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M&Aの譲渡後に起こる問題とは
~注意すべきポイントを解説~

2022.12.08

今回は、M&Aで株式譲渡または事業譲渡成立後に起こりやすい問題を、大きく2つの点から考察します。ひとつは契約に起因する問題、もうひとつは譲渡後の引継ぎ等実務面に関する問題です。

M&Aでは確認すべき点が多くありますが、契約書については、条文の些細な言い回しが後から問題に発展することもありますので、今回ご紹介する注意点をご確認いただき、事前にリスクを回避できるようにしましょう。


M&Aの譲渡後に起こる問題1~契約に起因する問題~


まず、契約に起因する問題についてですが、最終契約書には譲渡前だけではなく譲渡後に、譲渡側、譲受側がそれぞれ負う義務やリスク負担等が規定されています。基本的には最終契約書に明文化されている事項に沿って誠実に対応すれば大きな問題になることは少ないように見受けられますが、競業避止規定やその他の誓約事項等いくつか注意するポイントがあります。その中でも、特に注意しなければならないのは表明保証違反です。表明保証とは、一方が相手方に対して、ある一時点(契約締結日や譲渡日)において会社または事業の実態(財務、法務、ビジネスの状況等)に関する事実や、譲渡対象資産・契約目的物に関する事実が正確かつ真実であることを保証する条項です。譲渡側および譲受側双方に付されるのが一般的ですが、特に譲渡側にとっては表明保証の対象そのものである会社や事業を譲渡するため、より慎重に対応しなければならないものです。この表明保証で謳っている事柄が、現実の実態と異なっているときがトラブルになりやすく、多くは双方誠実な協議に基づいて解決を図りますが、内容よっては金銭補償等を請求されるケースもありますので注意が必要です。


M&Aの譲渡後に起こる問題1~契約に起因する問題~|M&Aの譲渡後に起こる問題とは~注意すべきポイントを解説~

M&Aの譲渡後に起こる問題2~業務の引継ぎに関する問題~


業務の引継ぎは、その成否がM&A取引の成否を決めるといっても過言ではないほど譲渡側、譲受側双方にとって重要なフェーズです。
引継ぎは、M&A取引の当事者以外である取引先の引継ぎや、従業員などが関与する事柄でもありますので、一定の期間を設け、情報の共有やコミュニケーションを図ることが非常に大事になってきます。なかでも最も注意すべきポイントは従業員の処遇に関する問題かと思います。従業員の処遇に関しては、最終契約にも規定される事項ではありますが、最終契約上で細かく規定されることは多くありません。なぜならば、雇用契約や雇用に関する条件は原則、従業員と雇用契約を締結する法人間の問題だからです。したがって株式譲渡であれば、一般的には「一定期間、現状の処遇を維持する」といった経過措置的な表現や「不利益変更は行わない」といった最低限の誓約的な表現に留められることが多いようです。それを受けて、実際の譲渡後に譲渡側社長から従業員へ処遇に関する説明をする際に「処遇は今までと変わらない」とだけ説明し、のちに譲受企業の賃金・就業体系に統合され、「社長から聞いていた話と違う」となることがあります。従業員の処遇は離職に直結する問題でもありますし、また不信感が募ることで新オーナーへのロイヤリティ低下を招きかねません。譲渡側としてはミスリードを生みかねない表現は避けること、譲受側からは勤務体制や社内規定等の運用に関して決定している方針は前もって正確に伝えるなど双方からのコミュニケーションが従業員の定着においては重要となります。


このコラムの執筆者
金村 修煥

金村 修煥

M&Aコンサルティング事業部 チーフマネジャー

金融機関にて主に中小事業法人オーナーに対する資産運用コンサルティング業務の経験後、大手調剤薬局チェーンにて投資業務を担当し、30社以上の買収及び売却の経験。ヘルスケア業界に明るく、M&AのエグゼキューションからPMIまでの経験から買収・売却当事者目線と事業理解を踏まえたM&Aを強みとしている。スモール~ミドルキャップ案件のソーシング、エグゼキューションに従事している。

主な実績
  • 大手小売りチェーンの地場中堅チェーンの買収におけるエグゼキューション(小売り・サービス業)
  • 大手小売企業の子会社における非コア事業の同業大手への売却にかかるエグゼキューション(医療福祉)
  • 中堅企業の買収調査のためのビジネスDD(サービス業)

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