取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの
創業50周年を迎える総合パッケージングカンパニー
丸信 代表取締役社長
平木 洋二氏 パッケージに引かれて思わず商品を手にする、いわゆる「パケ買い」をした経験がある人は少なくないだろう。
福岡県久留米市に本社を構える丸信はそうしたパッケージの製造販売企業だ。食品メーカーのパッケージ印刷で九州トップクラス、シール印刷では全国屈指の規模を誇る。
1968年、進物用シイタケの木箱製造から始まった同社は、包装資材卸を経てシール印刷へ進出。1990年にはM&Aにより、パッケージ印刷へと業容を広げてきた。現在は九州、広島、東京に10拠点と、2社の子会社を有する。
「お客様への感謝」「お客様の業績向上への貢献」を企業理念に掲げる通り、「『お客様の役に立てる会社になる』ことが経営の基本的な考え」と話すのは、3代目社長の平木洋二氏。
「社員にはお客様の利益を優先し、良いデザイン、高い品質、コスト削減などに力を注いでほしいと考えています。売り上げや利益目標はありますが、その達成を厳しく求めることはないですね。こうした数字は自社の都合で、お客様には関係ないですから」
平木氏はそう話すが、同社の売上高が前年実績を下回ったのは創業してから1度だけ。あとは一貫して増収を続けてきた。その実績があるのは、顧客の役に立ちたいという思いで絶えず進化を遂げてきたからに他ならない。
一人でも多くの社員をスターに
人材育成への考え方として、平木氏は「一人でも多くの社員をスターにするのが目標。教育や経験を積み、お客様や世の中の役に立ってもらいたい」と言う。そのため、委員会、プロジェクト、改善活動の発表会など、社員が脚光を浴びる場を意識的に作り出している。
委員会はコスト削減、品質向上、CS(顧客満足)、新製品開発など10のテーマを設けて開催。積極的に若手社員を委員長に抜擢しているのは、「早いうちから経営に参画してもらい、『自分の会社』という気持ちを持ってもらいたい」思いからだ。
委員会のテーマが自社の課題解決と直結するのに対し、プロジェクトは顧客への提供価値を高めるテーマが中心。具体的には通販、食品衛生管理の支援などで、例えば食品衛生管理の一環として、専門資格を持つ社員が顧客企業にアドバイスや指導を行い、HACCP(ハサップ)の取得を支援する。プロジェクトへ取り組む際、「お客様への提供価値向上に直結するので、社員は皆、いきいきしている」と平木氏はほほ笑む。
2017年10月には、取引先中心に自社工場を見学してもらうオープンハウスを実施。前述のHACCP取得支援、通販の仕組み、DM(ダイレクトメール)活用と成功事例など、顧客先のビジネスに直結するセミナーも併せて開催し、2日間で約800名が訪れるなど好評だったという。「実際に工場や本社を見てもらい、当社の事業の幅を知ってもらうよい機会になった」と平木氏。2018年も11月に開催予定だ。
人材育成こそ最大の福利厚生

「丸信アカデミー」など多様な教育メニューを提供し社員の成長を支援している(左)
「人材育成こそ最大の福利厚生。社員にできるだけ多くの教育の機会を与えたい」(平木氏)との考えから、同社ではさまざまな教育メニューを提供している。
顧客企業の仕事を手伝い、顧客目線を養う「お客様研修」、週1回気付いたことを報告する「気づき提案制度」、指定図書の感想をメーリングリストに挙げる「輪読会」はその一例だ。
また、丸信が企業内大学「丸信アカデミー」を開校したのは2017年。社員が講師を務める動画で学べる仕組みで、1本30分の動画にまとめている。内容は印刷の基礎知識、デザインの流れなど合計約40本に及ぶ。社員は場所を選ばず、学びたいときに繰り返し受講することが可能だ。
「これまでは場当たり的な研修が多く、年次ごとに必要な教育を体系立てて実施する仕組みが構築できていなかった。当社の"知見の集まり"として、アカデミーでコンテンツを蓄積できれば」(平木氏)
アカデミーには基礎的なコンテンツのほか、「失敗談」「業界別の攻略法」といった独自のコンテンツもそろえる。今後もさらなるコンテンツの充実を検討中だ。「受講者層を広げていくのが課題。将来的には階層別のカリキュラム構築も視野にある」と平木氏は語る。
女性が働きやすい環境づくりにも力を入れる。11月には「丸信インターナショナル保育園」を開園予定(運営は外部専門会社へ委託)。英語をベースとした幼児教育、病児保育の受け入れや同社独自のデザイン教育などを行う予定だ。社員だけでなく、地域の人々にも利用してもらいたいと、女性役員が中心となり開園に向けて準備を進めている。
これからも「お客様の課題を解決し、一つ一つできることを増やしていく」と平木氏。すでに販路づくりや人手不足に悩む顧客の課題解決に向け、食品通販サイト開設や、大手求人サイトを使った顧客企業の人材募集に取り組み始めている。「真にお客様の役に立つ」ため、既存事業の枠を超え、同社の進化は続く。
タナベ コンサルタントEYE
タナベ経営 経営コンサルティング本部
本部長代理 戦略コンサルタント
中尾 泰彰福岡県は、食料品製造業の事業所数(924事業所)が全国5位、出荷額(約9920億円)は同10位※と全国有数の食品メーカー集積地である。その福岡に本社を構え、食品メーカーへパッケージを提供するのが丸信だ。
モノを包むパッケージは、商品価値を顧客に正しく届ける「無言のセールスパーソン」。同社は社員一人一人の感性と最先端のデジタルを融合し、価値の可視化のプロフェッショナル企業として成長を続ける。
平木社長は常に先を読み、素早い判断でヒトとモノに積極投資を行っている。成長企業は同社のように、持続的に未来へ投資するものだ。今後、どのような付加価値を生み出すのか、同社の活躍から目が離せない。 ※ 経済産業省「工業統計調査(2017 年確報)」
会社プロフィール
- 会社名
- 株式会社丸信
- 所在地
- 〒839-0813 福岡県久留米市山川市ノ上町7-20
- TEL
- 0942-43-6621(代)
- 創業
- 1968年
- 資本金
- 4500万円
- 売上高
- 87億1000万円(2018年2月期)
- 従業員数
- 441名(2018年2月現在、パート含む)
- 事業内容
- 包装資材販売、シール印刷加工、紙器印刷加工、その他商業印刷
- URL
- https://www.maru-sin.co.jp/