COLUMN

2024.02.09

パーパスが経営のサステナビリティにもたらす効果と取り組みの事例

パーパスが経営のサステナビリティにもたらす効果と取り組み事例

大手企業を中心にパーパスを掲げる企業が増えています。これは、不確実性の高い時代において、企業の持続的性を維持するため外部環境に柔軟に対応することは必須である一方、それによって、ともすれば軸がぶれることもあるため、創業の精神や社会性などその成り立ちの根本もしっかりと見つめ直す経営が重視されていることが原因と考えられます。
パーパスとはどのような概念で、経営のサステナビリティにどのような効果をもたらすのでしょうか。今回の記事で詳しく解説します。

パーパス経営とは

パーパス経営とは「社会的意義」を基軸とした経営です。何のために、誰のために、企業が存在して事業が成立するのかを明確にすること、そしてその目的が社会全体の幸福や社会のニーズに応えることを約束する経営ともいえます。

「企業が自社の事業を通じて社会に貢献する存在意義・目的を見出して提供する」 ことがパーパス経営の意味であり、これを文章にしたものが企業のパーパスです。

そして、パーパスを起点として意思決定し、それを実践することをパーパスドリブンといい、行動指針となります。

ミッション・ビジョン・バリューとの違い

企業理念や経営理念を具体的に表現するためのフレームワークとしてMVVがあります。それぞれの意味は以下の通り。

・ミッション(Mission) = 使命
・ビジョン(Vision) = 将来像
・バリュー(Value) = 価値・価値観

従来のMVVは、社会的視点がなくても成立しました。顧客に対するサービスを考えるだけで十分と考えられていたためです。

パーパスはこれらに社会的あるいは環境上の視点を加えるものです。つまり、パーパスのあるMVVが、現在の企業が設定する目標といえます。

パーパス経営とは

パーパス経営4つの効果

パーパス経営にとって重要なことは、戦略立案や意思決定をパーパスをもとに行い、パーパスを社内に浸透させ、投資家や消費者にアピールすることです。ここからは、パーパス経営によりもたらされる結果を4つ紹介します。

効果①社会における企業の立ち位置を明らかにできる

企業が社会における自社の役割を明確にすると、企業の立ち位置が社会に認識されます。企業の社会的な存在価値を消費者が支持すれば、他社との差別化につながるでしょう。

この企業は「環境貢献で成果を上げている」「労働環境改善に積極的だ」という評価は、企業のスタンスが消費者に伝わっていることを意味します。企業イメージやブランディングにとってもプラスに作用するでしょう。

効果②事業の目的が明確になる

単に利益のためだけに事業を行っているのであれば、事業自体はどのようなものでも構いません。しかし、パーパスによって社会的意義に基づいた事業であると意識すると、事業の目的が明確なものに変わります。

パーパス経営をすると、市場のトレンドに変化が起きても大きな影響を受けません。意義が失われない限りは事業を存続できるでしょう。社会に対する普遍的な価値を維持できます。その結果、斬新で個性的な事業の展開(イノベーション)が可能となります。

効果③ステークホルダーからの支持・共感が得られる

たとえば環境に優しい製品開発など、基本的に多くの人々が意義を感じられる事業は共感を得やすいといえます。企業や従業員や株主の利益だけでなく、社会全体にベネフィットのある事業を目的にすると、多くの顧客から支持を得られるでしょう。

パーパス経営は社会的な意義を起点として進められ、ステークホルダーのみならず、就職希望者にも良い印象を与えられます。企業の成長にも繋げられます。

効果④従業員のモチベーションを向上させる

「社会から歓迎される企業に所属している」という帰属意識は、従業員の仕事に対するモチベーションを向上させます。体面として誇らしく、そのうえ「自分たちの仕事は社会をよくする」ような喜びが感じられるためです。

従業員がパーパスを理解すれば、指針にしたがって自発的に行動できるようになります。意思決定が迅速化して、業務効率が向上するでしょう。経営者の数よりはるかに多い従業員が同じ方向に動くパワーは計りしれません。

サステナビリティとは

サステナビリティ(Sustainability)とは「持続可能性」を意味します。自然環境や経済・社会あるいは健康などの状態を将来にわたって維持できることをいいます。

サステナビリティを保つ活動には次のようなものがあります。

・経済開発: 健全性の維持・社会のための活動・環境への投資
・社会開発: 将来を見据えた教育・文化と環境を壊さない観光・健全な働き方
・環境保護: 生態系の維持・再生可能エネルギー開発・環境負荷に配慮する

サステナビリティの具体的な目標を取り決めたものをSDGsと呼びます。

サステナビリティとは

今後サステナビリティが重要になる理由

SDGs(持続可能な開発目標)の採択や、CSR(企業の社会的責任)の一般化によって、企業のサステナビリティへの認識が広まりました。
不確実性の高い時代においても、企業は社会に価値を提供して、持続的に成長・向上することが求められます。ここからは、企業の成長においてサステナビリティが重要になる理由を紹介します。

不確実性の高い時代背景

ICTによる劇的な社会変化、CO2や気候変動、紛争による経済への影響などにより、未来を想定できない経営環境が続いています。

不確実性の高い時代には、SDGsをはじめとしたサステナビリティの考え方が重要です。特に、VUCA(ブーカ)やESG投資への対応が求められるでしょう。

・VUCA: Volatility(変動性)Uncertainty(不確実性)Complexity(複雑性)Ambiguity(曖昧性)の総称
・ESG投資: Environment(環境)Social(社会)Governance(企業統治)に関わる投資を呼び込むこと

これらを経営に取りいれることで、事業を持続可能なものに変えられます。

不確実性の高い時代背景

イノベーションの必要性

ESGに取り組むと、企業はこれまでにない価値観を手に入れられます。自社の価値を社会課題の解決に繋げられるでしょう。

一過性ではないサステナブルな価値を生み出すには、企業は人間社会の普遍的な価値に目を向けて本質を追求しなければなりません。そのうえで、イノベーションを起こす必要があります。

「ピンチはチャンス」という言葉もあるとおり、多くの人々が抱えている問題に果敢に取り組むと、イノベーションは生まれます。ピンチのときにも生き残れるように、持続可能な経営を意識していきましょう。

企業におけるパーパスとサステナビリティの関係

サステナブルな価値を生み出すには本質を追求する取り組みが必要です。それはすなわち企業の存在意義を見出すこと、すなわちパーパスにつながります。

パーパス経営でESG(環境・社会・ガバナンス)の課題に向き合うことは、企業と社会のサステナビリティに大きく貢献します。

企業におけるパーパスとサステナビリティの関係

パーパス経営の取り組み事例

記事の最後に、パーパス経営に取り組む有名企業の事例をご紹介します。日用品の開発や、環境に影響する商品を製造する企業にとって、パーパスは必然的に発生する概念です。有名企業の例を、自社のパーパスの参考にしてください。

事例①キリンホールディングス

キリンは「社会課題の解決に取り組むことで社会と共に成長する」というパーパスを掲げ、CSV(Creating Shared Value)の先進企業を目指しています。 CSVとは「共有価値の創造」を意味します。これは事業活動が社会課題を解決すると企業の利益につながるという考え方です。

酒類メーカーとしての責任を前提として、社会課題としての「健康」「コミュニティ」「環境」の課題解決に取り組んでいます。そのうえで、心豊かで幸せな未来に貢献することがキリンのパーパスです。

事例②ユニリーバ

ユニリーバは「サステナブルな暮らしを"あたりまえ"にする」という世界共通のパーパスを掲げ、サステナブルな成長戦略「ユニリーバ・コンパス」を策定しています。

主なビジョンは以下の2つです。

・サステナブルなビジネスのグローバルリーダーとなる
・財務業績として業界の上位1/3に入る


また、「サステナブル・ビジネス」の戦略方針として次のことを定めています。

・ネットゼロ(カーボンニュートラル)の実現
・ごみのない世界・プラスチックの削減
・自然と農業の再生
・バリューチェーンにおける生活水準の向上

これらへの取り組みを通じて、環境にも顧客にも優しい企業を目指しています。

まとめ

今回の記事は、パーパス経営について紹介しました。サステナブルな世界を目指すために、企業は社会的意義をもとにしたパーパス経営を行う必要があります。パーパス経営で利益を上げると、社会も企業も持続的に成長していくでしょう。

パーパス経営やサステナブルな取り組みは一朝一夕にできるものではありません。今回の記事を参考に、できることから取り入れていきましょう。ビジネスの本質を見据えて、長期的視点で取り組んでください。

著者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

村上 幸一

ベンチャーキャピタルにおいて投資先企業の戦略立案、マーケティング、フィージビリティ・スタディなど多角的な業務を経験後、当社に入社。豊富な経験をもとに、マーケティングを軸とした経営戦略の立案、ビジネスモデルの再設計、組織風土改革など、攻守のバランスを重視したコンサルティングを数多く手掛けている。高収益を誇る優秀企業の事例をもとにクライアントを指導し、絶大な信頼を得ている。中小企業診断士。

村上 幸一

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