人事コラム
人材育成

人材育成における目標設定の重要性とその具体的方法

部下を成長させる効果的かつ実践的な目標の立て方と設定後のフォローについて

SCROLL
人材育成における目標設定の重要性とその具体的方法

求める人材をベースに目標を設定し、
的確なフィードバックで成長を促進

人材育成における目標設定の重要性とその効果

人材育成における目標設定の重要性とその効果

人材育成は企業経営において永遠のテーマです。企業の存続と永続的な成長には人材育成が不可欠である一方、実務上の課題は尽きることがありません。タナベコンサルティングで実施した「幹部アンケート」によれば、幹部が抱えている最大の悩み・課題として部下育成が挙げられています(43.4%、複数回答)。人材育成は、多くの管理職・マネジメント層が抱えている課題となっていることが分かります。

では、企業は人材育成においてどのような課題を抱えているのでしょうか。タナベコンサルティングで実施した「人材採用・育成・制度に関する企業アンケート調査」によれば、多くの企業が自社の人材育成において、「次世代のリーダーづくり・後継体制づくり」(57.6%)や「OJTのレベルアップ」(43.2%)に課題意識を持っています(複数回答)。多くの企業が「育てる側」の能力向上を課題と捉えていることが分かります。その他、「評価制度と連動させた教育運用」(35.4%)についても、昨今、課題意識が高まってきています。人事制度の一部として育成システムを捉えるという考え方が年々広がってきていると推測されます。
上記のように、人材育成における課題は企業によって三者三様です。

着手すべき課題は多岐にわたりますが、人材育成を成功させるためには、まず育成全体の方向性を明確にすることが重要です。
育成システムの体系化や育成側のレベルアップといった要素が効果を発揮するためには、具体的な指針が欠かせません。
指針がなければ、従業員のどのようなスキルや知識を重点的に育成すべきかが曖昧になり、結果として育成の効果が薄れてしまう可能性があります。
したがって、従業員が目指すべき目標を設定することが、育成の第一歩となるのです。

ここで、人材育成における目標設定の必要性と効果を、①企業の視点、②上司・部下の視点で改めて考えてみましょう。

①企業の視点

企業における人材育成の目的は、事業方針や業績を達成できる、つまり組織目標を成し遂げる人材の創出です。
よって、組織目標と個人目標を連動させることにより、組織目標の達成を効果的に行うことができます。
同時に目標の達成度合いにより評価を行うことで、育成制度と評価制度の間での連動性を持たせることができます。

②上司・部下の視点

部下に求める姿や期待値をすり合わせたうえで、その実現に向けて計画的に部下とともに向かっていくためには、中長期的な目標が必要です。
日々盲目的に業務に取り組んでいるだけでは、部下はあるべき理想像・上司からの期待値に近づいていくことは困難です。
まずは自社のあるべき理想像を咀嚼し、それをベースとして定量化・具体化した目標を設定すること。
そして、目標達成に向けて逆算的に部下・上司で行動計画を立てていくことが、部下の早期成長つまりは効果的な人材育成につながるのです。

以上のように目標設定は、人材育成の効果を最大化するための基盤となっていることが分かります。
今後ますます企業の経営課題となっていくであろう人材育成を考えるうえで、目標設定が外せないテーマとなっていくことは間違いないでしょう。

では、従業員への効果的な目標設定はどのように行えば良いのでしょうか。
本コラムでは、目標設定とその後のフォローのポイントについてお示しします。

目標設定のポイント

目標設定のポイント

①求める人材像の整理と中長期目標のすり合わせ

まず、従業員の中長期目標を設定するにあたり、自社の求める人材をベースにを設定していくと良いでしょう。
わが社における求める人材像とは何か。どのような人材であれば経営理念や戦略・方針を実現し、業績向上に寄与するのか、このような観点で自社が求める人材を確認しておきましょう。そして、自社の求める人材像と、従業員が理想とするキャリアプランのすり合わせを行っていくことで、個人の中長期目標を設定していきます。

②短期の目標設定はSMARTに、部下主体で設定

次に、設定した中長期の目標を短期目標にブレイクダウンしていきましょう。期間を短期に区分することで、社員自身が直近で取るべきアクションが見えてきます。
短期目標の設定には、具体性があり実際にアクションに落とし込むことができるかが肝要です。ポイントは「SMART」です。

Specific=具体的に
・誰が読んでもわかるように、明確かつ具体的な表現や言葉で書き表すこと

Measurable=達成度が測定できる
・目標の達成度合いが部下・上司双方が判断できるよう、その内容を極力定量的に示すこと

Achievable=現実に達成可能である
・希望や願望に基づいた目標設定ではなく、実現・達成が可能であること

Related=組織目標や全体戦略との関連性がある
・設定した目標が全社目標・組織目標と関連しているか、業務内容・職場の課題と結びついていること

Time-bound=明確な期限がある
・いつまでに達成するか、期限が明確であること

SMARTに則って目標を設定することで、目標達成に向けた効率的な進捗管理と正確な評価が可能となります。
全社・組織目標を反映するだけではなく、部下の成長を考えた課題・目標を設定することが人材育成の観点では肝要です。上司から課題や目標を押し付けてしまうと、部下のモチベーションは低下しかねません。期限内に自身が何を成し遂げたいか、何の能力をどこまで伸ばしたいか。部下が自分自身で思考し、言語化することがモチベーションの向上につながります。ここでは、部下主体で自身の目標と実現に向けたアクションプランを策定することが最重要です。

③目標達成難易度の調整


前述の通り、目標を立てる際には現実に達成可能であることが求められます。その一方で最終的な目標の達成度で評価がつけられるため、自身で立てた目標はハードルが低くなってしまう懸念があります。したがって、上司は部下の能力や自身の経験を基に、達成可能であり、かつ部下の成長につながる目標となるよう、達成難易度を調整することが必要です。
目標設定の際には上記の3点を留意することで、部下の育成に効果的な目標設定ができるでしょう。
次に、設定した目標がより育成効果を発揮するための、上司のサポートについてお伝えします。

目標達成のためのサポートとフォローアップ

目標達成のためのサポートとフォローアップ

①目標設定後の進捗フォロー

目標設定後には、上司が達成に向けて正しく行動できているかのプロセスチェックを実施しましょう。計画通りに進んでいない場合は、達成に向けてのアドバイスやヘルプ、フォローを行います。目標を立てた後、評価面談まで放置しないよう、逐次進捗を確認することが必要です。
管理職が部下に対してとると良いマネジメントサイクルとして、CAHFを紹介します。

Check:チェック
・部下の目標に対する進捗具合を確認し、目標達成を阻む課題や障壁を見つける

Advice:アドバイス
・課題や障壁を克服し、部下が目標実現に一歩近づくための施策を助言する

Help:ヘルプ
・部下の目標達成が困難と推測される場合には、上司が業務上の助力をする

Follow:フォロー
・助力後、部下が目標を達成できそうか観察し、継続的にフォローしていく

上司としては、自身の業務が多忙であるとヘルプ・フォローまで手が回らないケースも多いですが、部下の目標達成までの軌道修正を行うことも、人材育成の観点で心がけていただきたいアクションです。

②フィードバック面談

フィードバック面談は、目標設定(MBO)を行っている企業であれば、ぜひセットで取り入れていただきたい手法です。
フィードバック面談において上司の大切な姿勢は「部下の話を聞くこと」です。上司ばかりが話をし過ぎないよう注意が必要となります。MBOを導入し、会社からの評価と個人の目標達成度の関連性が強い場合、自身の評価と会社の評価のギャップをプロセスを押さえながら正しくフィードバックしていくことが肝心です。また、評価の詳細を語ることばかりに終始せず、今期の部下の成長や今後に向けたアドバイス・期待を伝えても良いでしょう。部下は自身の成長を実感し、より高いモチベーションで仕事に取り組むことができます。
フィードバック面談を行うことで、部下が自身の現在地点を再確認し、次に何をするべきかを理解し気持ちを新たに動き出すことができます。
ぜひ導入をご検討ください。

さいごに

本コラムでは、人材育成における目標設定の重要性とポイントをお示ししました。
本コラムで特に実践していただきたい内容は2点です。

①会社が求める理想像をベースに、上司と部下で期待値をすり合わせながら、明確で具体的な目標を定めること
②目標設定後には上司が部下をしっかりとサポートし、部下のさらなる成長を目的としたフィードバックを行うこと

当コラムが、貴社のより効果的な人材育成の一助となれば幸いです。

この課題を解決したコンサルタント

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
68年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
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