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70歳定年制の導入を見据えた人材戦略

70歳定年の義務化を見据え、企業が取り組むべき人材戦略をご紹介

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70歳定年制の導入を見据えた人材戦略

経営目標達成に向け、高齢社員の役割を明確にすることがポイント

70歳定年制とは

70歳定年制とは

70歳定年制とは、定年退職制を導入している企業において、定年年齢を70歳に定める制度のことです。2021年に高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの雇用の確保が努力義務となったことをきっかけに、70歳定年について検討する企業が年々増えております。
内閣府「令和5年度高齢社会白書」によれば、65歳以上人口は3,624万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)は29.0%となりました。今後も少子高齢化により、労働力不足となることから、高齢者に活躍いただくことが、社会・企業にとってますます重要になってきます。
当コラムでは、70歳定年制の導入を見据えた企業が取り組むべき人材戦略を紹介します。

70歳定年制のメリット・デメリット

70歳定年制のメリット・デメリット

70歳定年制を導入するにあたり、会社視点と社員視点でのメリットとデメリットを整理します。

1.会社視点
(1)メリット
会社視点でのメリットは、経験豊富な社員を70歳まで雇用することにより、ノウハウ・スキルを維持できることです。これまでの経験を活かし、後進の指導や、労働力として企業への貢献をする中で技術が伝承され、組織としての経験値が蓄積されていきます。
また、65歳以降も継続して正社員雇用することにより、社会的責任を果たす姿勢のアピールにも繋がり、採用(特に中途採用)に有利になります。
(2)デメリット
会社視点でのデメリットは、平均年齢が上昇し、若手社員の活躍できる場が限定される可能性があることです。また、組織の新陳代謝が停滞し、年功的な人事制度の場合は賃金・社会保険料が高止まりすることになり、人件費を圧迫する可能性があります。

2.社員視点
(1)メリット
社員視点でのメリットは、70歳までの雇用保証により安定した収入が確保されることにより、長期間安心して働くことができることで、老後の生活設計が立てやすくなります。
(2)デメリット
社員視点でのデメリットは、体力や認知機能の低下などがあっても、自ら雇用区分の変更が言い出しにくいことです。

人材戦略の変革ポイント

人材戦略の変革ポイント

70歳定年制を導入するにあたり、人材戦略はどのように変革すべきでしょうか。
ポイントは以下の3点です。

1.定年延長に伴う役割の明確化
そもそも、人材戦略とは、企業の経営目標を達成させるための、人材面での戦略のことです。そのため、70歳定年制の導入にあたり、高齢者にも企業の経営目標達成に貢献する役割を担っていただく必要があります。後進の育成や、技術伝承、現場の第一線で働くなど、これまでの経験を活かせる役割を設定することがポイントになります。

2.役割に応じた報酬の設定
年功的な人事制度であった場合、定年延長に伴い人件費が高騰し続けることになり、企業の負担が大きくなります。そのため、役割を明確にし、その役割に応じた賃金を設定することが重要となります。

3.役職定年の検討
70歳定年制の導入にあたり、役職定年もセットで検討することを推奨します。役職のポジションが増やしづらいことや、少子高齢化の影響で中堅クラスの社員が増加したことで、限られたポストに同じ人材が長く留まるという事態が顕在化している企業が多い状態です。健全な組織の新陳代謝を促進し、若手社員が活躍する機会を提供するためにも、役職に定年を設け人員の滞留を解消する必要があります。

※役職定年については、「役職定年とは?役職定年後のキャリアプランニング」をご参照ください。

70歳定年制を成功させるための実践的なアプローチ

70歳定年制を成功させるための実践的なアプローチ

組織の仕組みとして、人材戦略の変革ポイントを紹介しました。そこで70歳定年制を成功させるために、1人ひとりへの実践的なアプローチはどのように行うべきでしょうか。
2点ご紹介します。

1.定期的な面談の実施
年齢を重ねるごとに、体力や認知機能が衰えてくることは避けられません。また、本人やご家族の事情から、労働意欲が低下することも想定されます。それぞれの社員によって、仕事への関わり方に差が出ることを前提にする必要があります。そのため、定期的に面談を実施し、健康状態や仕事への意欲について認識を合わせることが重要です。

2.柔軟に働くことのできる職場環境づくり
シニア社員は若手社員と比べ、家族の介護や健康状態の変化等、働く上での制約が増えるため、多様な働き方を求めます。そのような環境で役割を最大限発揮するために、週休3日制や時短勤務など、複数の働き方を許容できる環境が重要となります。
70歳定年制に向けては処遇決定ルールだけではなくぜひ働き方についても目を向けていただきたいです。

まとめ

70歳定年制の導入を見据えた人材戦略について説明してきました。ただ単に定年年齢を70歳に引き延ばすのではなく、経営目標達成に向け、高齢社員の役割を明確にすることです。また、役割を発揮するために、働きやすい環境を整備することで、高齢者のみならず、多様な背景を持つ社員が活躍できる組織作りへと繋がります。
本コラムが、企業と高齢社員の双方にとって、良好な関係で活躍することに繋がれば幸いです。

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