企業のありたい姿やビジョンを元に人事制度に反映させることで、明るい未来へ繋げる。

製造業における人事制度の課題について
製造業における人事システムは高度経済成長期以降多くの企業でみられた日本的雇用システム(年功的賃金制度・終身雇用制度・企業内組合)を中心に設計されており、現代においても多くの企業でそのシステムは残っている。しかし、今の働き方とは馴染まず納得性が担保出来ていないのが実情である。例えば、年功的賃金制度について日本は超高齢社会に突入している中、労働市場において相対的に若者の価値が上昇していることや、製造業の業務内容もオペレーションだけではなく専門性や新たな価値を生み出す能力が求められるようになっていることから単に年齢を積み上げることで身につく能力・スキルばかりでは無くなっている。そのため、旧来型日本的雇用システムを前提とした人事制度の運用では今後益々社員の納得感が失われていくことが推察される。
本コラムではそういった背景も踏まえ、製造業における人事制度再構築のポイントについて解説していく。

人事制度再構築の検討ステップと再構築のポイントについて
まずは人事制度再構築のステップについて紹介する。
STEP1:人事ポリシーの明文化
人事ポリシーとは人や組織に対する考え方を明文化したものであり、人事制度の根幹となるものである。
人事に関する現状課題を踏まえ、どのような組織を実現していくのか、社員にどのように成長して欲しいのかを明文化し、制度のコンセプトについて明確にしていただきたい。
STEP2:人事フレーム(キャリアパス)の再設計
人事フレーム(キャリアパス)とは等級、職種、役職の関係について明確にし、社員がどのようにステップアップする事ができるのかを表したものである。多くの製造業では管理職になる事を前提とした単線型人事フレームにて設計されているケースが多く見受けられるが、これからの組織のあり方を踏まえると高度専門人材や高い専門性を持った人材がステップアップできる複線型人事制度を推奨する。
STEP3:評価制度の設計
人事フレームにて設計した等級や役職に基づき、それぞれの役割要件を明文化し、役割に応じた評価項目を設計する。
役割要件の内容に応じて、能力を基準にした評価項目と成果に応じた評価項目のバランスを踏まえ再設計することを推奨する。
単に身についた能力を評価するのではなく、+αの成果や貢献度に応じて評価をしていく仕組みとしていくことが重要である。
STEP4:賃金制度の設計
年齢給や勤続給など年数に基づく賃金を廃止もしくは支給対象範囲の狭めることで年功的賃金制度から脱却いただきたい。
評価結果に基づき成果や組織への貢献度に応じて適正に分配する仕組みへと設計し、頑張った方が報われる制度へ再設計いただくことが納得性を高める。

運用面における課題について
人事制度の本質的な価値は制度そのものではなく、運用を通じて社員の納得性を高め上司(評価者)がどれだけ部下(被評価者)の成長(評価)にコミットできるかが重要である。しかし、これまでの製造業における人事システムを踏まえると実際に部下の働きぶりを見ていなくとも年齢など一律で評価することが出来ていたが、部下の成果や貢献度合いを軸にした評価制度を導入し、適切な評価をつけるとなると評価者のレベルアップは必要不可欠となる。評価スキルを身に着けてもらうためには継続的な評価者研修を通じて、評価者としての役割を認識し、正しく部下を見る目線を育むことが必要となる。ぜひ運用のイメージも持ちながら進めていただきたい。
最後に人事制度を再構築する上で重要なのは今後経営していく上で必要な人材が成長し、活躍できる仕組みになっているかどうかである。
改めて制度における課題を認識し、企業としてのありたい姿やビジョンから人事制度に反映させることで、企業の成長へと繋げていただきたい。
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
チーフコンサルタント山本 幸生
人材業界にて、製薬・食品・化学業界から公的機関・大学まで、約100社の採用課題の解決支援を行う。また、マネジャーとして、業務オペレーション改革を実施したのち、当社に入社。「社員全員が満足して働ける会社づくり」を信条に、企業成長と社員満足度向上の両立を目指したコンサルティングを行う。
- 主な実績
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- 人事制度再構築コンサルティング(小売業、冠婚葬祭業、卸売業、製造業 など)
- 採用コンサルティング(インフラ業 など)
- 幹部人材育成支援コンサルティング(製造業 など)
- 管理職人材育成研修、新入社員教育研修(製造業、小売業、卸売業 など)