人事課題解決ノウハウ
人材育成

技術習得のサポートと自社製品の展開で活力を生み出す企業の事例

SCROLL
技術習得のサポートと自社製品の展開で活力を生み出す企業の事例

A社は昭和初期から100年に渡り、北陸において、各地に残る城郭・寺社建築をはじめとした伝統的建築物から、ホテル・マンション・ビル・大型商業施設・公共施設、戸建住宅などの現代建築物に至るまで、左官業をベースに貢献する地場の有力企業です。
「仕上げの専門集団」として、守るべき伝統技術は守り継承しつつ、自社製品の展開をはじめとして新たな挑戦を行い成長しているA社の事例をご紹介します。

自前の専門技能訓練校を運営し明確なキャリアパスを設定

1. 自前の専門技能訓練校を運営し明確なキャリアパスを設定

(1)「背中を見て学べ」ではなく時代に合わせた教育手法を探求

国宝級の建築物の施工も担うA社では、その社歴の長さや施工実績から、伝統的な徒弟制度が中心のように思うかもしれませんが、そうではありません。若くても現場で早く活躍ができる職人を育てる方針が徹底されており、自社で専門技能を身につける訓練校を設立・運営しています。身につける技術は伝統技術そのものですが、訓練方法は現代的な方法に置き換えられています。「職人を育てる」という会社の核になる部分を、伝統的な徒弟制度と現代に受け入れやすい方法論をミックスして運用しています。このことによって、ベテラン職人の高い技術とノウハウが、短い時間で若手の職人に伝承がされており、生産性の向上に寄与しています。


(2)明確なキャリアパス

成長段階として、現場を担うキャリアパスにおいては、訓練生→技能者→職長を明確に設定しています。

「訓練生」は、入社し会社内や現場、技能訓練校で技術や知識を習得するメンバーです。建築物ができあがる工程に携わりながら、自分自身の技能を磨いていきます。
「技能者」は現場で自らの腕を磨くとともに、部下・後輩の育成や指導に従事します。この段階で国家資格の取得を課します。
「職長」は責任者として、技能者を統率し、会社の代表として、ひとつの現場から取りしきり、現場を取りしきる経験を積んでいきます。
また、「職長」はゴールではなく、その後の自身の能力アップ度合や希望に応じて、将来の方向性を見極めていきます。
「職長」以上のキャリアについては、3系統のキャリアパスが設定されています。
「マネジメント」機能を担っていくコースでは、工事長・部長・役員までの昇進が可能性として見込むことができます。「マネジメント」に連なる工事長・部長・役員は、マネジメントの立場として、職人メンバーを取りまとめるとともに、会社全体やチーム運営を統括するキャリアになります。
一方、技術を極めるキャリアである「マイスター」も設定されています。マイスターは技術者として、さらに高度で難易度の高い技術の習得や、伝統を軸にした革新要素の技術探求を求められます。
「マネジメント」「マイスター」の間にも、プレイングマネージャーのキャリアとして、「上級職長」・「工事長」のキャリアが設定されています。「上級職長」「工事長」は、自ら現場で活躍しながらマネジメントを行い、複数の現場を取りまとめます。
1人前に育った後も、自身の希望や適性に応じて、明確なキャリアパスが設定されており、社員の将来設計を立てやすくし、社員の意欲をうまく引き出しています。

2. 工事に使用する材料に着目し自社製品を開発

保湿性や吸水性、消臭性・吸湿性に優れ、左官の材料として用いられてきた珪藻土の可能性に着目し、バスマットなどの自社製品を開発・販売するビジネスを立ち上げ、新たな事業の柱に育ちつつあります。 近年、漆喰や珪藻土などの天然自然素材が見直されてきており、また手業による緻密な仕上げや味わい深さなど、珪藻土を活用した製品の素晴らしさの認識が広がっています。このような時代の変化の中で、「吸湿性」という圧倒的な強みをベースに、自然素材由来の珪藻土を活用した吸水盤・バスマット・生活雑貨などの製品群を充実させています。
古くから本業の工事業において、素材を知り抜いているA社だからこそ気が付くことができ、製品化してみるという発想に繋がったと考えられます。

新たな伝統は革新の蓄積

3. 新たな伝統は革新の蓄積

昨今VUCA(Volatility Uncertainiy Complexity Ambiguity)の時代と言われ、先行きの見通しがきかない時代になりました。企業は、過去の延長線上にない未来を描いて「実装」していく必要に迫られています。「人材が育つ環境づくり」から、「企業として意志を持った教育」が最重要となってきています。工事業において、人出不足は全産業の中でも突出しており、環境変化のスピードに合わせて、人材育成をスピードアップしていくことが重要です。革新の蓄積が新たな「伝統」として根付きます。A社の事例を通じて、工事業の人材育成の考え方や強みに着目する視点を醸成いただければ幸いです。

会社プロフィール

業種
設備工事
所在地
甲信越・北陸

この課題を解決したコンサルタント

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
68年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業68
  • 200業種
  • 17,000社以上