1.営業DXとは
デジタル・トランスフォーメーションの定義について、総務省『令和3年版 情報通信白書』では、以下のように定義しています。
Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革をけん引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
(総務省『令和3年版 情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112210.html)
営業におけるデジタル・トランスフォーメーションは、ネットとリアルの両面で営業活動を行い、顧客体験価値を変え、成果につなげていくことだと考えます。
2.営業DXが注目される背景/重要性
総務省『令和3年版 情報通信白書』では、コロナ禍において、企業におけるデジタル・トランスフォーメーションがあらためて注目されている要因として、4つ考えられると記されています。
1.スマートフォン等の普及に伴う消費行動等の変化
2.デジタル・ディスラプションの脅威
3.リアル空間を含めたデータの増大・ネットワーク化
4.デジタル市場のグローバル化
(総務省『令和3年版 情報通信白書』
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd112230.html)
その中でも、営業DXにおいては、スマートフォン等の普及に伴う消費行動等の変化とリアル空間を含めたデータの増大・ネットワーク化の影響を受け、企業側の変化が求められています。
『スマートフォン等の普及に伴う消費行動等の変化』について
消費行動等の変化の背景には、あらゆる業種・業態においてこれまでにない新しい製品やサービス、ビジネスモデルを展開する新規参入企業の登場があります。これは、BtoC企業に限ったことではなく、BtoB企業の購買者行動にも変化が起きています。特に、情報収集段階で購買者が営業担当と会う割合も低くなってきております。すでにサービスの比較・検討を済ませた段階で問い合わせをする形に変わってきていると感じている企業もいらっしゃるのではないでしょうか。
『リアル空間を含めたデータの増大・ネットワーク化』について
新規顧客の営業においてこれまでリアル営業を行っていた場合は、初回アポイントのタイミングでお客様の関心事などを1から情報収集をする形でした。ただし、現在の顧客はサービス、関連情報をネットワーク上で調べています。営業との商談前にインターネット上で行動し始めています。したがって、その行動の情報をうまく取り込み、自社の営業活動に活かすことで優位性を作っていくことが重要となってきます。
3.営業DXを推進するデジタルツールの活用
営業DXを推進するデジタルツールの活用について、リード獲得からリアル営業につなげる活動における一例についてご紹介します。ただし、デジタルツールを導入することは手段であり、導入後いかに業務の効率化を図り、営業担当者がお客様の課題解決に時間をあてられるかが重要となります。
(1)マーケティングサイト
営業ツールで例えると、営業提案書の役割を果たすWebサイトです。見込客の集客・リード獲得・育成・ホット客抽出のみを目的として構築を行います。詳細な商品説明、事例紹介、業種別・課題別記事、よくある質問、お役立ち資料など、見込客が望む情報のみで構成します
(2)マーケティングオートメーションツール
顧客・見込客のWeb上の行動を自動的に記録するツールです。メール発信も可能です。すべての見込客がホットリードではないため、クールリードとのつながりを保ちながらホットリードへと育成していけるように、定期的な接点をネット上で作っていきます。
(3)CRM
自社と顧客との関係性を主軸とした顧客情報の管理を目的としています。機能面において、CRMはSFAと共通点が多いですが、商談・案件を軸とするSFAと違い、CRMは顧客とのコミュニケーションを軸に情報を管理しています。
(4)SFA
顧客情報や営業ステータスの一元管理、営業メンバーの行動管理、売上管理や予測といった機能を備えており、営業活動の効率化を得意としています。
4.成功事例から学ぶ営業DXのポイント
営業DXに取り組む上で、お客様や社内外の利用者に寄り添うためには、営業やインサイドセールスなど社内の複数部門をまたぐ関係者と連携し、全社の取り組みとして推進することが重要です。DX担当部門の設置だけでなく、全社を巻き込める意思決定のもと、お客様に寄り添った営業DXを実行していくことが大切です。
最後に、A社の事例を紹介します。A社はサイトを改修し、デジタルマーケティングを推進しています。新型コロナウイルスの蔓延によって対面での接触が減り、Web会議システムを利用したオンラインでの営業に切り替わったことがサイトリニューアルの一つの理由で、情報交換ができる場を目指しました。
A社では、サイト構築前にお客様向けの調査を行ったそうです。お客様がどのような情報が見たいのか、なぜ見たいのか、どんな時に営業に連絡が取りたいのかなど顧客理解を深めることで、お客様が必要とする情報を最適な接触タイミングで提供できる仕組みづくりができたそうです。
また、デジタルマーケティングを導入した当初は、社内でも温度差がありました。そこで、営業部門に対し、デジタルマーケティングの目的や意図、使い方に加えて、どのように営業活動に活かしてほしいのかを丁寧に説明をし、社内へデジタルマーケティングを浸透させていきました。
お客様だけではなく社内の営業にとっても、デジタル活用における多少の摩擦はどの企業においても起こる可能性があります。利用者は、お客様だけでなく社内にもいるという点で、社内に向けて目的と意図を共有し、全社の取り組みとして落とし込んでいくことが重要だといえます。
5.まとめ
タナベコンサルティングでは、営業戦略からデジタルマーケティング戦略の具体策設計・Webサイト制作・MAツール実装・インサイドセールスの立ち上げ・広告運用まで、煩雑になりがちなデジタルマーケティングを、立体的かつ一気通貫でサポートします。お悩み事があればぜひお気軽にご相談ください。
自社に眠る財産であるハウスリストを活用し、見込み客を顧客へ変えていくリードナーチャリングのメソッドを提言します。