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M&Aで株式譲渡にかかる税金とは?節税方法も解説

2023.03.09

M&Aや事業承継における株式の譲渡に際しては、税金の支払いが必須となります。しかしその税金の種類や算出方法は、個人と法人では異なります。
ここでは株式譲渡にかかる税金について、個人と法人それぞれの場合で詳しく解説します。 税金の算出方法、M&Aにおける具体的な税金対策から注意点まで解説していますので、ぜひご参考にしていただければと思います。


M&Aにおける株式譲渡にかかる税金とは? 個人と法人の違い


■個人の場合


非上場の中小企業における株式譲渡でのM&Aでは、売り手であるオーナー経営者(個人)が自身の所有する会社の全株式を買い手側に譲渡するケースがほとんどです。


・株式譲渡時に個人にかかる税金
個人が株式譲渡で得た利益に課せられる税金は、所得税と住民税です。


・算出方法
株式の譲渡所得は分離課税であり、税率は固定で20.315%です。その内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%となっています。復興特別所得税は、2037(令和19)年までの時限措置です。


譲渡所得額の算出は、以下の計算式で求めます。
譲渡所得=譲渡価額-(株式取得費用+譲渡手数料)


※株式取得費用=会社設立時の出資額と株式発行に関わる手数料や名義書換料などが該当。
※譲渡手数料=株式譲渡実施のためにM&A会社に支払った手数料など。


■法人の場合


M&Aでは、法人が子会社など他社の株式を譲渡することがあります。


・株式譲渡時に法人にかかる税金

法人が株式譲渡を行う際には、譲渡益に対する法人税が課されます。この法人税は、譲渡価格と取得価格の差額に対して課されるため、価格設定には十分な配慮が必要です。


・算出方法
株式譲渡益の算出方法は、個人の譲渡所得の場合と同様です。ただし、個人では「譲渡所得」と表現しますが、法人では「譲渡益」と表現します。法人税の実効税率は、約34%です。


譲渡益=譲渡価額-(株式取得原価+譲渡経費)

個人に課される税金|M&Aで株式譲渡にかかる税金とは?節税方法も解説

不動産が譲渡対象に含まれる場合の税処理について


■個人の場合


個人が株式譲渡を行う際に譲渡対象に不動産が含まれている場合、不動産譲渡税が発生します。これは、不動産の価値が株式の価値に反映され、その結果として譲渡益が増加するためです。


■法人の場合


一方で、法人が所有する不動産を譲渡する場合、不動産譲渡税は発生しません。これは、法人が不動産を所有していても、その価値が法人の価値に反映されないためです。


このように譲渡対象に不動産が含まれているかも譲渡時は確認しておく必要があります。

株式譲渡における税務上の注意点


■個人の場合


株式譲渡の税務において注意点としては、所得税と住民税の納税時期が異なることです。所得税は、毎年2月16日から3月15日までの期間に、前年1月から12月分の確定申告を行い納税します。
一方、住民税の場合は、課税事象が発生した翌年6月に納付書が届き、税金の支払いを行いますので住民税の納税資金の確保が必要となります。


■法人の場合


法人が株式を譲渡する際には、株式取得時の価格や譲渡価格、譲渡時の法人の財務状況など、さまざまな要素が税金の計算に影響を与えます。これらの要素を把握し、適切に対応することが重要ですので、法人による株式譲渡を行う際は注意して確認しましょう。

不動産が譲渡対象に含まれる場合の税処理について|M&Aで株式譲渡にかかる税金とは?節税方法も解説

M&Aの税金対策


①繰越欠損金の利用
非上場株式の譲渡損失がある場合、個人事業主は繰越しが認められていませんが、法人の株主は欠損金の繰越控除が利用できます。
ただし、繰越欠損金は資本金1億円以下の法人は全額が充当可能ですが、資本金1億円超の法人あるいは資本金5億円以上の法人の完全子会社などは一部しか充当できません。


②第三者割当増資
税金を発生させず買収側に経営権を引き渡す方法として、第三者割当増資があります。
具体的には、議決権割合が5割超となる数の株式を、第三者割当で買収側に交付します。このとき、買収側が支払う株式対価は出資金です。

オーナー経営者個人が所有する株式を売却したわけではないので税金は課せられませんが、オーナー経営者への入金もありません。


③役員退職金
M&Aや事業承継において株式譲渡の譲渡対価の一部を役員退職金で支払う方法であり、売手には「譲渡時の手取り額の最大化」、買手には「買収時に純資産を減らすことでの手出し資金の抑制」といったメリットがあるM&A節税の手法の1つです。


以下のコラムで詳細を解説していますので、ぜひご確認ください。


まとめ


ご紹介したM&Aの譲渡時にかかる税金については、企業様の状況により異なりますので、まずは専門家にご相談することをお勧めします。
タナベコンサルティングでは実績のあるM&A専門コンサルタントが在籍しております。ぜひお気軽にお問い合わせください。


このコラムの執筆者
稲田 享広

稲田 享広

M&Aコンサルティング事業部
コンサルタント

金融業界にて法人・個人営業の経験、税理士事務所にてM&A担当を経験後、当社に入社。後継者不在企業において、M&Aニーズのヒアリングから、書類作成、ソーシング活動など事業承継M&Aに従事。顧客に寄り添い、顧客の要望を丁寧にヒアリングしていくコンサルティングスタイルに定評がある。

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  • 医療機器等卸売会社のM&A仲介
  • ガソリンスタンドの譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 医療法人およびクリニックの譲渡側M&Aアドバイザリー
  • 産業廃棄物処理会社の買収のための財務DD
  • ゲーム会社の買収のための財務DD

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