日本企業が抱えるDX推進上の"3つ"の課題と対策方法を解説

コラム 2023.04.03
DXビジョン&ビジネスモデルDX 戦略・計画策定 プロセス・ロードマップ
日本企業が抱えるDX推進上の
目次

DXに取り組む企業は大幅に増加してきています。しかし、多くの企業が成果を実感できておらずDX推進の途上にあります。
DXを推進していくためには、どのような課題があるのでしょうか。
ここでは、日本能率協会の調査をもとに、日本企業のDXの現状と、DXを進めるうえでの経営課題について解説します。

DX推進上の"3つ"の課題

JMA(一般社団法人日本能率協会)が発行している『日本企業の経営課題 2021』 調査結果速報 【第3弾】によるとDXに「既に取り組み始めている」と回答した企業の中で、「DX推進に関わる人材が不足している」との回答が88.5%と約9割に達しているという結果になっており、社会全体としてのDX人材の育成が大きな課題となっています。
次いで「DXに対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」が66.2%、「具体的な事業への展開が進まない」が67.1%と、課題であると答えた比率が多数を占めています。
DXによって、何を実現したいのか、顧客や社会に対してどのような価値を生み出していきたいのかということを前提として、DXに対するビジョンや経営戦略、具体的な事業の構想を行うことが大切になってきます。

課題①DX推進に関わる人材が不足
課題②ビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない
課題③事業への展開が進まない

【引用】JMA(一般社団法人日本能率協会)『日本企業の経営課題 2021』 調査結果速報 【第3弾】

対策方法

DX推進体制を構築する

(1)組織体制

専任部門を独立させ全社のDX推進を統括する形が望ましいですが、取り組みの立ち上げ段階では既存部門を拡張させる形での推進も可能です。3つの組織体制の例を挙げますが、自社の現状やDXの推進状況に合わせて選択する必要があります。

①IT部門拡張
既存のIT部門に付随してDX部門を設置する形で、ITに関するノウハウを持ったメンバーが中心となるため、デジタルの知見を持った中で推進を行うことができます。一方で、自社の事業への理解が乏しいことによって、施策が小さな改革にまとまってしまう場合があります。

②事業部門拡張
事業部門を拡張してDX部門を設置する形で、実際に事業を行うメンバーが中心となるため、現場目線でのDX戦略の検討ができます。一方で、IT領域へのノウハウが不足することで、現在のシステム体制や実現可能性が考慮されにくい場合があります。

③専門部門設立
IT部門・事業部門それぞれから人材を集めて推進していく形で、各領域の知見を持ったメンバーが中心となるため、効率よくDXを推進していくことができます。一方で、一つの部門として立ち上がるため、組織をまとめ上げる強いリーダーシップを持った人材が必要となります。

(2)デジタル人材の採用・育成

DXを進めていく上で必要になるスキルは、大きく分けると3つになります。ITの技術的スキル、ビジネスの在り方を描ける事業的スキル、取り組みを先導していく経営的スキルです。これらのスキルを持った人材がいれば、DXの推進力が向上することは間違いありません。しかし、それぞれのスキルを持った人材を集めてチームとして推進していくことも有効であるため、取り組みの立ち上げ段階では3つのスキルの基準で部門メンバーを選定することを推奨します。

DX戦略を構築する

DXはあくまで手段であり、テクノロジーの進化によりビジョン実現の選択肢を拡大します。重要になることは、DX戦略をいくつかのカテゴリーに分けて考えることで、次の定義でDX戦略を区別しています。

(1)ビジネスモデルDX
デジタルディスラプションの考え方を軸に、「業界構造が変わり得る製品・サービス」を開発・提供すること、またはそのような製品・サービスに対する事業戦略を策定・推進する。

(2)マーケティングDX
デジタル技術を活用して、マーケティングプロセス(売れる仕組み)を変革することで競争優位性を確立する。

(3)マネジメントDX
デジタルツールを活用し、定型業務・非付加価値業務の効率化を図るとともに、付加価値へ転換可能な情報資産の蓄積と、データに基づくスピーディーな経営判断の実現を図る。

(4)ヒューマンリソース(HR)DX
人事に関わるデータの解析を通して、人材活躍に向けた仕組みの最適化を図る。

バリューチェーンのDX化で新しい価値を創造する

バリューチェーン変革を行わない前提でDX化を検討する場合、製品そのものの進化であるディスラプション、または顧客体験価値を軸に考えることがポイントになります。分かりやすく極端な例として自動車産業を挙げると、移動手段として馬車から自動車へ製品そのものが進化するか、自動運転やセンシング技術による安全性の向上など「移動手段」以外の部分で価値向上を図っていくかということになります。
DXの実装により「バリューチェーンのスマイルカーブ」の口角はより鋭角になるといわれています。すなわち、生産工程はデジタル化によってコモディティー化が進む一方で、企画・開発工程で生み出されるディスラプションか、販売後の工程における「顧客体験価値向上」が付加価値向上の手段といえます。

まとめ

日本企業の多くがDXに取り組んでいます。しかし、大きな成果をあげられていない企業が多いのが実情です。そこには、人材不足、ビジョンや経営戦略の欠如など、共通の経営課題があります。これらの課題を解決することでDXもよりスムーズに推進でき、より大きな成果をあげることができるでしょう。

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