人材採用を人事部の課題として捉えるのではなく、
経営課題として位置づけ全社で取り組む

採用ブランディングとは
採用ブランディングとは、自社のブランド価値を高めることで採用活動に活用する戦略である。
類似する用語で採用マーケティングがあるが、採用マーケティングは求職者へのアプローチを戦略的に行う短中期的な手法なのに対し、採用ブランディングは社内外に向けて自社ブランドを広く浸透させることにより自社のファンを増加させ、結果として採用者数を増加させる手法である。
採用マーケティングは単なる採用活動に留まらず、企業のブランド価値を高めるための長期的な取り組みと言えるだろう。
これらの違いを踏まえたうえで、自社に適切な戦略を実行していただきたい。

採用ブランディングに取り組む必要性・メリット
多くの経営者・採用担当者が直面している通り、現在の労働市場は労働力不足や価値観の多様化かつ転職市場であり、優秀な人材の確保が難しい環境下にある。
会社を発展させていくためには人手の確保が必須であり、採用活動に力を入れること言うまでもない。
人材確保にむけ採用ブランディングに取り組むことで、企業競争力を高め、求職者から選ばれる確率を上げることができるのである。
採用ブランディングに取り組むメリットとして、以下が挙げられる。
(1)自社の認知度向上、ライバル会社との差別化
(2)採用数の増加(応募者増加、選考辞退率低下)
(3)採用ミスマッチ低下による退職率の低下
(4)自社の魅力の再認識を通じて既存社員のエンゲージメント向上による退職率の低下・生産性の向上
(5)採用コストの削減
自社のブランドイメージが浸透することで、認知度が広がるとともに差別化が期待できる。
また、求人媒体に力を入れずとも求人への応募数が増えるとともに、自社を理解している求職者が応募をしてくるため、選考辞退率や入社後のミスマッチの低下に繋がる。
加えて、社外に発信している内容は社内にも波及し、既存社員に対するブランディングに繋がることから帰属意識の向上やエンゲージメントの向上が期待できる。
採用ブランディングは求職者の増加と定着率の向上により採用コストの削減にも繋がるのである。

採用ブランディングの具体的な方法と注意ポイント
採用ブランディングは単に取り組むのではなく、以下の内容を押さえる必要がある。
(1)自社の現状分析
採用課題の明確化(3C分析、SWOT分析などのフレームワークを使用すると取り組みやすい)、MVV等の上位概念の明確化を行い、自社の強み(発信すべき内容)を認識する。
(2)ペルソナ(採用したい人物像)の設定
具体的な人物像がイメージできるまで具体化し、ターゲットを明確にする。
(3)情報発信方法の選択と一貫した情報提供
自社サイト、ナビサイト、SNS、イベントなど、どの情報をどの媒体で発信していくかを選択する。
また、複数の媒体で発信する場合は導線なども意識し、一貫したブランディングになっているかについても確認いただきたい。
(4)取り組みの振返り
採用におけるKPI(母集団数、エントリー数、採用通貨人数、歩留まり率など)を設定し、
ブランディングの効果について定点的に振り返ることができる仕組みについても検討する必要がある。
また、ブランディングを推進する際に注意すべきポイントは以下である。
(1)採用担当者だけでなく、全社の取り組みとして位置づける
採用担当以外の社員も巻き込むことにより、より多角的な視点で求職者にアプローチ出来る。
加えて、自社の良い部分を社員が認識することにより、インナーブランディングにも繋がる。
(2)長期的な目線で取り組むこと
ブランディングの効果が現れるまでには時間がかかるため、短期の成果を求めてはならない。
継続して取り組む覚悟が必要である。
(3)必要以上に良く見せすぎない
長年同じ組織に所属していると良い点について盲目的になってしまうことや、採用市場の激化により、
求職者に受けるように必要以上に良く見せようとするケースは少なくない。
ただ、間違った採用ブランディグは人件費の増加や早期退職に繋がる。
今一度自社の魅力について客観的な視点により他社と比較することや社員への聞き取りなどを通じて現状のブランディングしていく要素について洗い出すことから進めていただきたい。
まとめ
求職者に選ばれる会社となるには、自社の魅せ方にこだわることは非常に重要である。
わが社にはアピールできるポイントはない、という企業を見かけることがあるが、多くの企業には優れている点が存在している。そこに気がつくか気がつかないか、アピールするかしないかで、将来の採用力は大きく変化することを認識いただきたい。ぜひこの機会に自社を見つめ直し、採用ブランディングを通じて、あるべき人材に適合する採用に繋げていただきたい。
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
チーフコンサルタント山本 幸生
- 主な実績
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- 人事制度再構築コンサルティング(小売業、冠婚葬祭業、卸売業、製造業 など)
- 採用コンサルティング(インフラ業 など)
- 幹部人材育成支援コンサルティング(製造業 など)
- 管理職人材育成研修、新入社員教育研修(製造業、小売業、卸売業 など)