はじめに
本コラムでは、フレデリック・ラルー氏が著書「ティール組織ーマネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現ー」にて提唱しているティール組織に至るまでの「5つの過程」より、組織の発達段階別の人事制度施策についてまとめていきたい。
※大前提として、どの組織の発達段階が良い悪いという考えは一切無いものとして考察していく。
記念すべき第1回目は、レッド組織(メタファー:狼の群れ)における人事制度改革ポイントである。
レッド組織とは
レッド組織とは、特定の個人(通常は創業社長)が支配的にマネジメントを行う組織形態である。
力を持ったワンマンリーダー(カリスマリーダー)が中心となって組織をけん引していく。
この組織に集うメンバーはリーダーに忠実に従い、比較的短期の視点で成果を追求していくこととなる。
強力なトップダウン型のリーダーシップを発揮していくことになるため、再現性は乏しい。
レッド組織における人事制度
筆者は、組織の発達段階が「レッド組織」にある企業のコンサルティングを行っているが、評価制度および賃金制度は極めてシンプルな構造である。
社長の独断と偏見により、社員は評価され、賃金(昇給・賞与)が決定していくため、一見すれば属人的かつ不合理に思われがちであるが、この企業の社員一人ひとりの評価に対する満足度は非常に高い。
その理由は、社長が「自分たちの事をよく気にかけて見てくれているから」である。
誤解を恐れず申し上げると、この社長の日常は、エゴイストであり、恐怖というよりは狂気に満ちた立ち居振る舞いや言動が散見され、非常に危なっかしいシーン(社員とのやり取り)が見受けられることも事実であるが、
ここぞという「場」で、表現するフィードバックは本当に秀逸である。(割合にすると9:1である。)
「ありがとう。あなたのおかげです。」、「よくやった。素晴らしい。」、「最高!!!」など。
最小のセンテンスに最大限の賛辞が含まれており、第三者である私から見ても、メンバーのモチベーションが高まっていることが目に見えて分かるのである。
ここで押さえていただきたいのは、超トップダウン型のワンマンリーダーが率いる組織において、
①社員の経営者に対する尊敬の念
②厳しさの中にも社員の気持ちを鼓舞するフィードバック
③正確な観察と端的かつ最大限の称賛
があれば、極論としては、人事制度が無くても充分に社員満足度やエンゲージメントを高めることができるのである。
逆に、組織経営を重んじる経営者においても、上記①~③が満たされていない組織においては、社員満足度もエンゲージメントも停滞気味なケースが多いことがわかる。
レッド組織における人事制度改革ポイント
では、事例企業のようなレッド組織において、何も手を打たないのかと言われるとそういうわけではない。
改革ポイントは「未来を見据えた言語化」である。
どれだけ力強いリーダーシップを発揮し続けるワンマン社長でも、必ず歳は重ね、必ず老いていく。
どれだけ偉大なカリスマ社長であったとしても、時間に逆らうことは決してできない。いつかは引退の時を迎えるのである。
そんな中で、自分が引退したあとも、自分がこだわってきた経営観や仕事観を後世に語り継ぐという「使命」にモチベーションを感じるレッド組織の社長は少なくない。
私のクライアントも同様であり、社長がこれまで積み上げてきた歴史と実績を人事制度や教育制度に体系的に落とし込んでいき、これらの仕組みを通じて「社員ひとり一人が明らかなる成長を重ねている」と実感されたとき、「これほど嬉しいことは無い」とおっしゃったほどである。
さいごに
ここまで読み進めていただき、お気づきになった方もいらっしゃるかもしれないが、レッド組織として、未来を見据えた言語化に注力していくと、自ずとアンバー組織やオレンジ組織の片鱗が伺えるのである。
次回はアンバー組織に焦点を当てて、考察を進めていきたい。
この課題を解決したコンサルタント
タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部 エグゼクティブパートナー浜西 健太
- 主な実績
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- 大手IT業:人事制度再構築コンサルティング
- 大手建設業:人事制度再構築コンサルティング
- 大手卸売業:人事制度再構築コンサルティング
- 中堅美容業:人事制度再構築コンサルティング
- 中堅介護福祉業:人事制度再構築コンサルティング
- 中小製造業:中期ビジョン策定コンサルティング
- 中小サービス業:マーケティングコンサルティング
- 中小製造業:マーケティングコンサルティング
- 中小サービス業:採用コンサルティング