STUDY

新規事業を成功させる市場調査のポイントと
進め方・方法について解説

山本 剛史

本プログラムの執筆者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部
ストラテジー&ドメイン(大阪)担当 兼 ドメイン大阪・東京担当
住まいと暮らしビジネス成長戦略研究会サブリーダー

山本 剛史

大手ゼネコンにて設計・監督業務に従事後、当社に入社。事業戦略を事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定してビジネスモデル革新を行うことを得意とするタナベ屈指のコンサルタント。成果にこだわるコンサルティング展開で、特に現場分散型の住宅・建築・物流事業、多店舗展開型の外食・小売事業で、数多くの生産性改善実績を持つ。

新規事業を成功させるためには、市場調査が重要なことはいうまでもありません。一方で、そのことを認識しつつも、どのような進め方をしてどのような調査をすればよいかが明確に捉えられていないこともあるでしょう。
この記事では、市場調査のポイントと進め方、方法について解説します。

新規事業を成功させる市場調査のポイント

市場調査は、事業の成否を決めるといっても過言ではありません。
事業に利益をもたらすのは、市場であるためです。新規事業を成功させるために、市場調査ではどのようなポイントに着目すればよいでしょうか。
ここでは、市場調査において重要なプロセスについて解説します。

調査ターゲットを具体的に設定する

新規事業を立ち上げるプロセスでは、最初に目的があり達成するための戦略があります。
ターゲット層の把握は戦略のベースとなるもので、捉え方を間違えると売上が低迷し持続させることが難しくなるでしょう。

市場調査では、最初に事業の対象となるターゲット層を特定しましょう。年齢・性別・ライフスタイル・嗜好などの属性を具体的に設定します。
属性を絞り込みすぎるとユーザーが限られてしまうため、大きなくくりにするかターゲットを複数設けるとよいでしょう。

仮説を立てる

ターゲット層が明確になれば、それらのユーザーの購買行動や自社との関わりについて仮説を立てましょう。具体例としては、以下のようなものがあります。

・ターゲットユーザーはここ(媒体・店舗)で自社と出会うだろう
・出会ったユーザーは自社サービスをこのように捉えるだろう
・このようなプロモーションをすれば顧客を獲得できるだろう

施策は仮説をもとに実行されるため、仮説が明確であれば結果が仮説のとおりになったかを容易に評価できます。

適切な方法・手法を選択する

仮説に基づいて適切な方法・手法を選択し、施策を実行します。

市場調査の方法は、「デスクリサーチ」と「フィールド調査」の両方のアプローチが必要です。それぞれの側面から、具体的にどのような方法で調査を行うかを決めましょう。

市場の統計や業界のデータ、競合他社について報告されているメディアの記事などを調査するとともに、自社も独自にデータを収集します。両者を整合させながら検討することによって、データの信頼性を高く保つことが可能です。

調査範囲(いつまで・どこまで)を決める

市場調査の費用対効果を高めるために、調査範囲を決めておきましょう。
調査データは多いほうがよい一方で、調査範囲が広いと時間がかかり、費用も多額になります。例外的な情報が増えて、判断しにくくなるおそれもあります。

・調査期間(いつまで)
・対象の範囲(どこまで)
・内容の詳しさ(どのレベルまで)

これらの調査範囲を明確にし、調査作業に負担がかかり過ぎないようにします。目的を達成することを念頭に置き、調査のための調査にならないように気をつけましょう。

新規事業の市場調査の進め方

ここでは、新規事業についての市場調査の進め方について確認しておきましょう。
新規事業に関する市場調査は、一般的に以下のステップで行われます。

1.目的を確認する
2.調査期間・予算を決める
3.調査方法を決める
4.調査を実施する(デスクリサーチ/フィールド調査)
5.結果を分析する
6.意思決定を行う

調査目的の明確化が、最初に必要です。調査の大きな目的としては、新規事業をスムーズに立ち上げることや売上を増やして成長することなどが挙げられます。
そのためのノウハウの収集や他社との差別化、効率のよい投資などが個別の目的となり、各目的に必要なデータを収集することが市場調査の課題となります。

集めたデータの分析手法としてはPEST・SWOT・STP・4Cなどがありますが、どの分析方法を使うかをあらかじめ決めておけば、最適なデータを集めやすいでしょう。

新規事業の市場調査の方法①デスクリサーチ

ここでは、新規事業の市場調査の方法のひとつであるデスクリサーチについて解説します。
文献やインターネット上の情報を調べ、統計データや調査機関のレポートを参考に市場調査をまとめるのがデスクリサーチです。

公開データの利用

デスクリサーチの多くは、公開されたデータを利用します。文献やインターネットに公開されている情報が対象です。

政府機関のWebサイトでは統計や白書など、政府や関連機関の調査したデータが常に公開されています。企業や業界団体などが公開するデータもあります。
ネット上の公開データは取得が容易ですが断片的で前提条件がまちまちのため、複数のデータを利用する際には前提条件を揃えることが必要です。

調査会社からのデータを購入

マーケティング調査会社は、文献や自社のWebサイトで市場調査レポートを発行しています。
プレスリリース用など一部のデータは無料公開されますが、多くは有料のデータで利用するためには購入が必要です。

調査会社はテーマを定めて専門的な調査を実施しているため、特定の内容について深く知りたいときに有効です。
自社が新規事業で参入する市場に詳しくて定評のある調査会社のデータからは、有用な分析を手に入れられる可能性が高いでしょう。

Web・SNSのユーザー行動データの収集

WebサイトやSNSで、ユーザーがどのような行動をとるかを観測し、集計する方法があります。
他社メディアの利用状況を調べたり、自社のサイトやSNSの閲覧、いいね・コメント・シェアなどの反応を収集したりして分析します。

近年はプライバシー保護の観点から、外部のWebサイトにおける消費者の行動データ(サードパーティデータ)を利用しにくい状況です。そのため、自社サイトを利用するユーザーから得られる各種の行動データ(ファーストパーティデータ)を活用する動きが広がっています。

新規事業の市場調査の方法②フィールド調査

デスクリサーチが文字通りデスク上での調査活動であるのに対して、フィールド調査は市場に出向いたりWebサイト上に仕組みを作ったりしてデータを収集する方法です。
自社で独自に消費者の意識や行動を観察したり、問いかけをしたりしてニーズや課題を探ります。

アンケート・モニター調査

アンケートやモニター調査は、比較的容易に消費者ニーズを捉えられます。
「はい」「いいえ」で答えられる質問を用意し、選択された数を集計する「定量調査」の代表的な方法です。

調査手段は、Webサイト・SNS・アプリ・郵送・電話・訪問などがあります。Webサイト上にアンケートフォームを設置して来訪者に入力を促したり、顧客へのサポートメールにリンクを張ったりなどで回答を回収する方法が、一般的に広く採られています。

フォーカスグループ調査

フォーカスグループ調査とは、特定の層に属するユーザー数名〜10名程度のグループに対してインタビューを行う形式の調査です。
自社の試作品や広告物を見せて意見を収集することによって、アンケートよりも深いユーザーの心理・思考が分かります。

参加者の誰かが述べた感想や意見に対して別の参加者が意見を加えるなど、ブレインストーミングのように発想が広がって、多くの具体的な情報を集められる点がフォーカスグループ調査のメリットです。

観察調査

観察調査は行動観察調査ともいわれ、ユーザーの行動や動作を観察して商品・サービスの問題点や改善点、効果などを把握する調査です。
実施方法には、以下のようなものがあります。

・顧客のもとを訪れて使用状況や操作を観察する
・店舗での購買行動を観察する
・ECサイトでの購買行動を記録・評価する
・施設の利用状況を観察する

観察調査は、問題解決の考え方として注目される「デザイン思考」のアプローチです。デザイン思考とは、ユーザーの視点から商品やサービスの課題を見つけて解決策を考える手法のことです。

社内調査

社内調査とは、社内に蓄積された顧客や営業、サービスの情報などから新規事業のヒントを得る方法です。
以下のようなデータの中に、顧客のニーズや要望はあると考えましょう。

・営業日報
・商談記録
・CRMのデータ
・顧客からの問い合わせ内容
・顧客アンケートの結果
・過去の自社サービスの再評価

また、営業担当は顧客とのやりとりのなかで「こういうサービスをすれば喜ぶ人がいるのではないか」と思いつくときがあるでしょう。
現場でしか存在しえない発想があり、それらを拾い上げられることが社内調査のメリットです。

まとめ

新規事業を成功させるためには、目的を明確にしてターゲット層を設定し、適切な調査方法を用いて市場を把握することが重要です。
調査はデスクリサーチとフィールド調査の両方の側面から、自社に最適な方法を選んだり組み合わせたりする方法が効果的といえるでしょう。

WEBINAR

一覧ページへ

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業66
200業種
17,000社以上