人事課題解決ノウハウ
人事制度

製造業で成功する賃金制度構築とは

生産性やモチベーションを上げる上で必要な賃金制度。適切な目標設定は?どの観点で目標を設定するべきかを考える。

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製造業で成功する賃金制度構築とは
製造業における人事制度の現状

製造業における人事制度の現状

2024年2月に紹介したコラムでは、製造業における人事制度の重要性から始まり、製造業の人事制度課題について5つ挙げた。(①年功型賃金・終身雇用制度、②技術伝承の遅れや他社への流出、③残業問題、④職務広範囲、⑤目標・成果の設定に関して)

今回、改めて業界変化の大きい「製造業」に絞って、成功する人事制度について考えていく。

人事制度は従来の年功序列型から、成果主義や職務給を取り入れる企業が近年増加している。

特に中堅・大手企業では、個人の業績やスキルに応じた報酬体系を導入し、優秀な人材の確保とモチベーション向上を図る動きが顕著である。

一方、中小企業では、従来型の年功序列を維持するケースも多く、賃金制度の見直しが進んでいない企業も散見される。
また、働き方改革の影響で、成果やプロセスを評価する仕組みが一般的になってきている。

成功する人事制度の要素

成功する人事制度の要素

大きく2点挙げる。
1点目は、適度な成果主義の導入である。
賃金制度が変化する背景には、働き方の多様化(働き手)が大きく影響しており、共働きなどによる短時間勤務労働者(子育て世帯)もフラットに評価される仕組みが必要である。
長時間勤務が正義とされてきた以前の労働環境から、限られた時間で生産性を生み出す「成果主義」への移行に企業側も適応していく必要がある。
よって、有限(1時間当たりなど)の中で労働生産性を評価する観点が重要である。

2点目は、スキルマップとの連動である。スキルマップは従業員の技術や知識の可視化し、個々のスキルを客観性高く把握することができる。スキルマップを活用することで、従業員の成長目標を明確化し、スキルアップを促進するインセンティブを提供が可能となる。その結果、従業員のモチベーション向上や生産性の向上にも寄与する。

製造業・賃金制度構築の成功事例

製造業・賃金制度構築の成功事例

新潟県内の機械製造業で、人事制度の活用が上手く進んでいる企業を紹介する。
設立50年以上の老舗企業で、従業員200名弱の中小~中堅層の企業である。
元々、下記2つの問題があった。

①考課者の目線合わせがされておらず、公平性に欠けていた
②具体性に欠けていたため、モチベーションアップへ連動しない

その問題に対して、下記の3点を趣旨目的とし、人事制度の策定を行った。

①各人のレベルアップと人材育成面の連動
②各人のスキルを客観的に把握し、仕事の成果と報酬を結び付ける
③働く社員にとってわかりやすさを重視し、透明性かつ公平性のある制度設計

設計する上でのポイントは、スキルマップの活用である。
上期と下期の2回の査定のうち、通期共通項目は成績評価、情意評価であり、下期評価のみ「能力評価」を設定した。これをスキルマップの達成状況と連動させ、考課を行った。
評価を行う考課者の負担とスキルを習得するまでの期間を鑑み、半期ごとではなく1年で設定する。
どのスキルに設定するかについて、広範囲ではなく1~2点程度のスキルに絞る。
また翌期は、別のスキルを設定し、それを繰り返していき、確実にスキルを習得させていく「小さな成功体験」を故意的に作る。
これもモチベーションを上げる上で重要な観点である。

よくある課題とその解決策

よくある課題とその解決策

上記で述べた「能力評価」を導入する製造会社が増えており、従来の評価方法からのアップデートが進んでいる。
一方「能力評価」を行う上で、スキルマップの作成と従来人事評価制度からの切り替えは次点での課題となる。
スキルマップの作成に関しては、細かな業務の棚卸と、各等級で求めたいロールモデルを定めることが必要である。
また、現在運用中の人事制度から新たな人事制度へ移行する際、いきなり「能力評価」の割合を増やしてしまうことで、 「能力評価」で計り知れない貢献をしてくれて来た方々(特にベテランが多い)へ正当評価が行えない懸念がある。
よって、各企業ごとで現在運用中の人事制度から遜色なく段階的に運用を変えていく工夫が求められる。

まとめ

時代の変化に伴い、製造業も大きな変化が求められている。人手不足が深刻な現在、DXによる業務の省人化は進んでいるものの、まだまだ人間でなければ務まらない業務領域が多数ある。その中でいかに生産性を突き詰めながら、働き甲斐(働きやすさ+遣り甲斐)をもって働けるかは企業側の責務であり、その一つが「人事制度」であると考える。多様な働き方を受け入れつつ、従業員の労働力を最大限に引き上げる雇用環境を、各企業ごとがオーダーメイドで作り上げていくことが今後も求められていくだろう。

この課題を解決したコンサルタント

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