人事コラム

コンサルタント一問一答人事制度・人事処遇制度

役職と等級を分ける理由とは?
効果的な人材配置・運用方法についても解説

企業に合った人事制度構築を通し、社員の更なる活躍を促進させる

企業に合った人事制度構築を通し、社員のさらなる活躍を促進させる役職と等級の分離運用。自社に最適なカタチを見つけ出し、人材配置を最大化させることは、多くの企業の成長において今や不可欠な戦略となっています。一方で、現場の人事担当者や経営層からは、「そもそも役職の正しい定義とは?」「会社内に一般的な役職の序列や順番はどのようになっているのか?」「なぜ役職とは別に、等級という概念を人事制度で設ける必要があるのか?」といった、根本的な疑問もしばしば寄せられます。

 

そこで本記事では、多くの一般企業が定める役職の基本定義や、一般社員から役員までの序列、役職者に求められるスキルや役割、形成すべきポータブルスキル、そして人事の現場で混同されやすい等級(グレード)との決定的な違いや効果的な分離運用のアプローチについて、タナベコンサルティング独自のノウハウを交えて網羅的に解説します。

役職と等級の分離運用について理解し、
自社に最適なカタチを見つけ出す

そもそも役職とは?定義と組織に必要な3つの理由

役職とは組織内における役割・職務を示すもの

役職とは、主に企業をはじめとした組織内で、特定の社員の役割や職務、責任の範囲、意思決定のレベルを表すものです。一般的にはいわゆる肩書と同じ意味で使われるケースも多くあります。例えば、課長や部長などは、多くの企業において管理者の立場を示す代表的な役職として設定されています。同じ役職名であっても、具体的な仕事内容や与えられる権限、責任の範囲は、各企業の方針や組織規模によって異なります。また、特定の企業独自の役職が設けられているケースも少なくありません。

 

企業組織に役職が存在する3つの意義と必要性

極論を言えば、明確な役職が一つも存在しなくても会社組織を稼働させること自体は不可能ではありません。しかし、ほとんどすべての企業において複数の役職が定められているのは、組織運営を円滑にし、持続的な成長を実現するために極めて大きなメリットがあるからです 。

 

具体的には、役職を設けることには以下の3つの重要な必要性・役割があります。

 

①役割と責任、権限の範囲が明確になる
役職を定義することで、誰がどのような立場で仕事をするのか、どの業務に、誰がどこまでの責任を持っているのかを端的に明示できます。これにより、組織内での仕事内容の重複や責任の押し付け合い、現場の混乱を防ぐことができます。他部署の社員や社外の取引先から見てもこの人は何の業務における責任者なのかが一目で把握できるようになり、コミュニケーションや業務提携が非常にスムーズになります。

 

②意思決定が迅速化する
組織において役職ごとに意思決定の権限を明確に割り当てておくことで、トラブルの発生時や重要な方針決定の際に,経営陣の承認を得ることなく、現場や中間の長が迅速に判断を下せるようになります 。これにより、多くの社員が業務を遂行しやすくなり、ビジネスのスピードが大幅に向上します。

 

③社員への動機づけと成長の目的意識
課長や部長といった上位の役職を目指すことは、多くの社員にとってわかりやすいキャリアパスの目標になります。昇進によって社会的地位や責任範囲、および役職手当などの待遇が上がることは、社員に強い目的意識を持たせ、自律的なスキルアップや業務貢献を引き出す強いモチベーションになります。

企業における一般的な役職一覧と序列

日本の一般的な企業で広く用いられている代表的な役職の序列(役職が上がる一般的な順番)を、現場の実務層からトップマネジメント(経営層)まで、高い順に体系的に解説します。

序列順 役職名 主な位置付けと責任範囲
1 代表取締役社長 企業の最高責任者。経営のすべてを統括し最終判断を下す。
2 副社長 社長に次ぐ経営の最高幹部。全社的な事業戦略の立案や、複数の重要部門(本部長クラス)を統括する。
3 専務取締役 社長および副社長を補佐する経営幹部。主に特定の重要部門や経営全体の管理・統括を担う。
4 常務取締役 社長補佐をしつつ、主に企業の日常的な業務を監督・統括する。
5 本部長(事業部長) 部門の中でも本部や特定の事業部全体を統率する最高責任者。
6 部長 各部署(営業部、人事部など)の長であり、部署内の最終的な意思決定を担う。
7 次長 部長と課長の中間に位置し、部長の右腕としてその補佐や代理を務める。
8 課長 ひとつの「課」を束ねる責任者。部下のマネジメントを担う中間管理職の代表格
9 係長 組織の最小単位である「係」のリーダー。実質的なチームの中心役を務める。
10 主任(チーフ / リーダー) 一般社員のリーダー的なポジション。現場のまとめ役であり、管理職ではない。
11 一般社員(メンバー) 各種の基本業務を実行し、日々の会社の業績に直結する要となる存在。

以下、それぞれの役職における具体的な役割と特徴を詳しく見ていきましょう。

 

企業における一般的な役職一覧と序列

実務を担う現場リーダー層

①一般社員
その名の通り、役職を持たない一般的な社員です。現場での各種業務に主体的に取り組み、会社の業績向上に欠かせない要となる実働組織です。

 

②主任(チーフ、リーダーなど)
一般社員から一歩ステップアップした、最初の序列に位置する役職です。主な役割はプレイヤーとして活躍しながら、周囲の一般社員を管理・指導・育成し、現場チームを円滑に取りまとめることです。管理職(係長や課長)からの指示をチームメンバーに正確に伝達し、現場の進捗や問題点を適宜報告するパイプ役(管理職の登竜門)としての性格を強く持ちます。

 

③係長
企業内の最小組織単位である「係」の長であり、実質的な現場 of チームリーダーです。主任に比べて肩書きが付く分、地位と社内での責任は上がりますが、管理職のなかでは最もプレイヤーとしての色合いが濃く、大部分は自身の実務を並行して行うプレイングリーダーとして活動します。

 

中間管理職・マネジメント層

④課長(マネージャー)
「係」を複数集めて構成される「課」のトップであり、日本企業における中間管理職(マネージャーの典型例です。 部下に対する細かな指示、評価、目標の管理や育成を担当するほか、他部署との業務の連携や協調を図るキーパーソンでもあります。多くはプレイヤーとマネジメントの両方をこなすプレイングマネージャーとして激務をこなします。

 

⑤次長
課長の上、部長の下に位置するポジションで、部門責任者(部長)の次席(代理・右腕)にあたる人物を指します。 部長が経営会議などで多忙な際に、代理で部門全体を統括し、部門目標の達成に向けた施策の立案や実行を担うほか、下の役職である課長たちをまとめ上げて統制する役割を持ちます。

 

⑥部長(ディレクター)
各部署(例えば営業部、総務部、開発部など)の最高責任者であり、大組織の単位を取りまとめ、部署としての最終的な意思決定を下す上級管理職です。 単なる部下の日常管理にとどまらず、会社の経営戦略に基づいた自部署の長期的な戦略を策定し、実行に移します。また、部門全体の予算管理や適切な人材リソースの配分など、より経営者に近い視点が強く求められます。

 

⑦本部長(事業部長、ゼネラルマネージャー)
本社の下に独立した複数の事業部や、巨大な本部(営業本部、開発本部など)を置く組織において、その事業単位の総責任者として置かれるポジションです。各事業本部の方針・目標を自ら定めるとともに、傘下にある複数の部長を取りまとめ、人材・予算・設備といった全社リソースの最適化を図る経営幹部(執行側トップ)の役割を持ちます。

 

経営幹部・取締役層

⑧取締役(常務・専務など)
事業運営全体の中心として責任を背負い、取締役会における企業の重要な意思決定や業務の執行を法律(会社法)に則って担う役員層です。

 

常務取締役:社長の補佐をしながら、企業の日常的な業務(現場オペレーション)を直接監督・統括・モニタリングし、必要な改善を実行する役割を持ちます。

 

専務取締役:社長や副社長の補佐として、現場の実務管理よりは、社長に近いトップマネジメントの視点から組織全体の経営方針や全社戦略の策定にあたります。

 

⑨代表取締役社長
会社のトップとして、会社のすべての業務執行に関する最高責任を負う人物です。社長は一般的な商業慣習上の肩書きですが、法律上の最高権限者である代表取締役と一体になって運用されるのが一般的です。

役職者(管理職)に求められる3つの役割と必須スキル

役職者(管理職)に求められる3つの役割と必須スキル

役職者には、プレイヤー時代とは異なり、メンバーや組織を効果的に率いるための特別な役割とスキルが求められます。

 

役職者に求められる「3つの重要な役割」

役職者となった人物が組織で果たすべき代表的な責任や役割は、大きく以下の3点に分類されます。

 

①業務の管理と改善
一般社員は自分自身の目の前にある個人の業務を完遂すれば責任を果たせますが、役職者はチーム全体、部署全体のパフォーマンスと生産性を最大化させるマネジメントが必要です。メンバーの個々のスキルやモチベーションを正確に把握し、最適な仕事量を適切に配分すること、ボトルネックを見つけて業務のプロセスを改善していく役割が求められます。トラブル発生時には上層部や他組織との調整に走り、迅速な問題解決を図ります。

 

②部下の育成
組織が継続的に成長するためには、構成員である人の成長が不可欠です。役職者は、部下と能動的なコミュニケーションを取る機会を設け、本人の強み・弱み、将来のキャリアプランをヒアリングし、それに合わせて意図的な成長機会やフィードバックを提供する育成の役割を担います。

 

③適切な労務管理
残業時間の適切なコントロール(過重労働の防止)や、セクハラ・パワハラなどのハラスメント対策、メンバーのメンタルヘルス管理の徹底もまた、役職者としての重要な責務です。労務管理が適切に行われている部署は、メンバーのエンゲージメントが向上し、離職率の低下や業績安定にダイレクトに貢献します。

 

役職者に求められる「3つの重要な役割」

これら3つの役割を全うするために、役職者が身につけるべき能力体系として、以下の3つのポータブルスキルとテクニカルスキルを網羅しておく必要があります。

 

対課題力(コンセプチュアルスキル / 概念化能力):
複雑な課題に遭遇した際、感情的に捉えるのではなく、状況を整理・概念化して課題の本質を見抜くスキルです。中長期の部門計画の策定や、トラブル時の根本原因追究、意思決定などで最も真価を発揮します。

 

対人力(コミュニケーション・交渉力):
上司、部下(組織の上下)、他部署(左右)、社外パートナー(内外)といったあらゆる関係性をつなぎ、良好な人間関係を構築・維持するコミュニケーション能力です。対人力を意図的に発揮することで、チームワークの向上だけでなく、対外交渉を優位に進めることができます。

 

対自分力(セルフコントロール能力):
感情やモチベーションをコントロールし、自分自身が感情的にブレないように自己管理する能力です。上の立場になるほどストレス負荷がかかりますが、自身のコントロール可能な領域と不可能な領域を冷静に切り分け、思考を切り替えて部下や周囲と向き合う基盤を作ります。

 

テクニカルスキル(専門業務遂行力):
その業務に直結する専門知識や技術力です。管理職となった後も一定レベルのテクニカルスキルを保持しておくことで、部下からの指導に対する求心力と信頼性を高めることができます。

役職と等級の基本概念

役職と等級の基本概念

役職と等級は、組織において社員の位置づけや役割、給与などを決定するために用いられる基準です。これらは似たような役割を果たしますが、目的や活用方法に違いがあります。

1. 役職(ポジション)

(1)定義:
社員が組織内でどのような職務や責任を持つかを示すもの。(例:課長、マネージャー)

(2)目的:
組織構造を明確にし、業務における責任範囲や意思決定のレベルを示す。

(3)特徴:
一般的には役職が高くなる(昇進)につれ、意思決定権や責任範囲が広がる。

2. 等級(グレード/レベル)

(1)定義:
社員のスキル、経験、業務遂行能力に基づいて分類されるもの。
等級やグレードで表現されるものもあれば、いくつかの等級をまとめてステージと表現することもある。

(2)目的:
主に給与や昇進の基準として活用される。
役職が同じであっても、等級が異なれば給与水準や待遇面が変わる可能性がある。

(3)特徴:
一般的に等級は、経験年数や業務遂行能力、実績に応じて決定される。
これはキャリアパスや社員の能力開発計画にも活用され、等級が上がる(昇格)することにより、社員はより高い役割を発揮できることを認められたと捉えることができる。

役職と等級を分離させる理由

役職と等級を分離させる理由

人事制度において役職と等級を分離する理由は、組織の柔軟性を高め、より公平かつ効果的な人材配置を行うためです。メリットとしては下記が挙げられます。

1. 組織の柔軟性を高められる

役職と等級を分離させることで同じ職種内でも異なる等級の人材を配置することができます。例えば、同じマネージャーという役職でも、業務の難易度や規模に応じてシニアレベルやジュニアレベルのマネージャーを配置でき、組織にとって最適な人員配置を柔軟に行うことができます。また、組織を再編成する際には、等級を軸に役職のみ調整することで対応が可能です。

2. 評価・昇進・昇格の透明性と公平性を高められる

役職ごとの業務の種類や責任範囲を明確にしつつも、昇格や昇給は等級に基づいて決定することで、業務内容とスキルを分けて評価できるようになります。この仕組みによって、社員の業務遂行能力や成果を正当に評価することが可能になります。また、キャリアパスが明確になることにより、社員がキャリアビジョンを描きやすくなります。管理職としてマネジメント業務に携わるのか、一方で専門職として専門性を磨いていくのかなど、社員自身の意思を尊重することができるため、企業に対する帰属意識の向上も見込まれます。

3. 若手社員の活躍を促進できる

等級と役職を分離させる大きなメリットの一つが、若手社員の活躍促進です。役職と等級を分離させることで、若手社員でも適性があれば役職に就くことができます。それによって若手社員の早期活躍を支援し、企業としての新陳代謝を高めることができます。

役職と等級の効果的な運用方法

役職と等級の効果的な運用方法

役職と等級の分離運用は、適切な運用方法をとることで組織内の人材管理や社員のモチベーション向上に寄与できますが、同時にいくつかの注意点が必要です。

1. 効果的な運用方法

(1)役職要件と等級要件の明文化
各等級で必要なスキル・経験の明文化と合わせて、各役職における役割や責任範囲を明文化させることによって、社員の更なるキャリア開発を効果的に支援することができます。

(2)キャリアパスの複線化
管理職を目指す道と専門性を高める道の複数のキャリアパスを構築します。それによって、社員が自身のスキルや目標に応じたキャリアを描くことが可能になり、幅広い人材の育成・成長を支援することができます。

(3)報酬制度の最適化
報酬制度は、等級や役職に基づいて設定し、能力・役割・成果・責任に応じて報酬が決定するようにします。
それによって、社員のモチベーションを引き出し、より活躍を支援することができます。

2. 注意点

(1)役職と等級の混同
先述の通り、役職要件と等級要件をそれぞれ明文化することが必要です。これらが混同してしまうと、評価が曖昧になってしまい、社員が自信の立場やキャリアパスを誤解する恐れがあります。

(2)役職と等級の不均衡を防ぐ
昇格しても昇進しない場合、社員が「役職が変わらないのに役割が増える」と感じるリスクがあり、不満が生まれる可能性があります。そのため、昇格した際には、役割範囲についても目線合わせする必要があります。

(3)人事評価の公平性の確保
役職と等級の評価基準やプロセスが異なる場合でも、評価の公平性を確保しなければなりません。評価が一貫性を欠くと、社員のモチベーションは低下し、信頼関係が崩壊してしまう恐れがあります。

さいごに

役職と等級を分離して運用することで、組織はより柔軟で公平な人材配置を実現でき、社員のモチベーションや成長を効果的にサポートできるようになります。この制度は、社員が自身のキャリアパスを明確に描きやすくするとともに、多様なキャリアの選択肢(成長機会)を提供することにも繋がります。役職や等級に基づく評価や報酬の透明性を高めることで、組織の一体感と信頼が醸成され、活気ある組織が生まれやすくなります。
適切な運用によって、社員一人ひとりのスキルや能力を最大限に引き出し、組織全体の成長促進に繋げていきましょう。

よくある質問

役職と役職名(肩書き)の違いとは何ですか?
役職とは企業や役所などの組織内で、その社員が担う役割、職務、責任、意思決定の権限を示すポジションそのものの概念を指します。組織運営における具体的な仕組みや配置を意味します。役職名とは肩書き、 その役職を対内・対外的にわかりやすく表すための名称・呼び名・ラベル(社長、部長、課長、主任など)を指します。
役職者と管理職の具体的な違いとは?主任や係長はどちらに入りますか?
主任や係長は役職者には含まれますが、一般的には管理職には含まれません。主任や係長は現場実務を自ら遂行するプレイヤーとしての色合いが濃く、部下に対する正式な人事評価や、部門の予算・労務管理などのマネジメント権限を持たないため、組織運営上は一般社員層(非管理職)に分類されます。
役職者(管理職)になると残業代が出ないというのは本当ですか?
いいえ、法律上は誤りです。 単に社内で課長や部長といった役職を与えられているという理由だけで、一律に残業代(時間外労働手当)を不支給にすることは、労働基準法違反となります。
組織において役職と等級(グレード)を人事制度上で分ける理由(メリット)は何ですか?
役職と等級を分離運用させるべき最大の理由は、年功序列の硬直化を防ぎ、市場環境の変化に強い柔軟な組織配置と、社員の納得感の高い公平な評価処遇を両立させるためです。

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