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M&Aにおける譲渡価格の算出方法

2022.11.17

近年、後継者未定の企業の選択肢としてM&A・事業承継が広がりつつあります。M&Aや事業承継を検討している方の中には、自社の譲渡価格がどれくらいになるか気になっている方も多いのではないでしょうか。

譲渡価格の算出は単純に「利益の何倍」といった目安はなく、利益はもちろん、企業の将来性や所有している資産(不動産や土地、有価証券等)など多くの要素を加味して計算する必要があります。

そこで今回は、実際にM&Aや事業承継で用いられる譲渡価格の算出方法をご紹介するとともに、もっとも重要視される方法となぜその方法が重要なのかについて解説します。


中堅・中小企業の企業価値評価について


一般的に非上場株式の価値算定には大きく3つの方法があると言われています。
1つ目はコストアプローチ(純資産方式)という考え方です。決算書の貸借対照表の純資産はあくまでも簿価の純資産です。一般的には簿価の純資産を時価の純資産に修正して評価します。
2つ目はインカムアプローチ(収益還元法)と言われる手法です。これは企業の収益力に着目した方法となります。将来生み出される収益力(キャッシュフロー)を算出しますが、この手法はあまり中堅・中小企業のM&Aでは用いられません。なぜならば、企業の将来にわたって生み出す収益力を算出するため、企業の将来性を加味した分析を行う必要があるからです。
3つ目はマーケットアプローチ(市場株価法)という手法です。マーケットとは市場であり、マーケットアプローチとは市場が決めた企業価値を参考にして企業価値を算定する方法です。つまり出来るだけ業種の近い企業を選定し、その企業の株価を参考に対象企業の株価を算出します。


中堅・中小企業の企業価値評価について|M&Aにおける譲渡価格の算出方法

どの企業価値評価が重要なのか


結論として中堅・中小企業の企業価値評価で最も重要な手法はコストアプローチです。なぜコストアプローチが重要視されるのか?それは第三者からも分かりやすい内容だからです。
コストアプローチの一番重要な要素として、簿価純資産を時価純資産に修正します。具体的には、企業の資産勘定をすべて時価評価に修正します。分かりやすい項目としては、預金です。預金は金融機関の残高証明書もしくは通帳のコピーがあれば、誰でも客観的に把握できます。内容を大きく左右する項目としては会社の不動産です。不動産についても、厳格な価格算定を行う場合は不動産鑑定士による不動産鑑定評価を取得することをおすすめしますが、土地周辺の路線価や固定資産税評価額をもとに簡易的に算出することが可能です。このようにすべての資産勘定の時価を洗い出し、負債を除いたものが時価純資産となります(厳密にいうと負債も時価評価を行います)。
このコストアプローチは、インカムアプローチやマーケットアプローチと比較するとM&Aに慣れていない方々にとっても分かりやすい内容となります。したがって、中堅・中小企業の価値算定ではコストアプローチが一般的に使用されます。


どの企業価値評価が重要なのか|M&Aにおける譲渡価格の算出方法

譲渡価格と企業価値について


企業価値と譲渡価格は一致しないことがほとんどです。なぜかというと譲渡企業様のオーナーは企業価値=時価純資産+営業権(のれん代)と考えている場合が多く、またその企業価値を適正な譲渡価格であると考える傾向があります。したがって、コストアプローチで捉えた企業価値と、譲渡企業様のオーナーの考える営業権(のれん代)を上乗せした譲渡価格には乖離が生じます。さらにのれん代は譲渡企業様と譲受企業様それぞれ考えがあり、双方協議の上、譲渡価格が決定されるケースがほとんどです。
譲渡価格や企業価値評価にお困りの際は、是非専門家にご相談を頂きたいと思います。

まとめ


いかがでしたでしょうか。
今回は譲渡価格の算出方法についてご紹介しました。譲渡企業側のオーナー様はなるべく高く売却したいと考えるのは当然のことです。今回ご紹介した算出方法を参考に、取引が進む中で「予想していた譲渡価格と違う」など想定外の事態を避け、より良いM&A・事業承継を実現しましょう。


このコラムの執筆者
三谷 博孝

三谷 博孝

M&Aコンサルティング事業部
チーフマネジャー

銀行にて法人営業に従事した後、事業承継の課題に取り組むためM&Aを志し、当社に入社。「クライアントに寄り添い、企業繁栄に奉仕する」をモットーに、中堅中小企業へ向けた譲渡案件の受託交渉から、企業価値評価、企業概要書の作成、買手企業とのマッチング及び条件交渉等のM&Aアドバイザー業務を担当。年間5件以上の成約を手掛ける。

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  • 自動車部品卸業の譲受側M&Aアドバイザリー
  • 菓子製造業会社の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 地場建設業の譲渡側・譲受側のM&Aアドバイザリー
  • 建設資材製造業の譲渡側のM&Aアドバイザリー
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