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成長M&AとM&A戦略の立案事例

2024.07.23

成長M&A


タナベコンサルティングでは、M&Aを企業価値向上のための重要な経営技術と位置付けている。長らくデフレだった外部環境がインフレへと変化し、高金利・高賃金と相まって「変化」への対応力が求められている。コスト削減による利益創出から、投資をし、付加価値を高めるモデルへの転換が必要であり、短期間で変化を実現するためには、M&Aを駆使することは必須である。ビジネスモデルを転換させ、短期間で業績向上に寄与し、企業価値を向上させるM&Aを「成長M&A」と読んでいる。この成長M&Aを自社に取り入れるために「M&A戦略」を構築する必要がある。M&A戦略構築の概略については既に述べたが(コラム「M&A戦略の必要性と立案方法」をご参照)、本コラムでは、M&A戦略の具体的な立案方法について事例を交えて見ていきたい。

M&A戦略の立案事例(構造分析→構造設計)


M&A戦略の立案事例を一つ紹介しよう。


【立案企業】

対象企業は、年商800億円の卸売業である。創業50年の企業であるが、直近はグループ企業関連の売上が高く、外販売上が伸び悩んでいる状況であった。グループ外の企業との取引を増やし、成長させていくための手法としてM&Aの検討を開始した。


【立案ステップ① 構造分析】

まずは対象企業の現状を把握するところから始めた。「構造分析」として、現行の長期ビジョン・中期ビジョン・中期経営計画のレビューを実施し、成長率や利益の変遷を調べた。また、事業戦略を確認し、計画期間中の進捗状況を整理した。その後、ポジショニング分析を実施し、対象会社の強み・弱みを見える化し、今後伸ばしていきたい事業領域(セグメント)をスクリーニングした。
併せて、M&Aに関連する機能の分析も行った。例えば、①投資余力、②これまでの投資に関するリターン(投資効果)のまとめ、③投資の意思決定フローである。M&A=投資であり、資金や投資の意思決定にかかるスピードも重要な要素である。対象企業は、案件を検討する際に全てのフェーズで社長確認としていたため、担当の役員を設定して担当者→役員→社長の順で要点を絞り込めるようにできないかを検討した。


【立案ステップ② 構造設計(参入戦略)】

次に「構造設計」である。構造設計では、構造分析で把握した狙う事業領域をもとにポートフォリオを再設計するフェーズである。狙う事業領域の中身を具体化するため戦略オプションの検討と事業別の数値計画を設定した。こうすることで、現状と将来の目指すべき目標との定量的なギャップが明確になった。同時に事業ごとの攻め方(参入戦略)を明確にした。
M&A戦略構築においては、M&Aを活用することを前提に事業戦略を設計してはならない。M&Aはあくまでも戦略を実現するための手段である。事業によっては、自力(オーガニック)で成長させる方が効果的な場合がある。一方で、M&Aやアライアンス(ノンオーガニック)を活用した方が立ち上げや成長スピードが早まる場合がある。参入戦略を検討することが事業戦略の実現においては重要なポイントとなる。
構造設計の中で、M&Aの推進体制も決めておく必要がある。構造分析で実施した機能分析の内容を活かして、案件があがってきたときの意思決定のフローを設定した。役員がある程度固めて、社長確認に回せるようにした。また、株主や利害関係者への説明資料の土台もあわせて作成し、スピード感が上がるようにした。


M&A戦略の立案事例(構造分析→構造設計)

M&A戦略の立案事例(構造設計→具体化・実行)


【ターゲットの具体化】

戦略部分が固まったら、戦略に合致する具体的な企業リストの作成である。M&Aのポイントの一つに「戦略の実現可能性」がある。戦略を詳細に検討すればするほど、それに合致する企業が現実に存在するのか、ということが課題になる。対象企業においてもニッチな事業領域については、具体的な企業リストを作成することが難しかった。そこで、ターゲットの条件を詳細にしすぎていないかを再検討した領域もあった。
M&Aで伸ばすと決めた事業に関しては、ターゲットの条件を設定し、それに合わせてターゲットリストを作成した。条件に凡そ当てはまる企業をリスト化したロングリストから、より適合性の高い企業に絞り込んだショートリストの作成へと進めていった。その際には、エリア・成長性・利益率・主要取引先・経営者の年齢等の項目をもとに絞り込みを図った。


【アプローチ】

最後に、M&Aではなく事業開発を選択した事業領域については、新規事業開発という形で事業計画を決め、自力開発をスタートさせた。このようにM&Aと自力開発を並行して実施することで事業推進に空白期間を作らないような工夫を実施した。M&A戦略構築では、事業戦略→M&A・新規事業開発のような形で繋げていくことが一つのパターンである。

このコラムの執筆者
丹尾 渉

丹尾 渉

執行役員
M&Aコンサルティング事業部長

2017年からM&Aコンサルティング本部の立上げに参画。M&A戦略構築からアドバイザリー、PMIまでオリジナルメソッドを開発。その後5年間で延べ80件以上のM&Aコンサルティングに携わる。「戦略無くしてM&Aなし」をモットーに、大手から中堅・中小企業のM&Aを通じた成長支援を数多く手掛けている。

主な実績
  • 上場企業の新規事業開発を目的とした譲受側M&Aアドバイザリー
  • 上場企業子会社の事業戦略からM&Aまで一貫性を持たせた戦略構築
  • 上場企業子会社の買収調査のためのビジネスDD、財務DD、労務DD
  • 中堅企業の事業ポートフォリオの転換によるビジネスモデル変革支援
  • M&Aを初めて実施した中堅企業のPMI支援
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