年齢で一律に処遇を決定するのではなく、本人の能力や貢献度合いにスポットを当て、単に制度が存在しているという状態から、生産性を高める仕組みとして構築する
高齢者雇用の現状について
総務省統計局が実施した調査によると、2022年の65歳以上の就業者は、912万人となり過去最多を記録しました。
15歳以上の就業者総数に占める割合は13.6%となり、就業者のおよそ7人に1人が高齢者となっています。
我が国では少子高齢化が進行しており、15歳~64歳の労働力人口が長期減少傾向である一方、65歳以上の労働力は増加していく見込みです。
また、近年は健康寿命が延びたことで、体力的に働くことができる期間が長くなっていることや、老後に求められる経済力が高まっていることから高齢者は働くことに対して意欲的です。
今後益々若手社員の採用が難しくなる中、ノウハウや経験値を持った60歳以降の社員がモチベーション高く働ける環境や仕組みを整備していく事は必然であり、企業の労働力を高める一つの手立てになると考えられます。
多くの企業が抱える悩みと解決ポイント
多くの企業で高齢者雇用の見直しを行おうともなかなか進めることができていない状態です。
高齢者雇用を阻害する課題とその解決策について、整理致します。
1. 多くの企業が抱える課題
多くの日本企業では、国からの助成金を受給することを前提に再雇用後の賃金が設定されているケースが多く、例え現役世代と同じ役割で会社からの支給賃金は減額になったとしても、国からの補助を踏まえると本人の年収水準は維持(もしくは微減)されていました。しかし、2020年4月1日に改正・施行されたパートタイム・有期雇用労働法により同一労働同一賃金が前提となり、現役世代と同じ役割で定年後賃金を下げる場合、法律に抵触する恐れが出てきます。
また、今後国からの助成金も縮小傾向であり、現役世代と同様の役割・職務内容にも関わらず賃金を引き下げることはこれまでと同じような納得感は得られず、定年後の社員に対して納得感を得られず、モチベーション低下を招きます。
2. 解決ポイント
解決ポイントとしては、現役世代と同様に職務・役割に応じた役割を設定し、役割に賃金をあてはめる人事制度を構築していくことにあります。職務や役割が変更になれば賃金水準を柔軟に変更できる制度にすることで、社員の貢献度に合わせた賃金の設計が可能となります。
また、人材不足の企業であれば一律に役割を下げることが難しい企業もありますので、同じ職務・役割であれば賃金は同水準、職務・役割を軽くするのであれば、役割に応じて賃金を再設定するといったように、定年後であっても複数のキャリアを選択できる仕組みにすることで本人の納得感を高める制度にすることができます。
高齢者を対象にした制度を構築していく上でポイント
高齢者の社員は新卒社員と比べて仕事との関わり方が多様化します。
例えばご家族の介護、本人の体調面、ワークとプライベートの時間の配分など自身でコントロールできることもあれば、アンコントロールな部分もあります。
年齢に関わらす貢献度や役割に応じて報いていく制度を導入するという事も大事ですが、高齢者社員に合わせた柔軟な働き方を許容していく環境や仕組みを整えていくことも重要となります。
時短勤務、週3日出勤、長期休暇取得など仕組みを整備しつつ、周りの現役世代の理解を促していくことが、高齢者の社員にとって働きやすい環境づくりへと繋がります。
さいごに
本コラムでは、高齢者雇用を促進・成功させるための人事制度の構築方法について紹介しました。
年齢に関わらず高齢者であったとしても、企業にとっての重要な労働力と位置づけ制度と環境の両面を改革・検討することが重要となります。
我が国において現役世代と同様に高齢者の制度についても、戦略人事の視点で検討を進めることが組織としての生産性を向上させることに繋がります。
ぜひ現役世代との繋がりも踏まえて検討していただきたいと思います。