」という考え方を提唱したのは有名な話であり、また経営学の父であるドラッカーも同様のことを述べている。
つまり従来から全ての企業が「人材は大切な企業の財産」と考えていたのである。
では、なぜ今「人的資本経営」という言葉で注目が集まっているのか。それは真の意味で「企業は人なり」を実践出来ていなかった企業が多かったと推察する。
人材にかかる人件費や教育研修費はコストと見なされ、どちらかというと抑制すべき対象であり、それよりも業績拡大を目指して設備投資や新規事業投資に資本を投下する企業が多かったと言わざるを得ない。
今後は人材に関わる費用を「コスト」と捉える考え方から脱却する必要があるだろう。
人的資本経営とはこれまでの人材に対する向かい方、考え方を根本から見直すことを迫っているのだ。
企業を成長・発展させていくのはいつの時代も"人"である。VUCAと言われる先行きの見えない変化の激しい時代においても持続的成長を実現するため、人的資本経営の実装を推進されたい。

人的資本経営の誤解と本質的価値

人的資本経営の誤解と本質的価値

人的資本経営を考える中でよくあるのが、人的資本経営=人的資本情報の可視化と公表であるという誤解である。
たしかに人的資本経営の第一歩は、人的資本情報の公表を行うことと言える。一般的なのは「女性管理職比率」や「男女の賃金格差割合」「エンゲージメント指数」などが開示情報の一例として挙げられるであろう。
これら人的資本経営の基本的な考え方について整理されているのが「人材版伊藤レポート」「ISO30414(人的資本に関する情報開示のガイドライン)」「コーポレートガバナンス・コード」の3つであるため参照されたい。
話は戻るが、人的資本経営の本質的価値は、「人的資本の価値向上による企業価値の向上」である。
企業価値を向上させるためには人材力の強化が必要であり、そのために経営戦略と人材戦略を連動させることが人的資本経営のポイントとなる。
つまり、人的資本の開示はあくまで投資家などのステークホルダーに対する取り組みを示す手段であるに過ぎないのだ。人的資本経営の実行においては情報開示に加えて、人的資本の価値向上施策を両輪で推進していく必要がある。

人的資本経営のメリット

人的資本経営のメリット

人的資本経営のメリットは大きく分けて2つある。

(1)社外ステークホルダーからの企業評価の向上(=ブランディング力の強化)
前述した通り、人的資本経営の具体的な取り組みや人的資本データの開示はステークホルダーへのアピールポイントとなる。
現在の企業はステークホルダーとの関係がこれまで以上に重要視されており、ステークホルダーからの評価が企業の存続に関わる大きなポイントである。
とりわけ上場企業はその傾向が年々高まっているであろう。人的資本経営の実行状況をステークホルダーに向けて公表・共有し、フィードバックを受けることで推進力強化に繋がることが期待できる。このように開示とフィードバックの繰り返しによって企業評価が上がっていくことがメリットの一つ目である。

(2)採用・育成・活躍・定着の人材マネジメント力の向上(=エンゲージメント力の強化)
人的資本経営は社外のステークホルダーのためだけに実行するものではない。
対象主体は常に自社で働く従業員である。人的資本経営の二つ目のメリットは人材に対する先行投資によって「採用・育成・活躍・定着」の4つに効果を生む点だ。
エンゲージメントと言い換えることもできるが、人的投資によって従業員一人ひとりの貢献意欲が上がり、生産性が上がり、その結果として業績向上に繋がっていくことが期待できる。
人材は企業競争力の源泉である。人的資本経営によって人材のモチベーション&クオリティを高めることができるのがメリットと言えるだろう。

人的資本経営の成功事例

人的資本経営の成功事例

ここまで人的資本経営の本質的価値やメリットについて述べてきたが、今後実行推進する上では他社がどのような取り組みをしているかは気になるポイントであろう。
そこで経済産業省が公表している「人材版伊藤レポート2.0~実践事例集~」を参照されると、先行成功事例を確認することができるので推奨したい。
一例として、同レポートでも取り上げられている丸井グループでは10年以上かけて社員一人一人の自主性を促す文化の醸成に取り組んできた。
人材版伊藤版レポート2.0で同社における人的資本経営の成功のポイントは、以下の三点に集約されている。

①「手挙げ」の文化を重視し、社員の自主性を重んじた配置・育成の人事システムを実装していること
②グループ間の職種異動などを通して多様な経験を積ませること
③多様性が活かされる組織を目指し、心理的安全性が確保された対話重視型の企業文化への変革を推進したこと

以上のことからも分かる通り、人的資本経営を成功させるためには、人材に関わる複合的な要素を連動感を持って実行・推進していかなければならない。
人的資本経営を推進する一歩目として上記のような企業事例を参考に、自社に取り込める施策を検討されたい。

さいごに

人的資本経営の今後の課題は、名ばかり人的資本にならないためのマネジメント力である。
具体的には、多くの会社が自社の人的資本に関する情報を公表し、かつ目標数値を掲げているが、掲げた目標数値を達成できていない企業が増えている。
売上・利益などの財務に関わる指標が未達であれば経営責任を問われる企業は多い一方で、人的資本指標が未達で経営責任を問われる企業は少ない。
そのため、人的資本の目標達成に執着しない企業が増えているのが実態だ。
人材への向き合い方・価値観が変わってきている。
真の意味で人的資本経営を実現すべく、トップと現場が一体となって本気で取り組み、その結果として企業価値と企業文化の向上を目指してもらいたい。

この課題を解決したコンサルタント

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
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