情報の共有化が要求される今、
給与テーブル開示の必要性が高まっています。

給与テーブル導入の目的と役割
給与テーブルは、基本給を算出するための基準となる額表を指します。同様の意味で、賃金テーブルや賃金表とも言われることがあります。
給与テーブルを設定することで、明確なロジックにおいて基本給を算出でき、公正公平な処遇の実現に大きく近づきます。組織経営を目指す企業にとっては、給与算出の仕組み化は非常に重要な取り組みとなります。
また、現代の企業経営においては、これまで以上に情報の共有化が求められるようになりました。
給与テーブルを従業員に公開し、公明正大に日々の頑張りに報いることが、社員(従業員)のエンゲージメント向上の足掛かりとなるでしょう。
その給与テーブル導入の主な目的と役割は下記のとおりです。
①透明性の確保
給与決定基準を明確にすることで、公正な評価が保証されます。
②モチベーション向上
期中の評価結果を給与に反映することで、社員のモチベーションが向上を促すことができます。
③人材管理の効率化
給与決定までのプロセスが明確になり、給与管理コストを軽減します。
④法的リスクの軽減
公平な給与体系は労働法規に準拠し、労働争議のリスクを低減します。
総じて、給与テーブルは企業の持続的成長と従業員満足度の向上に寄与する重要なツールであるといえます。

給与テーブルの種類
給与テーブルの種類には、従来よく用いられてきた号俸表に加えて、代表的な3パターン(段階号俸表、ゾーン型給与表、複数賃率表)があります。
いずれの仕組みにおいても、一定の基準に基づいて給与を決定するため、公正な給与の算定が可能となり、給与テーブルを従業員の公開することで、給与に対する納得感を醸成することが可能となります。
■従来の号俸表
等級(横軸)と号俸(縦軸)で構成される額表で、等級/号俸別に設定された金額により給与を算定する仕組みとなっています。
号俸表は1号俸が下限額を示し、毎期1号俸ずつ上昇するのに合わせて金額も上昇していきます。
また、1号俸当たりの昇給金額をピッチと呼びます。一般的にピッチは等級ごとに設定され、各等級の昇給額を設定することができます。
今日では毎期一定の昇給を行う号俸表を採用する企業は少なくなりましたが、給与算定の仕組みはあらゆる給与テーブルに応用されており、設計に際しては必ず押さえておく必要がある基本的な形であるといえます。
1. 段階号俸表
段階号俸表は、号俸表に毎期の評価結果を反映した給与テーブルです。号俸表では、毎年1号俸ずつ昇給するのに対し、段階号俸表は評価結果毎に設定された昇給号俸数に応じて、毎期の昇給額が変動します。毎期、昇給号俸(昇給額)が積み上げ式で算定されるため、一回の評価結果がその後の基本給に影響することも大きな特徴の一つといえるでしょう。
段階号俸表では評価ごとに昇給号俸数(昇給額)が設定されているため、従業員のパフォーマンスによって、金額に差が出ます。そのため、上限額の設定には注意する必要があります。上限額を低く設定しすぎてしまうと、ハイパフォーマーが上限額に達してしまうため昇給が止まってしまいます。
また、上限額を高く設定しすぎてしまうと人件費の増大につながってしまいます。適切な上限号俸数(上限額)を設定するためには、標準滞留年数をもとに昇給スピードをシミュレーションする必要があります。また、昇格基準との連動を測ることで、予期せぬ昇給停止を防ぐことができます。
2. ゾーン型給与表
ゾーン型給与表とは、号俸表において等級ごとに基本給範囲(ゾーン)を設定し、それぞれのゾーンに評価ごと昇給号俸数を設定した給与テーブルを指します。つまり、段階号俸表の昇給システムをより詳細に作りこんだのが、ゾーン型給与表と言い換えることができるでしょう。一般的には、等級内の高い基本給範囲ほど、評価ごとの昇給号俸数を低く設定し、滞留すればするほど昇給率が低くなる設計をします。それにより、同一等級に滞留すればするほど昇給率が低くなるため、昇格への意欲を高める効果が期待できます。ゾーン型給与表を適切に運用するためには、適正な昇格条件の設定と厳正な運用が欠かせない仕組みとなります。
3. 複数賃率表
複数賃率表とは、号俸表を基準として、一つの号俸に複数の基準額のランクを設定するものです。毎期、1号俸ずつ昇号し、評価結果に基づいて号俸に設定された金額が基本給となる仕組みです。複数賃率表の最大の特徴は、前年の評価結果が基本給の算出に影響しない洗い替え方式をとっている点です。そのためこの給与テーブルの下では、従業員は毎期新たな気持ちでの職務遂行に繋がりやすいといえます。
さいごに
給与テーブルは公正公平な処遇、ひいては自律的な組織経営を実現するうえで、非常に重要なツールとなります。だからこそ、事業戦略・人事戦略に基づき、設計することが必要不可欠となります。「事業戦略上重要性が高い人材」、「自社の10年後の人材ポートフォリオ」を念頭に戦略的に金額を組み立てることが効果的な給与テーブル設計に繋がります。また、上記のように、給与テーブルの一つ一つに特徴があり、それぞれの導入におけるメリット・デメリットを正しく捉えて設計することで、給与テーブルをより効果的に作用させることができます。
自社の給与テーブルが効果的に作用しているか、今一度検討してみてはいかがでしょうか。
この課題を解決したコンサルタント

タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
コンサルタント宮嵜 基元
- 主な実績
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- 建設の企業内大学設立・運用コンサルティング
- 卸の人事制度構築コンサルティング
- 金融の人事制度再構築コンサルティング