取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの
産業廃棄物処理業から総合環境サービス業へ
沖縄県南城市に本社を置く街クリーングループは、1994年に産業廃棄物最終処分場として創業。その後、時代の変化や法改正に対応しながら建設分野や農業分野、エネルギー分野へと事業を広げ、総合環境サービス企業へと進化を遂げてきた。
陣頭指揮を執る代表の赤嶺太介氏が会社を引き継いだのは2000年。当時、8名だった社員数が19年の間に127名へと増加する中、求心力の源となっていたのが経営理念の存在だ。「総合環境サービスの提供を通じ、自然との調和の取れた人類社会を創造すること」「永続的に力強く成長発展する会社をつくり、全従業員の夢・目標を実現すること」「地域の支えに深く感謝すると同時に、誇りとされ、愛される人と会社であること」という3つからなる経営理念は、赤嶺氏自身が2年の歳月をかけて考案したものだ。
その背景を赤嶺氏は、「社員が増える中、意思の統一を図るものが必要だと感じていました。事業ですから収益を上げないといけませんが、産業廃棄物処理は社会インフラでもある大事な仕事。また、社員の夢の追求や地域に必要とされる会社になることなど、常に私の頭の中にある考えを文書化して伝えたいと思いました」と振り返る。さらに、7カ条からなる社訓を社員の行動指針として明確化。これによって日常業務の品質向上につながっている。
経営理念に基づいたリーダー育成に注力
経営理念と社訓のカードを
従業員に配布。
携帯しやすく、いつでも確認できる会社が急成長を遂げる今、同社が特に力を注いでいるのが人材育成だ。「会社を成長させるのは人」と言い切る赤嶺氏だが、社員数が急増する過程では「社員をどうまとめていくか悩んだ時期があった」と打ち明ける。
そこから、同社の社員教育が本格的にスタートした。社員をまとめるリーダーの教育が必要との考えに至った赤嶺氏が、何よりも先に取り組んだのは、社長である自分自身の教育だった。
「当時は私自身がまだ若く、人として未熟な部分がありましたし、経営者としても経験不足でした」(赤嶺氏)
リーダーをまとめるリーダーになるべく、率先して人づくりやリーダーシップ、経営について学んだ上で、部長、課長などリーダー層への教育を推進していった。
具体的には、社内プロジェクトの推進や資格取得制度の導入、タナベ経営が主催する「幹部候補生スクール」への派遣、また最近、スタートした計数管理に関する勉強会といった多面的なアプローチからリーダー育成に取り組んでいるが、中でも重視しているのが経営理念の浸透や社訓を通した人間教育の徹底である。
日々の朝礼や会議などで伝えているほか、赤嶺氏自身が定期的に経営理念に基づいて業務が行われているかを確認したり、リーダーと話し合ったりするなど、現場に繰り返し伝える努力を怠らない。「会社経営に数値管理は不可欠ですが、一番大事なのは経営理念です。社員のためになっているか、顧客のためになっているか、社会のためになっているかを常に確認しながら、人の成長につながる数字、社会的課題の解決につながる数字を追求するという軸がぶれないように徹底しています」(赤嶺氏)
こうした地道な努力を続けた結果、「リーダーの意識が変わってきた」と赤嶺氏は手応えを感じている。次なる目標は、この変化を会社全体に広げていくこと。今期は社員教育の対象を若手にも広げるほか、今後は体系的な教育システムである社内アカデミーの導入も進めながら充実を図っていく考えだ。
【経営理念】
一、総合環境サービスの提供を通じ、自然との調和の取れた人類社会を創造すること。
一、永続的に力強く成長発展する会社をつくり、全従業員の夢・目標を実現すること。
一、地域の支えに深く感謝すると同時に、誇りとされ、愛される人と会社であること。
沖縄県内の廃棄物は全て県内で処理したい
街クリーングループ 代表
赤嶺 太介氏産業廃棄物の最終処理業として沖縄県にも大きく貢献している同社だが、赤嶺氏が見据える先にあるのは一歩進んだ街クリーングループの姿だ。
「許可の関係もあり、現状は一部の廃棄物に関しては県外に出していますが、県内で出た廃棄物は全て県内で処理できる沖縄でありたいと私は願っています。その際、単に処理するだけでなく、できる限り資源化、エネルギー化する環境に優しい体制を構築したい。これには他社の協力や地域の理解が欠かせませんが、まずは当社がその体制づくりに取り組んでいこうと考えています。3年以内の実現が目標です」(赤嶺氏)
県内の産業廃棄物を全て処理できる体制づくりは地域や社会に貢献するだけでなく、地産地消型の先行モデルにもなり得る挑戦だ。これが成功すれば、同社に飛躍をもたらすことは間違いないだろう。
だが、狙いはそれだけではない。赤嶺氏が目指すのは、仕事を通した社員の夢の実現だ。「新しい領域に事業を広げながら、各部門の専門性を高めて新しい会社として独立させていくのが理想の形。社員には、仕事を通して今以上にやりがい、生きがいを感じてほしいと願っています。そのための挑戦でもあります」(赤嶺氏)
この挑戦にはさまざまな壁が立ちはだかるだろう。しかし、赤嶺氏の目には、現在のリーダーが経営者となり成長していく姿、そして彼ら・彼女らが自社を大きく成長させていく姿がはっきりと映っている。
タナベ コンサルタントEYE
経営コンサルティング本部 部長
チーフコンサルタント 川口 勉設立から30年を迎えた街クリーングループ。経営理念として「総合環境サービスの提供を通じ、自然との調和の取れた人類社会を創造する」を掲げ、社会性の高い事業で沖縄経済の発展に貢献している。廃棄物量の増加と県内の建設ラッシュに基づく需要増加を背景に、業績は右肩上がりに成長しているが、要因は環境変化だけではないだろう。赤嶺氏の常に先を見据えた先見力と決断力の根底には、明確なビジョンがある。近年は人材育成と採用を大きなテーマとし、「"個"の成長なくして企業の成長はない」と断言する赤嶺氏の眼は、ビジョン実現を目指し、常に未来に向けられている。
会社プロフィール
- 会社名
- 街クリーングループ
- 所在地
- 沖縄県南城市玉城字船越1237-1(営業本部)
- 創業
- 1989年
- 代表者
- 代表 赤嶺 太介
- 売上高
- 20億5000万円(2019年3月期、速報値)
- 従業員数
- 127名(2019年4月現在)