研修で組織カルチャーを育み、企業の持続的成長を実現

企業研修の目的
近年、超少子高齢化が進行し、働き手の減少が顕著になっています。このような状況下で、「人的資本経営」という概念が注目を集めています。企業にとって人材は最大の資本であり、企業の存続と成長に不可欠な存在です。
私たちが目指すべきは、人材を育成し、その価値や能力を最大限に引き出し、組織全体の成長を促進することです。そのためには、効果的な企業研修が重要な役割を果たします。
企業研修の主な目的は、以下の3つに大別されます。
①スキルアップと知識の向上...研修を通じて、社員は自身の職種における専門性を高め、業務効率を向上させることができます。これにより、企業全体の競争力を強化し、組織文化の向上にも寄与します。
②キャリア形成の支援...研修を通じて、社員は自身のキャリア目標を明確にし、それに向けたスキル習得の機会を得ることができます。長期的な目標達成に向けた道筋を示すことで、社員のモチベーションが向上し、離職率の低下にも寄与します。
③組織風土の醸成...研修を通じて、社員同士のコミュニケーションを促進し、組織の一体感を高める効果があります。特に、異なる職種や役職の社員が共に学ぶことで、部門間や世代間の連携が強化され、組織風土がより豊かになります。また、経営理念などを研修内で共有していくことで、社員の向くべき方向を揃えることが可能になります。
※組織風土...企業の日常的な雰囲気や働き方、社員の行動様式のこと。
日常の業務を通じて感じている企業の「空気感」とも言えます。
組織文化...企業内で共有されている価値観や信念、企業の根幹を成す理念や行動規範のこと。
企業の長期的な方向性や戦略に深く関わり、社員の行動や意思決定に影響を及ぼします。
今回は特に③に注目し、風土形成において欠かすことのできない組織文化により良い影響を与える企業研修についてお話しします。

育つ力、育てる力、育む力
企業における教育・研修の考え方の一つは、「育つ力・育てる力・育む力」です。この考え方は、社員の成長を促進し、組織全体の風土を醸成するための基盤となります。
育つ力は、社員が自発的に行う自己啓発意欲や向上心のことを言います。研修を通し、学びの風土を根付かせ、社員の成長意欲を高めることが重要です。育てる力は、上司の指導力や研修の仕組み・機会提供です。部下が一人前になるために必要な条件を整備し、子育てのように部下を「自立」させていく必要があります。
今回特に重要なのは「育む力」です。育む力は、企業が育成社風や風土を形成し、育成方針を明確にすることに関連しています。人が育つ「良質な企業風土」を醸成するのは、時間も手間もかかるものであり、その企業風土は企業の歴史、トップの哲学、事業内容、業界特性によって形成されていきます。人を育む土壌形成こそが最重要ポイントとなります。企業が育成に対する明確な方針を持ち、社員が成長できる環境を整えることで、組織全体の風土が強化され、社員の成長を促進することが可能になります。

企業研修が組織文化に影響を与えるまでの3ステップ
企業研修が組織文化に大きな影響を与えるプロセスは、以下の3つのステップで構成されます。このプロセスを通じて、企業研修は組織文化を向上させる重要な手段となります。
【ステップ1:価値観とビジョンの共有】
研修は、企業の価値観やビジョンを社員に伝える重要な手段です。研修プログラムを通じて、企業が大切にしている経営理念やパーパスを明確にし、社員に共有することが最も重要です。これにより、社員は企業の方向性を理解し、日々の業務においてそれを実践することが求められます。価値観の共有によって、組織全体の一体感が醸成され、共通の目標に向かって協力する基盤が築かれます。
【ステップ2:行動規範の形成】
研修を通じて、企業は望ましい行動規範や業務プロセスを社員に教える必要があります。これには、経営理念に基づく判断基準やコミュニケーションの方法、問題解決のアプローチが含まれます。社員がこれらの行動規範を理解し、実践することで、組織内での一貫性が生まれ、結果として組織文化が強化されていきます。
【ステップ3:イノベーションとエンゲージメントの促進】
研修は、新しいスキルや知識を社員に提供するだけでなく、イノベーションを促進する場でもあります。異なるバックグラウンドを持つ社員が集まり共に学ぶことで、多様な視点からのアイデアが生まれやすくなります。さらに、研修を通じて社員が自身の成長を実感できる環境を提供することで、エンゲージメントが向上します。社員が企業に対して高い帰属意識を持ち、積極的に貢献しようとする姿勢が組織文化にポジティブな影響を与えます。
実際に、宮城県仙台市のとある老舗企業では社員の定着率も低く、経営状態も厳しい課題が山積みな状況から、将来を見据えて人を育てようと企業研修に力を入れた結果、顕著な成長を遂げました。同社は、経営理念や行動規範などを共有するために、価値観と人間力向上のための研修プログラムを充実させました。対話に重点を置いた内容で、心理的安全性も高まり、社員のエンゲージメントが向上、組織全体の一体感が強化されました。結果として、新たなブランドやサービスが誕生し、業績が大幅に向上、地域社会においても高い評価を得る企業へと成長しました。
このように、企業研修は価値観の共有、行動規範の形成、そしてイノベーションとエンゲージメントの促進を通じて、組織文化に大きな影響を与えていくことになります。
企業研修が成功する3つのポイント
企業研修を成功させるためには、社員のスキルアップ以外にも以下のような工夫が重要です。
①価値観とビジョンの共有...研修プログラムに企業の価値観やビジョンを組み込むことが非常に重要です。社員が企業の価値観やビジョンを理解することは、組織全体の一体感を高め、共通の目標に向かって協力するために不可欠です。具体的な方法としては、企業の歴史や創業者のビジョンをストーリーとして伝えることや、価値観やビジョンに関するワークショップを開催することが挙げられます。
②チームビルディングとコミュニケーションの促進...研修の一環として、対話を重視したチームビルディング活動を図るプログラムを取り入れることが重要です。これにより、社員同士の信頼関係が強化され、部門間の連携がスムーズになります。結果として、組織風土の醸成に繋がり、社員が協力して目標を達成する環境が整います。
③リーダーシップ開発と継続的なフィードバック...組織の文化や価値観を体現するリーダーを育成するための研修を実施します。リーダーが模範となることで、組織全体にその文化や価値観が浸透しやすくなります。また、研修後の継続的なフィードバックを通じて、社員の成長をサポートし、組織の価値観に沿った行動を促進します。
これらのポイントを押さえることで、企業研修は社員のスキルアップやキャリア形成に貢献し、同時に組織全体の文化や価値観に深く影響を与えることができるます。効果的な研修プログラムは、持続的な成長を支える重要な要素です。
さいごに
企業における教育・研修は、社員のスキルアップやキャリア形成にとどまらず、組織全体の文化や価値観に深く影響を与える重要な要素です。成功する研修には、価値観とビジョンの共有、チームビルディングとコミュニケーションの促進、リーダーシップ開発と継続的なフィードバックが欠かせません。効果的な研修を行うことで、社員は自身の成長を実感し、企業へのエンゲージメントが向上します。結果として、企業は競争力を高め、持続的な成長を実現することができるでしょう。ぜひ一度、これまでの企業研修を見直し、企業の組織文化を向上させる研修制度を構築していただきたいと思います。
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