成長M&A/承継M&A戦略サイト

M&A情報

M&Aを成功に導くアドバイザー選び
―成功企業に共通する6つの判断基準とは―

2026.09.17

後継者不在に悩む中小企業の増加を背景に、M&Aによる事業承継はいまや特別な選択肢ではなく、経営課題を解決する一般的な手段として定着しつつあります。事業承継・引継ぎ支援センターへの相談者数や成約件数は長期的に増加傾向にあり、市場の拡大とともにM&A仲介会社やファイナンシャル・アドバイザー(FA)も増加しています。

しかし、選択肢が増えたことで、譲渡を検討する企業にとって「良いアドバイザーをどう見極めるか」という新たな難題が生まれました。手数料の安さやブランドの大きさだけで選ぶと、後になって想定外の費用や条件面での不利益に直面することがあります。

本コラムでは、M&Aアドバイザー選定で企業が陥りやすい失敗のパターンと、成功企業に共通する6つの判断基準を整理します。

1.なぜ今、アドバイザー選びが難しいのか


アドバイザー選定が難しくなっている背景には、大きく3つの理由があります。

第一に、アドバイザーの数そのものが増加していることです。大手M&A仲介会社出身者の独立、地方銀行によるM&A機能の内製化など多様化が進み、手数料体系やサービス範囲、専門性もさまざまです。

第二に、比較基準が不明確であることです。譲渡企業の経営者の多くはM&Aが初めての経験であり、何が「標準的な水準」なのか判断材料を持ち合わせていません。加えて、アドバイザー側の説明は成功事例が中心となりがちで、失敗事例やリスクの説明が、選定段階では十分になされないケースもあります。

第三に、選定を誤った場合のリスクが決して小さくないことです。想定外の手数料が発生して手取り額が減少する、対応の不備から従業員や取引先に迷惑をかける、情報管理が不十分で情報漏えいにつながる――こうした事例は実際に起きています。

なぜ今、アドバイザー選びが難しいのか

2.選定で後悔しやすい5つの落とし穴


実際の相談現場で代表的な「後悔のパターン」を5つ紹介します。

① 手数料の不透明さ

着手金が無料の場合でも、中間報酬や成功報酬が高額で、トータルの負担額が見えないまま契約してしまうことがあります。最低報酬の有無、デューデリジェンスや専門家費用など追加費用の範囲は、契約前に書面で確認したほうがよいでしょう。

② 業界理解の浅さ

アドバイザーの得意分野は、製造業、運送業、医療関連など、さまざまです。自社の業界理解が浅いアドバイザーに依頼すると、的外れな候補先の選定やミスマッチにつながり、本来の企業価値が譲渡価格に反映されにくくなる可能性があります。

③ スピード優先による配慮不足

早期成約を優先するあまり、従業員への説明のタイミングや、取引先・地域ブランドへの配慮が疎かになる例があります。成約後に従業員の離職などの問題が生じる事態は、事前に営業スタイルを見極めることで回避できる可能性があります。

④ 「量」偏重の候補先提案

初回面談で数百社規模のロングリストを提示されると安心しがちですが、重要なのは件数ではなく、「誰にアプローチできるか」「どのようなシナジーの論理で選定されたか」です。マッチングロジックが不透明な提案は、本格的な検討につながりにくい傾向があります。

⑤ 最終契約書・クロージング後への準備不足

表明保証の範囲や上限額、引き継ぎ条件を詰め切れないまま契約すると、成約後に想定外の賠償請求を受けるリスクがあります。弁護士・税理士など専門家ネットワークの有無、クロージング後の支援体制も、事前に確認しておきたいポイントです。

3.成功企業に共通する6つの判断基準


手数料の多寡や知名度だけでなく、以下の6つの軸で総合的に評価することが、M&Aを成功に導くアドバイザー選びの本質です。

① 理念・意向の理解

譲渡企業の思いや優先順位(価格、スピード、従業員・ブランドの継続など)をどこまでくみ取ってくれるかを見極めましょう。初回面談での深掘りの度合いは、その後の提案の質を左右する重要な指標となります。

② 業界・規模への理解

決算書の財務データだけでなく、のれん(今後の収益力やブランド力など、貸借対照表に表れにくい価値)まで評価できるかも重要です。担当者の実績、同規模企業でのM&A経験、業界特有の論点への理解度を確認しておきましょう。

③ 案件の設計力

企業概要書や株価算定の精度に加え、自社の強み・弱みを踏まえたストーリーを言語化できる専門家を選びましょう。財務指標を並べるだけの提案と、シナジーの文脈まで説明できる提案とでは、成約の確度が大きく異なります。

④ 候補先の探索力・マッチングの質

候補先リストの量ではなく、探索の方法、実際にアプローチできる相手(経営者直下かM&A担当者か)、そして成功実績を確認しましょう。量と質の両方を担保できるネットワークを持つアドバイザーが望ましいです。

⑤ 説明責任と手数料の透明性

中小M&Aガイドライン(第3版)への準拠状況や、M&A支援機関登録の有無は、信頼できるアドバイザーかどうかを見極める際の客観的な確認材料となります。もっとも、登録の有無だけで支援品質を判断せず、手数料や支援内容も含めて確認することが重要です。契約前に手数料体系を書面で説明できるかも確認しましょう。

⑥ クロージング後(PMI)の伴走力

M&Aはクロージングがゴールではありません。経営統合(PMI)支援まで対応できるか、対応する場合の報酬体系はどうなっているかなど、成約後も継続的に伴走できる体制の有無が、長期的な事業承継の成否を分けます。

成功企業に共通する6つの判断基準

4.アドバイザー選定の実践プロセス


実際の選定は、次のようなステップで進めると良いです。

① 自社の条件・優先順位を整理する
② 仲介会社・FA・士業事務所などから幅広く情報収集する
③ 2〜3社と面談し、比較検討する
④ 上記6つの判断基準に沿って質問し、総合評価する
⑤ 担当者との相性を確認する
⑥ 納得できるパートナーと契約を締結する

一社だけで即断せず、複数社を比較する時間を確保すること。そして、価格や手数料だけでなく、従業員・取引先・地域への配慮まで含めて総合的に評価すること。この2点が、後悔のないアドバイザー選びの土台となります。

おわりに


M&Aは単なる資産の売買にとどまらず、経営者が築き上げてきた企業理念や、従業員・取引先との関係を次の世代へ引き継ぐプロセスでもあります。だからこそ、アドバイザー選びはM&Aを成功させるための「大前提」であり、最初の、そして最も重要な意思決定と言えます。
「大手だから安心」「手数料が安いからお得」といった単一の軸ではなく、本コラムで挙げた6つの判断基準をもとに、自社に最も合うパートナーを見極めていただければと思います。

このコラムの執筆者
稲田 享広

稲田 享広

M&Aコンサルティング事業部
チーフマネジャー

金融業界にて法人・個人営業の経験、税理士事務所にてM&A担当を経験後、当社に入社。後継者不在企業において、M&Aニーズのヒアリングから、書類作成、ソーシング活動など事業承継M&Aに従事。顧客に寄り添い、顧客の要望を丁寧にヒアリングしていくコンサルティングスタイルに定評がある。

主な実績
  • 運送会社の譲渡側M&Aアドバイザリー支援
  • 調剤薬局の譲渡側M&Aアドバイザリー支援
  • 医療機器等卸売会社のM&A仲介支援
  • ガソリンスタンドの譲渡側M&Aアドバイザリー支援
  • 医療法人およびクリニックの譲渡側M&Aアドバイザリー支援
  • 産業廃棄物処理会社の買収のための財務DD
  • ゲーム会社の買収のための財務DD

おすすめオンデマンド

一覧はこちら

サービス

事業承継・M&A無料相談会

M&Aお役立ち資料

戦略からPMIまで一気通貫で支援するTCG M&A一貫コンサルティング<br>~サービス概要~

戦略からPMIまで一気通貫で支援するTCG M&A一貫コンサルティング ~サービス概要~

M&Aの戦略立案から交渉、PMI、買収後の成長支援までを一気通貫でサポートします。譲受企業・譲渡企業の双方に対し、企業価値向上につながる"M&Aを経営として成功させる"コンサルティングを提供しています。

事業承継・M&Aを成功させるための事前準備チェックリスト

事業承継・M&Aを成功させる
ための事前準備チェックリスト

譲渡に向けて事前に準備はできていますか?譲渡企業向けにM&Aを成功させるための事前準備チェックリストをぜひご活用ください。

2025年度M&Aの取り組みに関するアンケート

2025年度M&Aの取り組みに
関するアンケート

2025年度のアンケート調査から見えてきた、業績により「二極化」するM&A戦略の実態とは?アンケート結果をもとに、最新のアライアンス動向や規模別の課題を解決するM&Aのポイントについて解説します。

相談会

【譲渡企業向け】
事業承継・M&Aに関する相談会
  • 事業承継期を迎えているが後継者がいない
  • 成長が鈍っている事業の譲渡を検討している
  • 資本力を得て、もっと会社を成長させたい  など
貴社のお悩み・課題に対して専門コンサルタントがその場でアドバイスいたします。
【譲渡企業向け】事業承継・M&Aに関する相談会

無料セミナー情報

もっと詳しく