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固定給と歩合給の効果的な組み合わせ

~賃金制度に歩合給を組み込むポイント~

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固定給と歩合給の効果的な組み合わせ
固定給と歩合給の違い

固定給と歩合給の違い

近年、採用難の時代において貢献度の高い社員や、社員の目標達成意欲を高めるために歩合給の導入について検討する企業が増えている。歩合給とは本人の売上や成果に応じて給与が決まる成果報酬型の賃金制度である。この制度はタクシー業界や保険営業、不動産販売業など個人の努力が業績に影響しやすい業界などで採用されている。本コラムでは歩合給の効果的な組み合わせ方や導入ステップについて紹介したい。

固定給と歩合給のメリット・デメリット

歩合給を検討する際には、まず固定給と歩合給のメリット・デメリットについて比較することが重要である。固定給は毎月決まった金額が支給されるため安定しており、生活設計などもしやすい。一方で成果は評価制度により昇給や賞与に反映されるが、売上が直接賃金に反映されるわけではないため、賃金の差がつきにくい傾向がある。
歩合給は売上や成果に基づき給与が支給されるため、社員の努力が報酬に結びつきやすく、社員のモチベーションに繋がりやすい。また、年齢や経験に関わらず賃金に反映されるため、特に優秀な社員にとっては大きな報酬に繋がる可能性もあり魅力的な制度である。一方、収入は売上に依存するため不安定になりやすく、チームワークや長期的な目線でキャリアが育まれにくいことが課題である。

固定給と歩合給の効果的な組み合わせ方

「固定給」+「歩合給」を組み合わせる場合、一般的に「固定給」は低めに設定し、歩合給によって差を設けることが一般的である。しかし、法律上最低賃金以上の賃金を保証する必要がある。その為、「固定給」と「歩合給」を組み合わせる場合は、モデル賃金から「固定給」と「歩合給」のバランスを考えることが重要である。例えば営業職の場合、成果の発揮度合いを高い・標準・低いと3パターンにわけ、それぞれのモデル賃金から逆算して歩合給の金額を設定する。扱う商品によってすぐに成果が出るものか、時間がかかるかなども配慮し、社員がモチベーション維持しながら取り組めることが大切である。

歩合給制度を取り入れる際のステップ

歩合給制度を取り入れる際のステップ

現行の賃金制度に歩合給を組み込む方法は以下の通りである。

1.現状認識

まず自社の現状を認識した上でなぜ歩合給を組み込むのか目的を整理することが重要である。労務費の割合や社員の成果に対し還元できているか、業績目標などを整理し、歩合給を導入することで何を実現したいのかを整理する。注意すべき点として、会社の利益を優先することや、成果の低い社員の賃金を下げるなど不利益変更することはできない。「歩合給」を導入することが社員のモチベーション向上に繋がることを前提にあるべき姿を考えることが重要である。

2.目標設定

歩合給を設定する上で何を指標にするのかを明確にする必要がある。売上・利益・契約件数・達成率など何に基づいて支給するのかを設定する。また目標は達成可能なものかは検討が必要である。非現実的な目標設定は逆に社員のモチベーションを下げる可能性がある。

3.支給ルールの決定

歩合給の支給ルールは大きく以下の3つのパターンに分類できる。

①売上金額に対して支給(売上の〇%を社員に還元する)
②利益に対して支給(利益の〇%を社員に還元する)
➂契約件数に対して支給(1件の契約に対して〇円社員に還元する)
④複数の条件を組み合わせたポイント制で支給(商品やサービスによってポイントを設定し、ポイント合計に応じて支給する)

また最低賃金を保証するため、固定給にあらかじめ歩合給の見込み金額を組み込み、見込み(基準)を超えた分を支給するなど条件を設定する方法もある。ルールを可視化することで、公平性・納得性のある制度にすることが重要である。

4.社員への説明・移行期間の設定

社員を採用する際に雇用契約を結んでいるため、企業から一方的に労働条件を変更することはできない。そのため、歩合給を導入する際には社員へのヒアリングと丁寧な説明により社員の理解を得ることが大切である。改定する目的や算出方法など不利益にならないことを説明し、トラブルを回避するためには社員向けの説明会を開催し、給与改定通知書や個別に同意書を取得するなど手続も検討したい。
また、万が一賃金が下がるなど不利益がでる可能性がある場合、一定期間は現行の賃金を保証するなど移行期間を設けることもトラブルを回避する一つである。

さいごに

賃金制度を改定する上で一番大切なことは、制度改定を行うことで社員のモチベーション向上につながることが重要である。賃金が上がることは一時的にモチベーションアップにはつながるが、長く続くものではない。タナベコンサルティングでは賃金制度の改定と合わせて、成果を上げた社員を賞賛する文化や非金銭的な報酬(トータルリワード)など社員が頑張り続けられる環境整備を推奨している。そのためには成果を出すための日頃からのコミュニケーションや上司からのフィードバックなども取り組んでいただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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