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M&Aの流れを解説!
進め方と重要ポイントがわかる「入門ガイド」

2026.08.04

M&Aを検討し始めたものの、「何から手を付ければよいのか分からない」「契約や交渉の流れが難しそう」と感じる経営者の方は少なくありません。特に中小企業では、後継者不在や今後の事業展開を考える中でM&Aが選択肢に入っても、具体的に何を行うのかが見えにくく、最初の一歩を踏み出しにくいものです。

全体の流れを理解し、それぞれの段階で必要な判断や資料、注意したいリスクを押さえておくことが大切です。

この記事では、M&Aが初めての方向けに、基本的な流れを順番に解説します。専門用語はできるだけ平易にしながら、何を目的に、どのタイミングで、誰に相談するべきかまで整理していきます。

M&Aの流れを解説!進め方と重要ポイントがわかる「入門ガイド」

1.M&Aの基本的な流れとは?


M&Aは、企業や事業を引き継いだり、統合したりする取り組みの総称です。中小企業では、後継者不在に対応する事業承継の手段として検討されることが多く、買い手にとっては新しい市場や人材、技術を取り込む手段にもなります。

ここで重要なのは、M&Aの目的を最初に整理することです。たとえば、経営者の引退を見据えた譲渡なのか、主力事業を次の成長につなげるためなのかで、相手企業の選び方も交渉の条件も変わります。目的が曖昧なまま進めると、価格だけで判断しがちになり、後から「本来守りたかったものが守れなかった」と後悔しかねません。

また、M&Aにはいくつかの方法がありますが、まず押さえたいのは株式譲渡と事業譲渡です。
株式譲渡は、会社の株式を相手に渡すことで経営権を移す方法で、中小企業のM&Aではよく使われます。会社そのものを引き継ぐ形になりやすく、契約関係や事業の継続が比較的スムーズに進みやすい面があります。

一方の事業譲渡は、会社全体ではなく、特定の事業だけを切り出して譲渡する方法です。不要な資産や負債を切り分けやすい反面、契約や許認可、従業員の承継などで個別対応が必要になることがあります。どちらが適しているかは、企業の状況やM&Aの目的によって異なります。

ここから、M&Aの流れを理解するための手順をご紹介します。

ステップ1: 準備フェーズ

最初に取り組むのは、自社の現状整理と目的設定です。なぜM&Aを検討するのか、何を優先条件にしたいのかを明確にし、必要な資料も少しずつ整えていきます。

ステップ2: マッチングフェーズ

次に、候補となる相手企業を探します。自社で探すこともありますが、M&A仲介会社やアドバイザーを活用し、条件に合う候補先を絞り込む進め方が一般的です。

ステップ3: 交渉フェーズ

候補先との面談や意向確認を経て、譲渡価格や引き継ぎ条件、経営者の退任時期などを交渉します。ここでは金額だけでなく、従業員や取引先への配慮も重要です。

ステップ4: 最終契約フェーズ

基本合意の後は、買い手側が調査を行い、問題がなければ最終契約書を締結します。契約内容はM&Aの成否に直結するため、慎重な確認が必要です。

ステップ5: クロージングとPMI

最終契約の締結後、株式や事業の引き渡し、代金決済などを行う段階がクロージングです。その後は、事業を安定して引き継ぐためのPMIに移ります。M&Aは契約締結で終わるのではなく、その後の統合まで含めて考える必要があります。

M&Aの基本的な流れとは?

それぞれの「フェーズ」について詳しく説明します。

・準備フェーズ:M&Aの目的を明確にする

準備段階で最も大切なのは、M&Aの目的を言葉にすることです。後継者がいないため会社を残したいのか、事業の選択と集中を進めたいのか、経営基盤を強化したいのかによって、進め方は変わります。ここを整理しておくと、後の交渉で譲れない条件が明確になります。

また、売り手の立場であれば「従業員の雇用を守りたい」「取引先との関係を維持したい」など、価格以外の希望も早めにまとめておくと役立ちます。こうした条件は、後から付け足すより、最初から方針として定めておく方がぶれません。

M&Aは、経営判断であると同時に、契約、税務、法務、労務など複数の論点が絡む取り組みです。初めて進める場合は、早い段階で専門家に相談することが現実的です。M&A仲介会社、ファイナンシャルアドバイザー、顧問税理士、弁護士など、役割の異なる専門家が関わることがあります。

特に初めて検討する場合は、「まだ本格的に決めていない段階で相談するのは早いのではないか」と考えがちです。しかし、実際には検討段階で相談した方が、選択肢やリスクを落ち着いて比較できます。急いで相手探しを始めるより、まず全体像を把握することが大切です。

さらにM&Aを進めるうえでは、自社の企業価値を把握することも必要です。これを企業価値評価といいます。ここでいう評価は、単なる帳簿上の資産だけではなく、事業の収益力、顧客基盤、技術、人材なども含めて考えられます。

評価額はそのまま最終的な譲渡価格になるとは限りませんが、交渉の出発点として重要です。自社の価値を客観的に整理しておくと、過大な期待や過度な値下げを避けやすくなります。

・マッチングフェーズ:候補企業の絞り込み

準備が進んだら、次に行うのは候補企業のリストアップです。ただし、どの相手でもよいわけではありません。事業の親和性や地域性、経営方針、従業員に対する考え方など、複数の観点から相手を絞り込む必要があります。相手企業との相性は、最終的な条件面だけでなく、成約後の安定した経営にも大きく影響するためです。

また、特に中小企業のM&Aでは、経営者同士の信頼関係が非常に重要です。たとえ条件面が良くても、事業への理解や引き継ぎに対する姿勢に不安がある場合には、慎重に見極めなければなりません。

こうしたマッチングの初期段階では、会社名を伏せたまま概要のみをまとめた資料を用いることがあります。これが「ノンネームシート」です。業種や所在地の大まかな情報、売上規模、事業内容などを整理し、相手候補が関心を持つかどうかを確認します。

この方法には、不要な情報拡散を防ぎながら相手の反応を見極められるという利点があります。というのも、M&Aでは情報管理が極めて重要であり、早い段階で社名や詳細情報を広く開示することには大きなリスクが伴うからです。そのため、相手が関心を示し、さらに詳しい資料を開示する段階では、一般的には秘密保持契約を締結します。これは、開示された情報を第三者に漏らさないこと、またM&A以外の目的で利用しないことを約束する契約です。

もし秘密保持契約を結ぶ前に詳細な情報を出しすぎてしまうと、取引先や従業員に意図しない形で話が広がるおそれがあります。だからこそ、情報開示には段階を設け、透明性を保ちながらも慎重に進めることが大切です。

・交渉フェーズ:条件以外の論点の見極め

候補先との対話が進むと、買い手側から意向表明書が出されることがあります。これは、その企業をどのような条件で買収したいと考えているかを示す文書です。価格の目安、スキーム、今後のスケジュールなどが記載されることが多く、交渉のたたき台になります。

意向表明書は最終契約ではありませんが、相手の考え方を読み取る重要な資料です。金額だけでなく、引き継ぎ方針や経営への関与の仕方も確認しておきたいところです。
また、交渉が前向きに進むと、基本合意書を締結することがあります。これは、主要条件について大枠の合意ができたことを確認する文書です。ここで独占交渉の期間や今後の進め方が整理されることもあります。
基本合意書は最終契約ほどの重みではない場合もありますが、実務上は次のフェーズに進む大切な節目です。内容を十分に確認せず締結すると、後で想定外の条件が出てくる可能性もあるため注意が必要です。

交渉では、譲渡価格が注目されやすいものの、それだけで判断しないことが重要です。従業員の処遇、役員の退任時期、取引先との関係維持、ブランドの継続、引き継ぎ支援の期間など、実務的に重要な条件は多くあります。

初めて交渉に臨む方は、相手の提示額が高ければ良いように見えるかもしれません。しかし、成約後の事業運営まで考えると、どの条件が自社にとって本当に大切かを整理しておくことが、納得感のあるM&Aにつながります。

・最終契約フェーズ:調査結果を踏まえて契約条件を確定

基本合意の後には、一般的に買い手側によるデューデリジェンスが行われます。これは、対象企業の実態を詳しく確認する調査で、財務、税務、法務、労務、事業面などを幅広く検証し、想定外のリスクの有無を確認するものです。

売り手にとっては、資料の提出や質問への対応が求められるため、負担の大きい段階といえます。しかし、この場面で情報を曖昧にしてしまうと、その後の信頼関係に影響を及ぼし、条件の見直しや破談につながる可能性もあります。そのため、把握している課題は早めに整理し、必要に応じて専門家と相談しながら対応方針を決めておくことが、円滑に進めるうえで重要です。

そして、デューデリジェンスの結果を踏まえ、合意内容を正式な契約としてまとめたものが最終契約書です。株式譲渡であれば株式譲渡契約書、事業譲渡であれば事業譲渡契約書が中心となります。契約書には、譲渡価格、支払方法、表明保証、補償、引き継ぎ条件などが細かく定められます。

最終契約は、M&Aのプロセスの中でも特に重要な局面です。内容や意味を十分に理解しないまま締結してしまうと、成約後に思わぬ負担やトラブルが生じるおそれがあります。したがって、法務や税務の観点も含め、慎重に確認する必要があります。

・クロージングとPMI:M&Aの成果を左右する重要な工程

最終契約の締結後、実際に株式や事業の引き渡し、代金決済、必要書類の受け渡しなどを行うのがクロージングです。この段階でM&Aは形式上完了しますが、実務はここで終わりではありません。

クロージングでは、必要資料の不備や手続き漏れがないよう、事前に準備を整えておくことが大切です。特に、契約で定めた前提条件が満たされているかどうかは、最後まで丁寧に確認する必要があります。

PMIは、成約後に組織や業務をすり合わせ、M&Aの目的を実現していくための取り組みです。具体的には、指揮命令系統の整理、会議体や報告ルールの見直し、システムや人事制度の調整、従業員への説明などが含まれます。

M&Aは契約の締結そのものよりも、むしろその後の統合が成果を左右します。買い手と売り手の考え方に大きな隔たりがあるまま進むと、従業員の不安や現場の混乱が生じやすくなります。だからこそ、成約後を見据えた準備が重要です。

M&Aを成功させるためのポイント

2.M&Aを成功させるためのポイント


M&Aを成功に近づけるためには、最初の目的設定が欠かせません。なぜM&Aを行うのか、どの条件を優先するのかを整理しておくことで、交渉の軸がぶれにくくなります。価格だけではなく、事業の継続性や従業員への影響まで含めて考える姿勢が大切です。

M&Aは自社だけで進めるには負担が大きい取り組みです。だからこそ、仲介会社やアドバイザー、税理士、弁護士など、信頼できるパートナーの存在が重要になります。手数料や知名度だけでなく、自社の事業や状況を理解してくれるかどうかも見極める必要があります。

M&Aでは、情報を守ることと、必要な情報を適切に開示することの両立が求められます。秘密保持契約を締結しながら慎重に進める一方で、相手に伝えるべきリスクや課題は隠さない方が、結果としてスムーズです。透明性を欠いた進行は、後の信頼低下につながりやすいため注意が必要です。

実際のM&Aでも、準備段階で目的を明確にしたことが、その後の成約や成約後の安定につながるケースがあります。たとえば、既存エリアで一定の基盤を築いていた企業が、さらなる成長に向けて新たな地域への展開や販路拡大を検討した際、自前で拠点や顧客を一から開拓するのではなく、相性の良い企業の譲受を選択した事例があります。

このケースでは、当初から「売上規模の拡大」だけを目的にするのではなく、既存の顧客基盤を生かしながら、新しい市場への接点を広げることや、取り扱う商品・サービスの付加価値を高めることも重視されていました。そのため、候補先の選定では、財務条件だけでなく、地域での信頼、既存取引先との関係、事業の補完性などを丁寧に確認しながら進めました。

交渉段階では、譲渡価格だけではなく、引き継ぎ後の運営体制や既存顧客への対応、現場の従業員が無理なく業務を継続できるかといった点も重要な論点となりました。結果として、条件面だけでなく成約後の統合を見据えたすり合わせを行ったことで、地域・販路の拡大に加え、顧客基盤の多角化や事業運営の効率化にもつながる形でM&Aを進められました。

このように、M&Aは単に相手を見つけて契約する手続きではなく、「何を実現したいのか」を最初に整理し、その目的に合った相手選びと条件調整を行うことが重要です。流れに沿って一つ一つ判断を重ねることが、成約後の成果にも大きく関わってきます。

3.まとめ


M&Aの流れを理解するうえで大切なのは、手順だけを追うことではありません。自社の目的を明確にし、どの段階で何を確認し、どの専門家と進めるかを整理することが重要です。準備、マッチング、交渉、最終契約、クロージング、そして成約後のPMIまで、一連の流れを見通して進めることで、納得感のある判断につながりやすくなります。

初めてのM&Aでは、不安や疑問があって当然です。だからこそ、早い段階で全体像をつかみ、必要に応じて専門家の支援を受けながら進めることが、結果的にリスクを抑え、事業の未来を考えるうえでの良い選択につながります。

M&Aは、企業の将来や事業承継に関わる大きな判断です。まだ具体的な譲渡や買収を決めていない段階でも、現状整理や選択肢の確認から相談できます。方向性に迷う場合は、まずM&Aの専門家への相談を検討してください。

このコラムの執筆者
小林 隼人

小林 隼人

M&Aコンサルティング事業部
チーフマネジャー

新聞社にて新聞販売店の経営・営業支援業務に従事後、独立系M&A仲介会社に入社。主にエネルギー系企業のM&Aなどを経験後、当社に入社。企業の事業承継課題も目の当たりにしてきた経験を踏まえ、現在はM&Aを中心としたコンサルティングを数多く手掛け、企業のあらゆる経営課題解決に取り組んでいる。

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  • LPガス会社の譲渡側・譲受側M&Aアドバイザリー
  • 産業資材卸会社の譲渡側・譲受側M&Aアドバイザリー
  • 機械器具卸会社の譲渡側M&Aアドバイザリー
  • ビルメンテナンス会社の譲受側M&Aアドバイザリー
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